コロナ禍を機に広がった「リモートワーク」。
「通勤がなくなった分、時間に余裕ができた」と歓迎する声がある一方、「通勤という“区切り”がなくなったことで気持ちの切り替えが難しい」「いつまででも働けてしまうので、むしろ以前より仕事時間が増えた」などの声が多く聞かれます。
仕事(ON)とプライベート(OFF)のメリハリをつけるために、時間をどのように使えばいいのでしょうか。
今回は「リモートワークのタイムマネジメント」についてお話しします。
決まった日時に予定を入れておき、仕事に区切りをつける
オフィスで働いていれば、終業時間に仕事を切り上げて帰宅するけれど、自宅で仕事をしていると本来の終業時間後も働き続けてしまう――真面目な人ほど、そんな状態に陥りがちです。
これを防ぐには、上司が「チェックイン/チェックアウト」の合図を発するなどしてマネジメントをするのが望ましいといえます。それが難しければ、自分で「これから業務に入ります」「これにて業務を終了します」などと宣言するのもいいでしょう。
しかし、それでも「オフィスを出る」という物理的環境の切り替えがないと、「気になっている仕事を片付けておきたい」と仕事を続け、オーバーワークになってしまう人も多いようです。
私もまさにその一人。コロナ禍以降はリモートワークが中心となりましたが、仕事を終えるタイミングがつかめずにいました。
子どもが幼かった頃は、「帰宅後は100%ママの顔に切り替える」ことを意識して守っていたのですが、下の子ももう中学生。夕食をちゃちゃっと作っておけば、つきっきりで世話をする必要もなく……自分の時間が持てるようになった分、ついついPCに向かってしまいます。
「これではいけない」ということで、実践したのが、「仕事以外の予定を入れておく」です。
2カ月ほど前から、ゴルフのレッスンを始めたのです。コーチがつく夜間レッスンを予約し、週2回通っています。
予定を入れておくことで、その時間が来れば仕事は強制終了。
家を出る時間ギリギリまで仕事をしてしまい、バタバタと出かけるのですが、ゴルフスクールに行って身体を動かせば、やはりリフレッシュできます。
そして、レッスンから帰宅したらお風呂に入り、その日はPCに向かわないと決めています。ですから、少なくとも週3日は「働きすぎ」を防ぎ、休息をとれています。
そして、2カ月も続けていると上達を実感できるので、楽しくなってきました。成果が表れればモチベーションも上がり、継続・習慣化することができます。
今ではこのペースが定着し、健康面にも精神面にもプラスになっていると感じます。
「誰かと一緒にやる」活動なら続けやすい
これが、「好きな時間にゴルフの打ちっぱなしに行く」であれば、続いていなかったかもしれません。「今日はいいや」と、予定をキャンセルして仕事を続けてしまうでしょう。
けれど、コーチの時間を確保しておくことで「行かなきゃ」となり、予定を守ることができます。
このように「誰かと一緒にやる」は効果的だと思います。
「ヨガ」を例にとってみましょう。コロナ禍以降、オンラインヨガレッスンが増えましたが、続かない人も多いのだそうです。オンラインだと会費も月額1000円以下だったりするので、「まぁ、今日は休んでしまってもいいか」と思ってしまうようです。
ところが、私の友人の会社では「グループコーチング」の手法で、ヨガのグループレッスンを提供しており、出席率も非常に高く、よほどの理由がない限り休む人はいないそうです。
グループで行うことで連帯感が強まるからだとか。特に女性にはこのスタイルが効くのだそうです。
ですから、ON/OFFを切り替えるために何か予定を入れるなら、「コミュニティでの活動」がお勧めです。
私は、読書会のコミュニティにも参加していて、月1回集まり、最近読んだ本の内容をシェアするのですが、これもちゃんと続いています。
仕事で必要な書籍は読むものの、教養のための読書にはなかなか時間が割けない……という方は多いのではないでしょうか。
定例の読書会のメンバーになっておけば、読書時間の確保を自分に強制することになります。そして、参加すれば、仲間との対話を通じて新たな気づきを得られる喜びがあり、読書のモチベーションが高まります。
「やりたいことがあるけれど、仕事に追われるとつい後回しにしてしまう」という方は、そのテーマのコミュニティに参加することで、自分に時間の確保を強制してみてはいかがでしょうか。
忙しい時は面倒だと感じるかもしれませんが、実際にやってみると楽しいものです。
そして、私のゴルフレッスンのように、「効果が実感できる」活動を選べば、長く続けられると思います。
「散歩」を兼ねた趣味で運動不足を解消
自宅での仕事に区切りをつけられない人は、外へ散歩に出てしまうのもいいでしょう。
リモートワーク続きで、運動不足になっている方も多いのではないでしょうか。散歩は気分のリフレッシュになり、健康維持にも効果的です。
私の友人は、最近、「俳句の会」に入会しました。月1回、会のメンバーと集まって作品を発表し合ったり、コンテストに応募したりしているそうです。
俳句を詠もうとする時、PCに向かっていてもまったく浮かんでこないのだとか。そこで、外に出て季節を感じながら散策し、途中にあるベンチに座って俳句を詠むのだそうです。
このように、散歩する「目的」となる趣味を持つのも一つの手だと思います。
「カメラ」も、散歩の楽しみが増す趣味ですよね。被写体を探しながら歩き回るのは、楽しみながら運動にもなっていいのではないでしょうか。
高価なカメラを買わなくても、スマホのカメラでOK。
撮影した写真をSNSに投稿して「いいね」をもらえれば、モチベーションが上がって続けられると思います。
それほど無理なく始められて、継続しやすいスタイルでチャレンジしてみてください。
※転職やキャリアに関して、森本さんに相談してみたいことはありませんか? 疑問に思っていることや悩んでいることなど、ぜひこちらのアンケートからあなたの声をお聞かせください。ご記入いただいた回答は、今後の記事作りに活用させていただく場合があります。
※本連載の第65回は、11月22日(月)を予定しています。
(構成・青木典子、撮影・鈴木愛子、編集・常盤亜由子)
森本千賀子:獨協大学外国語学部卒業後、リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。転職エージェントとして幅広い企業に対し人材戦略コンサルティング、採用支援サポートを手がけ実績多数。リクルート在籍時に、個人事業主としてまた2017年3月には株式会社morichを設立し複業を実践。現在も、NPOの理事や社外取締役、顧問など10数枚の名刺を持ちながらパラレルキャリアを体現。2012年NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」に出演。『成功する転職』『無敵の転職』など著書多数。2男の母の顔も持つ。