Z世代のベンチャーキャピタリストたち。(左から)ギャビー・ゴールドバーグ、メニ・マザラキス、ジェイ・メイヴン・ジュニア。
Gaby Goldberg, Mene Mazarakis, and Jay Drain Jr.
Z世代が中学生だったころ、ベンチャーキャピタリスト(VC)はフェイスブックやツイッターといった、現在のインターネットの中心となっているスタートアップ企業に投資することで富を築いた。
そして今、Z世代の出番となり、彼らは同じように、次の時代の革命的変化である暗号資産に投資しているのだ。
ブルームバーグの記事に掲載されたPitchBook(ピッチブック)のデータによると、2021年6月現在、170億ドル(約1兆8700億円)のベンチャーキャピタル資金が暗号資産のスタートアップにつぎ込まれている。Z世代によると、彼らはそれらの投資をリードし、いわゆるメタバースへの投資については、従来のベンチャーキャピタルや機関投資家にリスクも含め任せているという。
ソーシャルメディアとともに成長し、巨大テック企業に幻滅を強く感じているZ世代にとって、次のデジタル革命を牽引する機会が到来した。
「今こそインターネットの再構築を推進する機会です」と語るのは、メイヴン・ベンチャーズ(Maven Ventures)の暗号資産プロジェクトに投資するZ世代のVC、ジェイ・メイヴン・ジュニア(Jay Maven Jr.)だ。
Z世代VCにとって、それは自身の富を築く機会でもある。若きVCたちは暗号資産ファンドの構築を速やかに進めるとともに、自らの資産を蓄えている。
例えば、業界で代表的なファンドであるアンドリーセン・ホロウィッツ (Andreessen Horowitz) の暗号資産ファンドには、2人のZ世代VCがいる。アナリストのキャラ・ウー (Carra Wu)とパートナーのジェーン・リッピンクット(Jane Lippencott)だ。
ジェフ・モリス・ジュニア(Jeff Morris Jr.)は、自身が唯一のマネージングパートナーとして運用するチャプター・ワンを暗号資産に特化したファンドに変えよう決めた際、初めに採用した人材は25歳の元フェイスブック社員メニ・マザラキス(Mene Mazarkis)だった。その後、マザラキスは、モリス直属の補佐役を務めている。
Insiderが2021年に取り上げた29人のZ世代ベンチャーキャピタリストのうち、少なくとも7人は、暗号資産投資に特化しているか、または暗号資産プロジェクトに携わっている。
自分たちの世代は「常にインターネットと生きてきた」ので、そもそも他の世代よりも有利だと語るのは、最近ベンチャー企業のブルームバーグ・ベータ(Bloomberg Beta)から暗号資産リサーチ会社メザリ(Messari)に転職したイーシタ・ナンディーニ(Eshita Nandini)だ。
「インターネットはすでに自分たちのものであるという意識を持つZ世代にとって、(暗号資産投資は)とても理にかなっています。他の世代とは考え方が異なるでしょう」とナンディーニは言う。
メザリの暗号資産リサーチ・アナリスト、イーシタ・ナンディーニ。
Eshita Nandini
私たちの誰もが成功する
非代替性トークン(NFT)アートギャラリーのブライト・モーメンツ(Bright Moments)がロサンゼルスのヴェニス・ビーチにオープンすると、そこはすぐにZ世代VCに大人気の場所となった。
ザック・デイビッドソン(Zack Davidson) とマザラキスが出会ったのも、このギャラリーでLCDスクリーンに映し出されるデジタルアートを観ていたときだ。その頃、マザラキスはフェイスブックを辞めてチャプター・ワンに転職することを発表する直前であり、デイビッドソンはアーリーステージ投資ベンチャー企業ヴィレッジ・グローバル(Village Global)から教育系スタートアップ、ラビットホール(Rabbit Hole)に移ろうとしているときだった。
2人はすぐに、ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ(Bessemer Venture Partners)からTCGクリプト(TCG Crypto)に移籍したギャビー・ゴールドバーグ(Gaby Goldberg)が共通の友人であることを知った。
全員Z世代である3人は、親友となった。資金を出し合い一緒に投資をするという「遊び」もした。そうした仲の良さを、デイビッドソンは「富を築く同志というメンタリティ」と親しみをもって呼んだ。今では昔話だが、こうした考えは、若者をこの分野に惹きつける中核的な理念につながっている。その理念は、WAGMIという暗号資産ファンの間で人気のある言葉で表される。WAGMIとは「We’re all going to make it. (私たち皆が成功する)」の頭文字をとった言葉だ。
デイビッドソン、マザラキス、ゴールドバーグは皆、暗号資産では、年齢にかかわらず誰もが成功できると感じている。
「暗号資産に携わる私たちは、将来、履歴書というものがなくなると信じています」とゴールドバーグは言う。彼女は著作の中で、「オン・チェーン」の評判に触れている。つまり、人の価値はもはや今までのような経歴ではなく、ブロックチェーンへの貢献度で測られるということだ。
暗号資産業界のスピードの速さもプラスになる。伝統的なベンチャーキャピタルで評価を得るには数十年かかる。しかし、暗号資産プロジェクトでは、ほとんど一夜にして評価を得ることも可能だ。
「トークンセール(Initial Coin Offering)で資金調達できれば、それがうまくいっているかどうかは1~2年という短期間で明らかになります。企業の上場のような過程を待つ必要はありません」と、ブロックチェーン・キャピタル(Blockchain Capital)のシニア・アソシエイト、キンジャル・シャー(Kinjal Shah)は言う。
高収益を生むサイド・プロジェクト
Z世代のベンチャーキャピタリストは、何年もかけて組織内の階段をのぼることなく、富を築くことができる。
Z世代ベンチャーキャピタリストが多く就くアナリストの職は、エントリー・レベルのポジションだ。Insiderのインタビューに答えたZ世代アナリストによると、彼らが発掘してパートナーにプレゼンを行う案件に自ら出資できる機会は稀だという。
しかし、暗号資産ベンチャーキャピタリストは、本業以外のプロジェクトに携わり、有望な創業者に会うこともできる。こうしたサイド・プロジェクトが大きな利益を生むこともある。
例えば、デイビッドソンは、暗号資産を購入することによって加入できるフレンズ・ウィズ・ベネフィッツ(Friends With Benefits)という社交クラブのメンバーだ。このグループは、アンドリーセン・ホロウィッツなどのベンチャーキャピタルから1000万ドル (約11億円)の投資を受けた。
マザラキスは、ドルに対抗する暗号資産を作ったオリンパスDAO(Olympus DAO)というグループの草創期からのメンバーだ。そのトークンには、1単位あたり1000ドル(約11万円)以上の価値が付いている。ゴールドバーグはNFTオンライン・ショールームを所有している。このショールームは天井から日光が差し込むバーチャル空間で、彼女がブライト・モーメンツで購入した作品(1万ドル(約110万円)で買いたいという申し出もある)が並んでいる。
こうした多額の投資が行き交っているが、暗号資産業界はまだ新しく危険も存在する。しかし、ゴールドバーグは、それも楽しみの一部だという。
「リスクを好む傾向というのは、年をとることでしか減っていかないのです」とゴールドバーグは語った。
[原文:How Gen Z crypto VCs are quietly rebuilding the internet - and making a fortune in the process]
(翻訳:住本時久、編集:大門小百合)