Ritual Zero Proof
- ニールセンによると、アメリカではノンアルコール飲料の売り上げがこの1年で33%増えて、3億3100万ドル(約378億円)にのぼったという。
- アナリストは、ノンアルコール飲料の売り上げは2022年も伸び続けるだろうとInsiderに語った。
- 「アルコール抜きの生活への関心」がある若者や酒は飲むものの健康を重視する人たちが、こうした"ノンアルコール志向"に貢献している。
世界のビーガン(完全菜食主義)人気は、肉を食べる人でも美味しく食べられる代替肉を提供する企業の成長を助けた。
そして、アルコールとの関係を見直す若者が増える中、このトレンドをノンアルコール飲料で再現したいと願っているのが飲料業界だ。
リチュアル・ゼロ・プルーフ(Ritual Zero Proof)のCEOで共同創業者のデビッド・クローチ(David Crooch)氏は2年前、ノンアルコールのウィスキーとジンを開発した。同社の狙いはアルコールに反対したり、禁酒を広めることではなく、消費者に選択肢を与えることだと、クローチ氏は語った。
コーヒーに入れる「ミルク」を様々な選択肢の中から選べるように、アルコールを飲む人も二日酔いやカロリーを避けたい時はノンアルコールのカクテルを選ぶことができる。
データも、クローチ氏が提案するようなノンアルコールの選択肢を求める消費者が増えていることを示している。
ニールセンのデータによると、アメリカではノンアルコール飲料の売り上げが過去52週間で33%増えて、3億3100万ドルにのぼった。売り上げは特にeコマースで好調で、ノンアルコール飲料および低アルコール飲料のオンラインでの売り上げは315%伸びたという。
ニールセンのシニア・バイスプレジデントのキム・コックス(Kim Cox)氏は、データはノンアルコール飲料の消費者の大半が完全に"アルコール抜きの生活"を送っているわけではなく、より健康的な生活を送りたいと考えている、またはアルコールへの関心を失いつつあることを示していると話した。
「消費者は自分たちのからだに取り入れるものに対して、非常に気を使っています」とコックス氏はInsiderに語った。「飲料分野ではここ数年、一般的に低糖質、低炭水化物、低カロリーを求める、ものすごく大きなトレンドがあります」と同氏は言う。
クローチ氏のノンアルコール飲料は、ホールフーズ(Whole Foods)との提携やイギリスのアルコール飲料大手ディアジオ(Diageo)からの投資によって、初期の成功を収めた。
ユーロモニター・インターナショナルのインダストリー・マネジャーでアルコール飲料調査の責任者スピロス・マランドラキス(Spiros Malandrakis)氏は、ノンアルコール飲料の台頭はスタートアップのSeedlipが大人向けのノンアルコール飲料を「肯定的」に位置づけ、ゼロカロリーをうたい始めた2016年に始まったと指摘している。そして、ギネス(Guinness)やジョニーウォーカー(Johnnie Walker)、ドン・フリオ(Don Julio)といった人気の高いアルコール飲料を所有するディアジオは、2019年にSeedlipを買収した。
マランドラキス氏は、ノンアルコール飲料の人気がこれほど高まったのは「アルコール抜きの生活への関心」のおかげだと話している。Insiderでも報じたように、アルコール抜きの生活に関心を持っている人の大半は、引き続きアルコールを飲んでいるものの、アルコールが与える自分のからだや心の健康への影響に気を配っている。
ギャラップ(Gallup)の分析によると、アメリカでは今、ここ20年以上で最も飲酒量が少なくなっていて、ノンアルコール飲料の人気が高まっているのは不思議ではない。そして、ミレニアル世代やZ世代の若者たち —— ベビーブーマー世代やその後のX世代が若かった頃よりも飲酒量が少ない —— がこうした「アルコール抜きの生活への関心」を先導している。
マランドラキス氏は、今後最も成長が見込まれるのはノンアルコールのビールやワインよりも、ノンアルコールのスピリッツ(蒸留酒)だと考えている。ホールフーズでは、2022年の大きなトレンドの1つに「ノンアルコール・スピリッツ」を挙げている。この分野ではイノベーションが進んでいるからだ。
ホールフーズのビールおよびスピリッツ分野の責任者メアリー・ガイバー(Mary Guiver)氏によると、炭酸水やスパークリング・ティーも「ノンアルコール飲料の選択肢」としてリブランドされるようになるかもしれないという。ガイバー氏は、ノンアルコール飲料や低アルコール飲料の分野に参入するアルコール飲料メーカーが増えるだろうと見ている。例えば、ハイネケンはノンアルコール・ビールに大きく賭けて、5400万ドルという2020年の売り上げをもたらした。
「このトレンドは続くでしょう。消費者からの需要と、その需要に対して新しくて面白い低アルコール飲料を提供することで応えようというブランド側の強い望みの両方を、わたしたちは目にしているからです」とガイバー氏は話している。
(翻訳、編集:山口佳美)