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アメリカで進む「スポーツ賭博」解禁。2025年には市場規模1.7兆円の予想も

スポーツ賭博イメージ

(写真はイメージです)

Shutterstock/wavebreakmedia

  • この記事はインサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「アメリカにおけるスポーツ動画配信 2021(US Sports Video 2021)」のプレビュー版。

アメリカの20以上の州でスポーツ賭博が解禁されたことにより、放送局や動画配信サービス事業者に新たなビジネスチャンスが生まれている。ファンタジースポーツ(※)のような「ギャンブルコンテンツ」をスポーツ中継と融合させる、あるいは「スポーツ」と「ギャンブル」のそれぞれの愛好者に違う形でアプローチするなど、さまざまな形が考えられる。一方でこの分野には潜在的な落とし穴も存在する。

※実在するスポーツ選手を組み合わせて自分のための架空のチームを作り、他のプレイヤーのチームと競うゲーム。現実世界での選手の成績がゲームのポイントに反映される。勝者には賞金が出るゲームもある

21州でスポーツ賭博が合法に。今後も解禁の動きは拡大

アメリカにおける合法スポーツ賭博による収益の推移予測。

アメリカにおける合法スポーツ賭博による収益の推移予測。

Business Insider Intelligence

全米のゲーミング事業者が加入する団体「アメリカ・ゲーミング協会(American Gaming Association:AGA)」は、スポーツ賭博に関する各州の動向を集計。「合法化された州」「合法化されたがまだ実施されていない州」「合法化に向けた法案が議会に提出されている州」「法案が提出されていない州」「法案が提出されたが無効になった州」を明示している。

2021年5月現在、21の州とコロンビア特別区ではスポーツ賭博が合法で、実際に行われている。6つの州では解禁されているがまだサービスは提供されていない。14の州では合法化に向けた法案が提出されている。法案が提出されていないか、無効となっているのは9つの州しかない。

調査・証券会社のガベッリ・セキュリティーズ(Gabelli Securities)とアメリカ合衆国国勢調査局の調べによると、2021年のアメリカにおける合法スポーツ賭博の収益は21億ドルで、2028年には101億ドルに達するという。

また、合法スポーツ賭博の収益をさらに高く見積もっている企業もある。モルガン・スタンレーの予想では2025年の市場規模は150億ドル(約1兆7千億円)、マッコーリー・リサーチは2030年に300億ドルに達するとしている。統合型リゾート運営会社のMGM リゾーツ・インターナショナル(MGM Resorts International)は、スポーツ賭博が2025年までに135億ドルの収益を上げ、その頃には38州で実施されているだろうと予想している。

スポーツ団体や放送・配信事業者にとって大きなチャンス

アメリカにおけるスポーツ中継視聴者数の推移予測

アメリカにおけるスポーツ中継視聴者数の推移予測(オリンピック、eスポーツは除外)。赤は人口に占める割合。

Business Insider Intelligence

各社の予想には方法論の違いによる差異が見られる。だが重要なポイントは、賭博解禁でスポーツ関連の権利者にとって新たに大きな収益源が生まれることと、従来の放送や配信と連携するチャンスが到来していることだ。

2021年3月、衛星放送と「vMVPD」(複数のテレビチャンネルをパッケージ化してネット配信するサービス)を提供するディッシュ・ネットワーク(Dish Network)とギャンブルアプリのドラフトキングス(DraftKings)は、スポーツ中継にDraftKingsのコンテンツを組み込む契約を結んだと発表した。これにより、ディッシュ・ネットワークの加入者は、同社のHopper受信機とドラフトキングスのアプリを使って試合開始前に賭けに参加してから生中継を見られるようになる。またこの契約には、ファンタジースポーツのコンテンツも含まれている。この発表に先立ち、ドラフトキングスはスーパーボウルの放送中に15秒の広告を2回打っている。

スポーツ賭博への参入に向けていち早く動いたもう一つの企業が、スポーツに特化したvMVPDのフーボTV(fuboTV)だ。共同設立者でCEOのデイヴィッド・ガンドラー(David Gandler)氏によると、同社はニュージャージー、インディアナ、アイオワの各州で営業許可を申請し規制当局の承認待ちで、他州でも協議が進んでいるという。

「動画配信と賭け事は、隣接したビジネス領域です。同じオーディエンスに訴求して相乗効果を期待できますから。当社プラットフォームでユーザーにアンケートを取ったところ、fuboTV視聴者の20%が定期的に賭け事をしており、22%がfuboTV上で直接賭けられる仕組みがあれば使いたいと考えていることがわかりました。プレイを希望する人の割合が一般消費者に比べて高いのです」

「スポーツ」と「賭博」双方の愛好家に訴求し、相乗効果を狙う

アメリカにおける、デジタルプラットフォーム(OTTやvMVPDなど)でのスポーツ中継視聴者数の推移予測

アメリカにおける、デジタルプラットフォーム(OTTやvMVPDなど)でのスポーツ中継視聴者数の推移予測(オリンピック、eスポーツは除外)。赤は人口に占める割合。

Business Insider Intelligence

動画広告のためのデータ解析やコンサルティング・サービスを提供するVab(旧Video Advertising Bureau)の上級副社長兼ストラテジック・インサイト・ディレクターのジェイソン・ウィース(Jason Wiese)氏もスポーツ賭博を前向きに捉えている。

「個人的にスポーツ賭博解禁にとても期待しています。ファンのエンゲージメントを高め、若年層を惹きつけるのに役立つでしょう。私たちの調査では、25歳から34歳の成人の26%が、スポーツ賭博をするとスポーツ放送を見る機会が増える傾向にあるとがわかっています」

アメリカにおけるスポーツ賭博の勢いを示す出来事がもう一つある。テレビ放送会社のシンクレア・ブロードキャスト・グループ(Sinclair Broadcast Group)がカジノ運営会社のバリーズ(Bally's)と合意、ネットワーク傘下の19の地域スポーツ放送局のブランド名を「バリー・スポーツ」に変更した。

広告主にとって魅力的かどうかは未知数な部分も

このような盛り上がりとは裏腹に、スポーツとギャンブルの結びつきに対して慎重な意見もある。

広告技術会社ザ・トレードデスク(The Trade Desk)のインベントリーパートナーシップ担当上級副社長のジョアンナ・フォイル(JoAnna Foyle)氏は、次のように述べている。

「一般的に、ブランドや広告主にとってギャンブルはデリケートなトピックで、合法かどうかに関わらず、保守的なブランドはあまり近づきたがりません。誰も参入しないとか、ギャンブルは広告主を惹きつけないと言っているわけではありませんが、少なくとも大手のブランドに関しては動きは鈍いと思います」

ブランドにとっての安全性やその他の懸念を先読みして、アメリカ・ゲーミング協会は同協会が策定する「スポーツ賭博のための責任あるマーケティングコード」を遵守させるためのコンプライアンス審査委員会を2020年末に設置した。この取り組みは、以前からスポーツ賭博を実施しているヨーロッパ諸国の事例にヒントを得ている。ヨーロッパでは「賭博の広告が未成年に提示される」などの不適切なマーケティングが取り締まりの対象になったケースもある。

今後アメリカで「ギャンブルとスポーツの融合」がどう進んでいくのかを予想するにはまだ時期尚早だ。これまでの動向からは収益性の高い市場と、そこに潜む危険が垣間見える。「経済的成功」と「コンテンツやマーケティング手法の妥当性に関する懸念」とのバランスをうまく取る必要があるという点で、ソーシャルメディア企業が直面してきた状況と似たところがある。

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[原文:Sports gambling opportunities for marketers

(翻訳・野澤朋代)

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