数千銘柄の中から投資する株を選ぶためには、選別のためのルールが必要だ。
DWSのスモール・キャップ・コア・ファンドは、20年間にわたり最高レベルのパフォーマンスを出し続けている。多くの優れた小型株を選んできた結果だ。
モーニングスターによると、同ファンドは2000年7月の運用開始以来、462%のリターンを挙げ、S&P500を大きく上回っている。2021年において、これは業界上位2%に入る成績だ。
直近8年間、このファンドのリード・マネジャーを務めているマイケル・セザーに、銘柄を見極める4つのポイントと、実際に該当する企業の例を8つ教えてもらった。
1. 経営陣は株式を保有しているか?
DWSのスモール・キャップ・コア・ファンドのリード・マネジャー、マイケル・セザー。
DWS
優れた経営が企業にもたらす貢献度を正確に定量化することは難しい。しかし、企業にとって経営陣の重要性は明らかだ。
セザーは、投資を決める前に、経営陣の利益と企業の利益が一致しているかを確認するという。
「つまり一般的には、経営陣自らが多くの株式を保有していることです。過去8年間、この点を確認することがますます重要になってきました」
CEOが自社株の5~10%程度を保有するのが理想だ、とセザーは言う。理想通りになるケースはそう多くはないが、CEOと役員が自社の株式のパフォーマンスに自らの将来を賭けるとき、その意思決定は株主に利益をもたらすことが多い。
セザーが投資先として検討するのはこうした銘柄だが、パッシブ運用ファンドに投資する人は、大抵こうした銘柄への投資ウェイトを下げてしまいがちだ。
取締役やCEOが受け取る株式は譲渡制限付きであることが多く、浮動株数には含まれない。だがインデックス・ファンドは譲渡制限付株式を含めて銘柄のウェイト付けをするため、CEOの株式保有率が高い銘柄のウェイトが実質的に引き下げられてしまうのだ。
創業者兼CEOは大株主であることが多い。その意味でセザーが好意的に見ている銘柄のひとつは、画像診断サービス企業ラドネット(RadNet)だという。
2. 小さな池の大きな魚を探せ
「何事も永遠には続かない」ということわざがあるが、セザーは、競合他社に対する永続的な優位性を確立する企業もあるという。
「私たちは、業界をリードする企業に注目します。多くのプレーヤーの中で最大というだけでなく、スケールメリット(規模の経済)の観点から、他社がその地位を狙うことはほぼ不可能だからです」
セザーお気に入り銘柄のひとつは、キャンピングカー販売企業キャンピング・ワールド(Camping World)だ。業界トップの同社の規模は、第2位の5倍にも達する。メーカーとの強い関係性を築いており、優位性のさらなる強化につながっている。そのため、競合他社に比べ供給の不足や中断の影響を受けにくい。
同様に、トラック販売企業ラッシュ・エンタープライジズ(Rush Enterprises)や建設機器販売企業タイタン・マシナリー(Titan Machinery)も、競合他社に対して圧倒的な優位性を築いている、とセザーは言う。
3. 使わざるを得ないサービスか?
セザーがもうひとつの必須条件とするのは、磨き抜かれたビジネスモデルだ。そのようなビジネスモデルを見つける方法は簡単だ。消費者が「使わざるを得ない」サービスを構築している企業を探せばよい。成功しているデジタル・ネットワーク企業はその典型例だ。食料品もその例といえる。
「ここ数年、当社はパパ・ジョンズ(Papa John’s)を保有しています。一般的にピザ事業は良質なビジネスモデルだからです」
とセザーは言う。同様の理由で世界大手のビール会社、ボストン・ビア(Boston Beer)も保有していた。大型株のドミノピザやモンスタービバレッジ(Monster Beverage)もその基準を満たすだろう。しかし理想的な例といえるのは、スターバックスかもしれない。
4. CEOは洞察力を持っているか?
セザーが使う最後の基準は、企業のリソースを有効に活用できるCEOの存在だ。セザーは次のように語る。
「最も重要なCEOの仕事は、資本配分です。株主から託された資金を何に投資するか。この点が特に重要なのは、CEOがその地位に辿り着いたのは多くの場合、投資面の洞察力ではなく、運営面での洞察力があったからです」
そのため、CEOは長く在任し、これまで成功してきたやり方を継続することが望ましい、とセザーは言う。ここでも前述の画像診断サービス企業ラドネットが条件に当てはまる。
同社は40年近く前から小型の競合他社の買収を始め、今日トレンドとなっている外来画像診断サービスにおいてはるか先を行っていた。セザーは次のように続ける。
「業界最大手がそのキャッシュフローを使って小規模の競合他社を買収すれば、その企業に対する投資家の信頼は高まります。その分野での優位性を確立したといえるからです」
(翻訳・住本時久、編集・野田翔)