イギリス王室では1000人以上の人々がロイヤルファミリーの日常生活をサポートするために働いている。
Kirsty Wigglesworth/AP
- イギリス王室では、日々の業務をこなすために多くの人を雇用している。
- 週に7000件以上の電話に対応するというテレフォンオペレーターがいる。
- 専門の時計職人は、宮殿の中のすべての時計をサマータイムのために調整する。
イギリス王室の宮殿や城では、1000人以上が働いている
2019年のロイヤルファミリー。
Neil Mockford/Getty Images
イギリス王室の日々の生活を管理する重責を考えれば、この人数も納得できる。
仕事の多くはよく知られているものだが、中にはあまり知られていない役割もある。
家具の保存修復師はインテリアデザイナーには理想の仕事
ウィンザー城のワーテルローの間。
Steve Parsons/PA Images via Getty Images
イギリス王室の宮殿や城の数多くの部屋はそれぞれ個性的な家具があり、これらの家具を美しく保つために誰かを必要とするのは不思議ではない。
家具の保存修復師は、歴史的な作品の修復や、流行の装飾を見極めることに情熱がある人にぴったりの仕事だ。2019年に掲載された求人情報ではウィンザー城で働く人材の給料は年2万5500ポンド(約390万円:現在のレート。以下同じ)だった。
「女王の音楽師範」の役職は1625年に初めて作られた
イギリス王室の楽団。
Chris Jackson/Pool via REUTERS
女王の音楽師範(master of the Queen's music)の役職は10年の任期で、現在は著名な音楽家、ジュディス・ウィアー(Judith Weir.)が務めている。ガーディアン(Guardian)によると、女性として初めての師範であるウィアーは2014年からこの役職に就いている。
女王の音楽師範は王室や国の行事のために音楽を作曲することがあるが、その役割に決まった責任はない。
ガーディアンによると、この職務の給与は年間1万5000ポンド(約230万円)だ。
国王手許金会計長官がイギリス王室の予算を管理している
誰かが王室の支出を把握しなければならない。
Chris Jackson/Getty Images
イギリス王室の純資産は数億ポンドと推定されており、その財務を管理するためにはしっかりと訓練された人材が必要不可欠だ。
現在、この重要な役割は国王手許金会計長官(Keeper of the Privy Purse)のサー・マイケル・スティーブンス(Sir Michael Stevens)が担っている。
この役職の年収は18万ポンド(約2730万円)だと以前に報道されている。
王室天文官はイギリス王室の中で最も古い役職のひとつだ
ホーキング博士の追悼式でスピーチする王室天文官のマーティン・リース(Martin Rees)。
Reuters
1675年に公式に作られた王室天文官(astronomer royal)は、王室に対して天文学や科学的な助言を女王に与える役目がある。現在、この役職に任命されているのはラドローのリース男爵(Baron Rees of Ludlow)マーティン・リース(Martin Rees)だ。
ハレー彗星を知っているだろうか。その名前の由来になったエドモンド・ハレー(Edmond Halley)は、1720年に王室天文官に就任している。
王室天文官は、年間100ポンド(約1万5300円)の給付金を受け取っている。
王室リネンキーパーの承諾なしに、宮殿のテーブルを飾ることはできない
バッキンガム宮殿のボールルームでテーブルセッティングをするスタッフ。
Peter Macdiarmid/Getty Images
もしあなたがリネン類が大好きならば、この職が向いているだろう。2017年の求人によると王室のリネンキーパーは「その布をバンケットテーブルの壮麗さにマッチさせ」、すべてのリネンが最高水準で満たされていることを「確認」し、王室のリネンを「将来の世代」のために保存する責任を負っているという。
2017年の募集内容では、リネンキーパーの初任給は年間1万7778ポンド(約270万円)で、住み込みで食事も提供されている。
切手愛好家の誰もが女王の切手の管理人になれることを光栄に思うだろう
展示されているイギリスの切手。
REUTERS/Phil Noble
エリザベス女王は、父ジョージ6世の切手コレクションを手にしてから、その伝統を守ろうをしている。
マイケル・セフィ(Michael Sefi)は2003年から2018年までエリザベス女王の切手の管理人を務め、世界中を旅して女王のコレクションに加えるためのユニークな切手を探していた。彼の引退後、後任の指名はなかった。
額縁を扱う経験が豊富なら、額縁の保存師として活躍できる
バッキンガム宮殿のホワイト・ドローイング・ルームに飾られているアレクサンドラ王妃の肖像画。
Reuters
バッキンガム宮殿(Buckingham Palace)には775の部屋があることから、その壁に掛けられた貴重な美術品を飾る額縁が数多くあることが想像できるだろう。額縁の管理者には、すべての額縁を保存、修復するという役目がある。
2018年の求人情報によると、宮殿内に専用の作業室があり、担当者は現場で額縁の状態を見るだけでなく、摩耗したり損傷しているものも交換についても進言する。この役職の給料は2018年には年間2万7280ポンド(約418万円)だった。
バッキンガム宮殿にかかってくる週7000件の電話のうち何件かはテレフォンオペレーターが対応する
雑誌フォーブス(Forbes)によると、毎週何千人もの熱心なファンやメディア関係者がバッキンガム宮殿に電話をかけており、その数は7000件以上に上るという。
2016年の求人によると、大量の電話がかかってくることを考慮して、テレフォンオペレーターは電話交換機の操作や問題解決スキルに長けている必要があるという。この役職の年俸は2万3000ポンド(約350万円)だった。
キッチンポーターのおかげで調理器具はきれいに保っている
2011年、レストラン経営者のビル・グレンジャー(Bill Granger)はロイヤルシェフのマーク・フラナガン(Mark Flanagan)にバッキンガム宮殿の厨房を案内された。
Lewis Whyld - WPA Pool/Getty Images
これは関連する経験を必要としない数少ない職種のひとつだろう。キッチンポーター(kitchen porter)は、ベテランのケータリングチームに加わってキッチンの管理、清掃、調理の手伝いをする。
キッチンポーターはこれらの職務に加え、女王がほかの王室の施設を訪問する際に一緒に旅行できるという特典もある。
2018年の職務明細には、給与は約1万9935ポンド(約305万円)だと記載されている。
グランド・カーバーがいるので、女王は肉を切らなくてもいい
2007年、バッキンガム宮殿の厨房を若いシェフに案内するウィリアム・バリー(William Barrie)(左から2人目)とマーク・フラナガン(Mark Flanagan)(左端)。
Johnny Green - PA Images/PA Images via Getty Images
バッキンガム宮殿主催の豪華な晩餐会を見れば、女王がゲストのそばを離れて、その日に参加者が食べる肉を切り分けることができないのが理解できる。ローストビーフを完璧にスライスするために、グランド・カーバー(grand carver)が登場するのだ。
しかし、この役職は世襲制でだれでも就けるわけではない。現在はデンビー伯爵およびデスモンド伯爵(Earl of Denbigh and Desmond)のアレクサンダー・フィールディング(Alexander Fielding)が務めている。
王室の時計職人は、王室のすべての時計をサマータイムのために調整する
サマータイムの準備は、王室のすべての宮殿や城で行われる。
Anwar Hussein Collection/ROTA/WireImage
Insiderが報じたように、エリザベス女王にはサマータイムの1時間の変更に備えて、王室の城や宮殿の時計を1つ1つ手作業で調整するために専門家チームが必要だ。
彼らは年2回、1000個以上の時計の時刻を40時間をかけて調整しているという。
ウィンザー城の主任時計管理者、フィヨドル・ヴァン・デン・ブルック(Fjodor van den Broek)は、「城の時計師」として知られている。イギリスのサマータイムが終わる前日の2021年10月30日、イギリス王室公式ツイッターアカウントが投稿した動画に彼は登場した。
「私はここにあるすべての時計をよく知るようになった」とヴァン・デン・ブルックはツイッターの動画の中で話している。
「ウィンザー城の敷地内には400個の時計があり、そのうち250個は城内に、残りは屋敷の周りに配置されている」
[原文:11 surprising royal jobs you didn't know existed]
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)