- 天文学者らはNASAなどに対し、地球型の系外惑星を観測できる巨大な宇宙望遠鏡を開発するよう求めている。
- これは、2020年代の天文学の方向性を示す最新の「天文学・天体物理学の10カ年計画」で提言されたことの一つだ。
- NASAには、地球型の系外惑星のかすかな光を見る技術がまだない。
アメリカ航空宇宙局(NASA)は、新たな主力宇宙観測装置であるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げを控えている。この望遠鏡は宇宙の奥深くまで覗くことができるため、ビッグバンの残光までも観測できるかもしれない。しかし、すでに次の大きな宇宙望遠鏡を求める天文学者もいる。それは、他の恒星を周回する地球型惑星の写真を撮ることができる望遠鏡だ。
全米アカデミーズは2021年11月4日、「天文学・天体物理学の10カ年計画」という調査報告書を発表した。この報告書はNASAや全米科学財団(NSF)が指針とするもので、天文学者はこれを精査して10年ごとの宇宙探査の方向性を決める。今回の報告書では、NASAとNSFが2020年代に一連の望遠鏡へ投資を行い、今後数十年で我々の宇宙に対する理解を深めるよう提言している。
報告書の中で最も野心的な提案は、NASAに対して110億ドル(約1兆2500億円)を投じて可視光線、赤外線、紫外線で宇宙を観測できる宇宙望遠鏡を建造するよう求めていることだ。そのような望遠鏡にするには、口径6メートルの鏡を搭載し、遠くにある恒星の光を遮ることで他の恒星を周回する地球型惑星を見つけられるようにする必要がある。提案では、この望遠鏡を2040年代前半に打ち上げたいとしている。
これがあれば、我々の太陽系の外の、生命が存在する可能性のある惑星の写真を初めて撮影できるようになる。バンダービルト大学の天文学者であり、10カ年計画の運営委員でもあるキーバン・スタッスン(Keivan Stassun)によると、これらの写真は、1990年にNASAのボイジャー探査機が海王星を通過した後に撮影した有名な地球の写真「ペイル・ブルー・ドット」に似たものになるだろうという。
「その地球型惑星の構成を知り、その表面に何があるのかを知ることができるだろう。大気があれば、その構成要素を測定することもできる。サイエンスフィクションがサイエンスファクト(事実)になるのだ」とスタッスンは、Insiderに語っている。
小さな惑星の明るさは、恒星の100億分の1ほどしかないため、これらを観測するために未来の宇宙望遠鏡は遠くの恒星の光を遮らなくてはならないが、現在のNASAにはそのような技術はまだない。
「恒星の光を1000万分の1以下に抑えつつ、惑星自体が放つホタルのような光を捉えなくてはならない」とスタッスンは言う。
「我々はその域に達することができると信じているが、それには長い時間がかかるだろう。まずは実験室で実証する必要がある。おそらくいくつかの先駆的なミッションを行い、うまくいくことを示さなければならない。それはとても大変なことだ」
10年計画では、NASAとNSFに対して望遠鏡の開発を促している
エイリアンの世界を撮影できるような宇宙望遠鏡の開発は、報告書が示した提案の中でも最も野心的なものかもしれないが、もちろん提案内容はそれだけではない。報告書では、3つの優先すべき科学的ゴールが示された。太陽系外の居住可能な世界の研究、ブラックホールや死んだ星、それらを生み出す爆発的な現象の理解、そして銀河の形成と進化の仕組みの解明だ。
これらの研究のためには、より優れた望遠鏡が必要だと報告書は述べている。そこでNSFに対しては、すでにチリで建設が始まっている最大級の地上望遠鏡「巨大マゼラン望遠鏡」や、ハワイなどで建設を目指している「30メートル望遠鏡」の完成を最優先すべきだと主張している。NASAに対しては、地球型惑星の観測ができる野心的な望遠鏡の開発など、複数のスペースミッションを同時に行うための新たな「グレートオブザバトリー計画」を進めることを推奨している。
報告書では他にも、電波望遠鏡のさらなる増設、重力波観測装置のアップグレードや新設、ビッグバンの名残とされるマイクロ波背景放射を研究するための観測装置の開発なども提言している。
「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で学んだように、現在の野心的な科学的目標は、10年単位の時間枠にはうまく収まらない」とスタッスンは言う。
「今すぐに着手しなければならないことがたくさんある」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)