鮮やかなドーナツたち。
撮影:三ツ村崇志
カラフルに彩られたドーナツに、しっとりとしたガトーショコラ。クリームがふんだんに盛り付けられたパフェ。「映え」が意識された店内には、ほのかに甘い香りが広がる。
11月2日、植物性食品、いわゆる「プラントベースフード」のメニューを提供するカフェ「2foods銀座」が、銀座・並木通りにあるロフト1階にオープンした。
カラフルなドーナツもしっとりとしたガトーショコラも。そして、パフェに盛り付けられたクリームまでもが、卵や牛乳、バターなどの動物性食品を使わずに作られているという。
「植物性食品で作られたデザート」と聞くと、豆乳などを使った甘さが控えめのあっさりとした味わいを想像する人が多いかもしれない。
しかし、銀座店のプレオープンで試食した銀座店限定のメニューは、紛れもなく「デザート」そのもの。正直、かなり驚かされた。
2foods銀座は、銀座の並木通り沿いに位置している
撮影:小林優多郎
銀座限定メニューのHot and Cold Sweets。ドーナツにもソフトクリームにも、牛乳やバターなどの動物性原料は含まれていない。
温めたドーナツの上に冷たいソフトクリームを載せた銀座店限定メニュー。当然、動物性原材料は不使用。7種類のドーナツと3種類のソフトクリーム、ソースも2パターンから選べる。全42通りの味を楽しめる。
撮影:小林優多郎
ドリンクメニューの「カフェラテ」にも、牛乳ではなく植物性のオーツミルクが入っている。
撮影:小林優多郎
ショーケースには色鮮やかなドーナツ。これらもすべて、植物性の素材だけで作られたものだ。
撮影:三ツ村崇志
テクノロジーの進歩によって、ドーナツの油も控えめだ。
撮影:三ツ村崇志
ガトーショコラなども、テクノロジーの進歩によって植物性食品を原材料にしても通常のものと遜色ない美味しさを実現できたという。
撮影:三ツ村崇志
銀座からプラントベースフードのカルチャー発信を
渋谷ロフト2階にある2foodsのフラッグシップ1号店。
撮影:三ツ村崇志
2foodsは、2021年4月に渋谷ロフト2階に国内1店舗目のフラッグシップ店をオープンさせると、これまでに都内に4店舗の小規模店舗を展開。
銀座店は国内6店舗目で、2店目のフラッグシップ店となる。
各店舗では、ドーナツなどのデザートはもちろん、カレーなどの主食にいたるまで、100%植物性食品を使った「ヘルシー」かつ「ジャンク」なメニューを提供している(実際、公式サイトでもヘルシージャンクフードという言葉を使っている)。
卵はもちろん、バターや牛乳といった動物性食品が不使用であることはもちろん、レギュレーションとして「グルテンフリー」や「白砂糖不使用」も掲げる。
2foodsのレギュレーション。ヘルシーかつジャンクというコンセプトを体現している。
出典:2foods
例えば、牛乳の代わりには、豆乳とオーツミルク(オーツ麦から作られる植物性ミルク)を独自配合したミルクを使用。乳製品を使わずに、ふわっとしたドーナツの食感をつくることは難しいとされているが、さまざまな配合を駆使して納得のいく食感に仕上げたという。
スイーツとしての甘みは、白砂糖ではなくサトウキビなどの植物由来の素材で代用。ドーナツを揚げる際にも過度な油を避けるために、食品に付着する油(吸油率)を50%オフするようなデバイスも使用しているという。
2foodsでは、カレーなどの主食メニューも展開しているものの、銀座店で力を入れているのは「スイーツ」だ。
TWOの東義和代表は、
「多くの人に食べてもらい、市場を広げていきたい。そういった意味でも、スイーツは敷居が低いんです。
銀座店は2店舗目のフラッグシップ店です。銀座はカルチャーが生まれる場所。国内外に向けて、プラントベースの発信をしていきたいと思います。」
と、デザートに注力して銀座に進出する狙いを語る。
プラントベースフードは「ヴィーガン向け」ではない
TWOの東義和代表。
撮影:小林優多郎
東代表は、
「欧米を中心に(植物性食品の)マーケットが非常に広がってきていますが、日本では同じように普及はしていません。まだまだヴィーガン向けの商品という捉えられ方をしているからだと思います」
と日本における植物性食品の現状を語る。
気候変動対策や食糧不足の解決、さらに動物愛護の観点など、植物性食品が必要とされている理由はいくつかある。しかし、そういった世界的な課題が自分ごとになっていない人の間で、植物性食品を展開することは難しい。
だからこそ、2foodsでは「ヘルシー」かつ「ジャンク」というカジュアルなコンセプトで、誰でも手を出しやすいスタート地点を設定した。
「銀座でフラっと入ったカフェで食べた美味しそうなスイーツが、たまたま植物性食品だった」という自然な流れで「植物性食品を食べる」というカルチャーの認知を広げていこうとしているわけだ。
実店舗を構える戦略を取るのもその一環。
「リテール(小売)と組むことで商品が世に出ていき、『美味しい!』と認知されて消費者との接点が増える。海外の代替肉メーカーであるビヨンドミートやインポッシブルフーズなどは、そうやって消費者との接点を増やし、今では店舗を超えて加工食品としてパッケージ化され、スーパーなどに並んでいます」(東代表)
日本国内でも、2020年頃からハンバーガーチェーンを中心に代替肉を使った商品が注目されるようになってきた。
「日本でもいろいろな商品が出てきて、メディアでも取り上げられることが増えてきました。
消費者の間でも、(植物性食品は)ヴィーガン向けという認識から、フレキシタリアンという動物性のものを少しだけ減らそうという考え方が増えてきたように感じています」(東代表)
植物性食品の市場は、代替肉だけでも2027年には15兆円とも言われている。この先、新たな食文化として日本にどう根ざしていくのか、引き続き注目したい。
(文・三ツ村崇志)