ウォーレン・バフェット(右)とビル・ゲイツ(左)に囲まれるアリエル・シン。
Ariel Hsing
卓球の全米チャンピオンからマッキンゼーのコンサルタントに転身したアリエル・シンは、伝説的な投資家でありバークシャー・ハサウェイのCEOでもあるウォーレン・バフェットと、10年来の友人だ。
Insiderが先ごろ行ったインタビューでシンは、バフェットから学んだという人生訓や、新しいチャレンジに取り組むうえでバフェットと親交があることがどう役立ったかを話してくれた。
株主総会での卓球対決
2人が初めて会ったのは2005年のこと。バフェットの友人が、バフェットの誕生パーティーへシンを呼び、2人を卓球で勝負させたのだ。
バフェットは2006年、株主宛ての書簡の中で、当時をこう振り返っている。
「75歳になった週に、アリエルと対戦しました。当時9歳で、卓球台の向こうにやっと見えるくらいの背丈しかない姿を見て、若い子のやる気を打ち砕いてはいけないから、手加減してやろうと思いました」
しかし、こう続けている。「逆に、私がこてんぱんにやられました」
それでもバフェットは試合を楽しんだ。2007年のバークシャー・ハサウェイ年次株主総会にもシンを招待し、自身や親しい友人であるビル・ゲイツらとも対戦させたほどだった。株主総会での対決は、その後11年間続いた。
その間、シンは2010年、15歳のときに史上最年少で卓球全米チャンピオンになった。さらに2011年と2013年にも全米を制覇。2012年のロンドン五輪では、アメリカ女子卓球チームのキャプテンも務めた。このとき個人戦では3回戦で敗退したが、対戦相手は最終的に金メダルを獲得している。
卓球台から離れたシンは、プリンストン大学を卒業。JPモルガンでクレジットアナリストとしてのインターンを経て、現在はエンゲージメント・マネジャーとしてマッキンゼーで働いている。シンは現在もバフェットと連絡を取り合っており、ビジネススクールに行くべきかといったキャリアの相談も時折しているという。2022年の年次株主総会でも会う予定だ。
バフェットから学んだ人生訓
シンは、「ウォーレンおじさん」から学んだ教えの中でも、特に大切な教訓を6つ紹介してくれた。
情熱に従う
仕事が楽しすぎて「タップダンスで出勤する」ことで有名なバフェットは、自分の情熱に従うよう人々に助言している。そうすれば、キャリアを労働だと感じなくなるからだ。
この哲学に刺激され、シンはコンサルタントになろうと決意した。自分の情熱を探し求めながら、1社でも多くの企業、1つでも多くの業界について学びたいと思ったのだ。
物事に全力で取り組む
バフェットは投資に夢中のあまり、10歳になるまでには、地元の図書館にあった投資に関する本はすべて読み切ってしまったほどだった。シンはこの話がきっかけで、懸命に働き、あらゆることに全力で取り組み、さらに上を目指すために努力し、時間を賢明に使おうと思うようになった。
抜きん出るには全力で向き合わなければいけないという意味で、「投資は卓球とよく似ています」とシンは語る。
評判を築くのは数年、失うのは一瞬
バフェットはよく、「評判を高めるのは何年もかかるが、失うのは5分でできてしまう」と話す。
シンは、自分が後世にどんなレガシーを残していくかを大切に考える。そのため、毎日最善を尽くし、尊敬できる人たちに囲まれて過ごすようにしている。
株を保有することは事業を所有すること
株式の保有は、事業の一部を所有するようなものだ、とバフェットは考えている。シンは仕事でこのコンセプトを活用し、事業主であるクライアントの立場に自分を置いて考えるようにしている。
こうすることで、クライアントの問題について、外部の人間としてではなく、本当の意味で理解できるようになる。
謙虚であれ
シンは、初めてバフェットやゲイツに会ったとき、2人が謙虚で地に足がついているように見えたため、著名人だとは思わなかった。「この印象がずっと残りました。私もあんなふうになりたいです」とシンは語る。
好奇心と自己責任、過ちを認める強さを持つこと
バフェットの知的好奇心、自己責任能力、誤りを認める姿勢に、シンは共感を覚える。シン自身も、広い心を保ち、過去に下した決断を分析し、自分を他人と比べないよう意識している。
最高レベルの競技でプレーをし、バフェットとゲイツという世界屈指の成功者2人とともに過ごすことで、シンは学び以外の思いもよらない恩恵を手にした。動じない自信とプレッシャーに負けない冷静さだ。
「仕事でCEOとお会いしても、それほど怖いと感じなくなりました。いろいろな無理難題が飛んできますが、何でもやってやろうという気持ちです」
(翻訳・松丸さとみ、編集・常盤亜由子)