ソニー「Xperia PRO-I」実機の絵がすごすぎた…スマホの皮を被った「ソニー α」じゃないか

Xperia PRO-Iの背面

「Xperia PRO-I」は背面に3つのレンズを搭載。中央にあるのが、メインとなる1インチセンサー+ガラスモールドレンズのカメラだ。

撮影:林佑樹

12月15日に発売予定のソニーの新型スマホ「Xperia PRO-I」。既報の通り、名称や直販価格19万9800円(税込)からも分かるようにプロ用途を狙った製品だ。

スペックでカメラファンの間で話題になったのが、広角レンズ(24mm)への像面位相差AFを搭載した1インチセンサーとガラスモールドレンズ、可変絞りの採用だ。

また、ミラーレス「αシリーズ」ではお馴染みのAFの高速化・高画質化に寄与する「フロントエンドLSI」搭載と、スマホらしからぬ要素もポイントになる。

本稿では発売に先駆けて“広角レンズ”のみ画質チューニングが最終に近い開発機を屋外で試す機会を得た。フォトグラファーの目線で、Xperia PRO-Iの描写性能や操作感をについて見ていこう。

広角レンズは「“ソニーのα”の絵づくり」そのもの

路上の自転車の作例

Xperia PRO-I受領後にとりあえず撮影したもの。αシリーズユーザーであれば“よく知る絵”であるハズ(クリックすると実ファイルで表示)。

撮影:林佑樹

まず、αシリーズを所有していたり、触れたことがあったりした読者向けの評価としては、“いつもの絵がスマホでも出てくる”の一言で済む。いつもの絵すぎて触れる要素がないほどに、良い意味で「ただのα」というのがファーストインプレッションだった(「α7III」以降に極めて近い)。

つまり、カメラ自体の素性との対話が不要でよく、光線の入射角もいつも通りでよく、筆者が愛用する「α7R IV」の感覚でXperia PRO-Iを使えてしまった。

逆にXperiaシリーズを愛用してきた人が触れた場合は、これまでとはまったく違った絵を楽しめることになる。とりわけ、写真のいわゆる“ヌケの良さ”に衝撃を覚えるだろう。

雑踏の作例

スマホとよりは、コンパクトデジタルカメラ感覚に近いフィールで扱えた(クリックすると実ファイルで表示)。

撮影:林佑樹

スマホなのに一眼カメラの「いつもの絵」が出てくるには理由がいくつかある。像面位相差AF搭載1インチセンサーは、全画素を利用しているわけではないが(そのメリットは後述)、1画素あたりの受光性能は良い。

次に、映像処理部分である「BIONZ X for mobile」と「フロントエンドLSI」。フロントエンドLSIはαシリーズや高級コンパクトデジカメの「RXシリーズ」に搭載されている。

Xperia PRO-Iの場合はBIONZ X for mobileをサポートする。メリットは処理全般の高速化であり、AF速度(オートフォーカスの速度)や瞳AF(人物の瞳にフォーカスする機能)の追従性はもちろん、画質の向上や連続撮影枚数の増加などがある。

そして、注目はレンズだ。

レンズはスマホとしては珍しいガラスモールドになっており、従来のプラスチックレンズよりも透過率が高く、描写とヌケのよさに直結している。

葉脈の作例

葉脈で解像感を見ると、まったくスマホっぽくない(クリックすると実ファイルで表示)。

撮影:林佑樹

夜間の作例

挙動はオートHDR前提的なのだが、最近のコンピュテーショナルフォトグラフィーのような「塗った感じ」は少なめ(クリックすると実ファイルで表示)。

撮影:林佑樹

水面の作例

水面の描写がとてもいい(クリックすると実ファイルで表示)。

撮影:林佑樹

2種類の「絞り」が選べる可変絞り機構

可変絞り

左がF2.0、右がF4.0。

撮影:林佑樹

可変絞りは、純正カメラアプリ「Photography Pro」で制御可能になっており、F2.0とF4.0から選べる。

描写としては当然ながらF4.0のほうが解像感もよく、また階調も豊富。F2.0は暗い場所や被写体を際立たせたいときに使用するケースが多く、このあたりはミラーレスや一眼カメラのそれと同じだ。

ちなみに、食べ物や卓上の小物を被写体にするような場合、F2.0でもよく、見せ方に応じて絞りを変更するくらいでいい。

被写界深度

被写界深度の浅さは近づいて撮影する際に分かりやすいが、左がF2.0、右がF4.0。なお最短撮影距離は20cmほど。

撮影:林佑樹

手ブレ補正はどうだろう? プラスチックよりは重いガラスレンズであることを心配したが、実機では手持ちでもシャッター速度1〜2秒は問題ナシだった。

側面にあるシャッターボタンのおかげもあるが、静止画撮影で手ブレが気になるシーンはほとんどないだろう。

Videography Pro

ビデオ機能は開発中で具体的なチェックはNGだったのだが、オートフォーカスの移動は配信や録画を強く意識しているようで、瞬時に切り替わるのではなく、ヌルっとシフトする。

撮影:林佑樹

また、動画撮影時は光学手ブレ補正(OIS)と電子手ブレ補正(EIS)の併用により、専用機材を思わせるヌメっとした手ブレ安定性がある。

なお、上記でも少し触れているが、1インチセンサーを搭載しているものの、実際に使用するのは2100万画素中の1220万画素。余った分はEIS用として扱われている。

写真専用アプリ「Photography Pro」はやや物足りない

Photography Pro

Photography Pro。αシリーズやRX100シリーズからいくつかの機能を間引いた操作体系になる。個人的にはクリエイティブスタイルやピクチャープロファイルがほしいところ。

画像:筆者によるスクリーンショット

写真専用アプリ「Photography Pro」についても少し掘り下げみる。スマホでの撮影を意識してか細かい設定ができるものの、簡素で済むにようになっている。

BASICもしくはAUTOモードの場合は、従来のXperiaと同様でシーンセレクト機能もあり、ほとんどの場合でこの2つのモードで済む。

料理の作例1

料理と判断すると、料理向きの色合いに変更される(クリックすると実ファイルで表示)。

撮影:林佑樹

料理の作例2

こちらも料理と認識された(クリックすると実ファイルで表示)。

撮影:林佑樹

センサーの素性からか、オートHDRが初期状態ではオン。これはハイライト側がやや飛びやすいのをフォローするためと思われる。

処理時間は撮影状況次第なのだが、撮影→ちょっと待つなんていうことはなく、テンポよく撮影できた。また肌色の補正は「RX100VII」の発展系のようで、VlogやSNS向けの1枚絵に使う際にも有用だろう。

逆光の作例

逆光モード(クリックすると実ファイルで表示)。

撮影:林佑樹

夜間モードの作例

夜間モードのシャッター速度は1〜3秒が多め。意外とぶれない(クリックすると実ファイルで表示)。

撮影:林佑樹

ただ「Pro」と言うには機能がやや貧弱な印象だ。わかりやすいところでは「クリエイティブスタイル」「クリエイティブルック」「ピクチャープロファイル」もなければ、測光についても、白重点測光や画面平均測光はない。

描写についてα的だと述べているが、日陰にある緑が妙に青っぽくなる傾向もそのままだ。描写のフォローとしてのクリエイティブスタイルの適用ができない点が、αユーザーとしてはちょっともどかしい。

なお、RAW撮影にも対応し、ファイル形式はDNG形式。そのままアドビのLightroom Mobileで処理する想定だろう。

ソニーらしさあふれる製品なのは間違いない

USB Video Class

USB Video Class接続を利用して、Xperia PRO-Iを外付けモニターとして使ってみたところ。

撮影:林佑樹

Xperia PRO-Iは、αシリーズもしくはRX100シリーズがXperiaに収まったかのようなつくりだ。

映像処理面では、Xperia PRO-Iはこれまでのカメラ事業で得たノウハウをふんだんに取り入れた形になる。グーグルのPixelシリーズアップルのiPhoneが機械学習を存分に活かした路線であるのとは対照的だ。

今回は広角レンズのみのチェックとなったが、攻めて尖ったソニーらしさのある製品だと言っていいだろう。

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