夫に育休を取って欲しくない ーー 国が男性育休を後押ししようと法改正を進める一方で、複雑な思いを抱える妻たちがいる。「育児家事レベルが低くて逆にストレス」「“夫の世話”より子どもの世話をしたい」など、最新の調査から見えてきたのは、形骸化した男性育休の実態だ。
男性育休の理想と現実
「夫に育休を取って欲しくない」と考える妻たちがいる。形骸化する男性育休の実態を、最新の調査から探る(写真はイメージです)。
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キャリアデザインセンターは2021年10月、正社員を対象とした女性の転職サイト「女の転職type」の会員638人を対象に、男性育休に関するWebアンケートを実施した。以下にその結果を紹介する(小数点以下、切り捨て)。
子どもがいる女性に対して夫(パートナー)にはどの程度育休を取って欲しかったか質問したところ、最も多かったのは「数カ月」で34%。続いて「何日でも構わない」「数週間」がそれぞれ12%、「1年以上」「半年」がそれぞれ6%だった。
育休を取得した男性の約半数が「1週間以内」、そもそも取得した割合が全体の1割強という現状(「男性育休白書2021」積水ハウス調べ)は、抜本的な改善が必要だろう。
育休は長期間より「取って欲しくない」妻の方が多い
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一方で「育休は取って欲しくない」という妻も7%いた。夫の育休は「半年」「1年以上」は必要だったと回答した人がそれぞれ6%だったことを考えると、決して低くない数字だ。
一体なぜか。同調査では夫の育休について、以下のような声が上がっている。
「2人の収入が減るのは家計に痛手」
「旦那の収入が減るなら育児は自分だけで十分」
「夫の育児家事レベルが低く、逆にストレス」
「結局『夫のお世話』が必要になる」
「夫の世話より子供の世話をしたいので、育休を取られたほうが迷惑」
そう、原因はズバリ「収入」と、「家事・育児スキル」言い換えれば「当事者意識」だ。
「夫のお世話が大変」をなくすために
夫(パートナー)が育休を取る上で心配なこと(複数回答可)は?
出典:「女の転職type」男性育休調査
夫(パートナー)が育休を取る上で心配なこととして最も多かったのも「収入が減る」で、75%だった(複数回答可)。
また夫に育休を取得して欲しくない妻の割合は、子どもがいる女性では7%だったが、子どもがいない女性では1%と大きな差もある。 調査を行ったキャリアデザインセンターの担当者は言う。
「夫に育休を取って欲しくない理由として最も大きいのは『収入が減る』という点と、『夫のお世話が大変』という2点です。すでに子どもがいる人の方が、より収入のことや夫の家事力のことを把握している(過去経験がある)ため、夫に育休を取って欲しくないと考える人の割合が多いと推察できます」
男女の雇用・賃金格差の解消はもちろん、必要なのは男性の本気の家庭進出だろう。内閣府の調査によると、コロナによる緊急事態宣言中、夫婦(パートナー)間の家事・育児の分担は女性約7割、男性約3割だった。以前に比べて家事・育児の時間が増えたと回答したのも女性の方が多く、家族が家にいる時間が長くなるほど女性の負担も増えることが証明された形だ(2020年「男女共同参画の視点からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響等に関する調査」)。
育休が同じ状況になっては全く意味がない。男性育休を形骸化させないために何が必要か、議論する時だ。
(調査対象:年齢30-39歳が36%、20-29歳が26%。7割が働いており、うち正社員が約6割を占める)
(文・竹下郁子)