2021年6月23日、カリフォルニア州ロサンゼルスのハリウッド大通りにあるスターバックスに掲げられた「We're Hiring!(スタッフ募集中)」のサイン。
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- 企業は人手不足で雇用の確保に苦慮しており、単純作業であればロボットに頼る企業も出てきた。
- 自動化装置開発企業のCEOは「人々は労働を排除したがっている」とブルームバーグに語っている。
- イーロン・マスクは以前、自動化が進む将来、肉体労働は「あえてしなくてもよいことになる」と述べた。
雇用の確保が困難な状況の中、単純作業をしてくれるロボットがかなり役立っているので、経営者は仕事をロボットに引き継ぐ準備をしている。
「人々は労働を排除したいと考えている」と、アメテック(Ametek)のデイビッド A. ザピコ(David A. Zapico)CEOはブルームバーグに語っている。アメテックは産業用の自動化装置を製造しており、同社の事業は「すべてが全開で稼働している」という。
Insiderではこれまでにも、人手不足の原因として考えられることについて報じてきた。人々が仕事に戻らない理由は1つではない。仕事内容と労働者のスキルのミスマッチも、その一因と考えられている。アメリカのマーティ・ウォルシュ(Marty Walsh)労働長官は、人手不足のなっている原因は3つあるとInsiderに語っている。前例のない時代を生きていること、健康に不安があること、仕事から何を得たいのか見直すようになってきたことだ。
しかし、理由が何であれ、企業は事業を続ける必要があり、自動化は有効な解決策として全米に普及しつつある。何カ月も人手不足に悩んできたレストランでは、メニューをウェイターが持ってくるのではなく、QRコードで見られるようにした。
さらに、クラッカー・バレル(Cracker Barrel)では、食事代金の支払いができるモバイルアプリを展開、マクドナルド(McDonald's)ではシカゴの10店舗でドライブスルーでの自動注文のテストを開始、デイブ&バスターズ(Dave & Buster's)では非接触型注文の拡大を計画するなど、かつて飲食店で人間が行っていた多くの仕事が事実上なくなりつつある。
テスラ(Tesla)のイーロン・マスク(Elon Musk)CEOも、このような傾向が高まっていることを2021年8月のプレゼンテーションで指摘しており、「テスラボット」、つまり人間がやらなくてもいい「危険で反復的で退屈な仕事」をするロボットの開発に取り組んでいると述べた。
「本質的に、未来では肉体労働はあえて選択しなくてもよいことになるだろう」とマスクは述べ、「だからこそ、長期的にはベーシックインカムが必要になると思う」と付け加えた。
企業は人間が行っていた仕事をロボットに任せるようになってきているが、人間を労働力として維持するための解決策はある。それは給料を上げることだ。Insiderが3人の雇用主に話を聞いたところ、初任給を上げたら人手不足に悩むことはなくなったという。ある雇用主は基本給を時給11ドルから14ドルに上げたところ「少し人員過剰になってしまった」と述べた。
この自動化の傾向が続いたとしても、人間にとって最悪の事態ではないかもしれないと、経済学者のノア・スミス(Noah Smith)は2021年6月のブログ記事で指摘している。彼は、飲食店で注文を取ったり、テーブルを巡回したりしていた人たちが、より価値のあるスキルを身につけることができるようになれば、雇用の拡大につながる可能性があると述べている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)