労働者はより高い給与やよりよい福利厚生のある仕事を求めている。
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- 賃金を引き上げた雇用主の中には、人手不足に悩まされていないと言う人もいる。
- ある企業は初任給を時給14ドルに引き上げた後、「実際は少し人員が過剰気味」とInsiderに語った。
- マンハッタンのあるレストランのオーナーは、初任給を時給25ドルに上げ、スタッフが充足されているという。
全米で労働力が不足している中、スタッフを確保するために賃上げを行った雇用主の中には、苦労していないと話している人もいる。
その中には、スタッフに時給15ドル(約1700円)を支払っているというミシガン州のバーのオーナーや、初任給を時給25ドル(約2840円)に引き上げたというマンハッタンのレストランのオーナーなどが含まれている。
アメリカ国内では、労働者がよりよい賃金、福利厚生、労働条件を求めて仕事を辞めてしまい、膨大な労働力の不足に悩まされているのが現状だ。企業は新しいスタッフを引きつけ、今いるスタッフを維持するために賃金を上げており、多くの場合、その賃金上昇分をカバーするために価格を上げたり、営業時間を短縮したりしている。
フロリダ州でハウスクリーニングとメイドサービスのMaidProのフランチャイズ加盟店を営むアンドレア・ポンセ(Andrea Ponce)は、パンデミック前には時給11ドル(約1250円)程度だった初任給を2021年5月に時給14ドル(約1590円)に引き上げたが、「実際には少し人員が過剰気味」だとInsiderに語っている。
初任給を時給12ドル(約1360円)、13ドル(約1470円)と上げていったときには、「人が集まるような影響は見られなかった」という。しかし、時給を14ドル(約1590円)にすると、フロリダ州が2021年6月に補助的な雇用補償給付を打ち切ったことと相まって、労働者を引きつける魅力的な職場になったという。
人件費上昇のために5%から10%の値上げをしても顧客は減らなかったとポンセは付け加えている。
マンハッタンのレストラン、ダート・キャンディ(Dirt Cand)を経営するアマンダ・コーエン(Amanda Cohen)は、このパンデミックをきっかけに、スタッフに対してどのように報いるべきかを考えたという。ロックダウンで経済的に苦しい労働者がいることを知り、2021年5月に初任給を時給25ドル(約2840円)に引き上げたと彼女はInsiderに語っている。
賃金を上げて以来、「スタッフの確保で困ったことは一度もない」とコーエンは言う。
彼女によると、新しいスタッフの賃金に合わせてレストランのメニューの価格を約30%値上げして、メニューも簡素化したが、客足は遠のかなかったという。
「我々は『スタッフが第一で、他はすべてその次』ということを大切にしている」とコーエンは言う。
「スタッフがいなければ、成功できない」
ミシガン州のグランドラピッズで、ザ・ミーンワイル(The Meanwhile)とザ・ピラミッド・スキーム(The Pyramid Scheme)という2店のバーを経営するタミ・ヴァンデンバーグ(Tami VandenBerg)は、ミシガン州のニュースサイトMiBizの取材に対し、給与保護プログラム(Payment Protection Program)の資金を利用して初任給を時給15ドル(約1700円)に引き上げたと語っている。
新型コロナウイルスのために一時店を閉め、その後2つのバーの営業を再開したが、健康上の懸念や学校への復帰、業種の変更などの理由で当初は約20パーセントのスタッフしか店に戻って来なかったとヴァンデンバーグは話す。しかし現在はどちらのバーにもスタッフがそろっているという。
ヴァンデンバーグは「我々は必要な人材を集めるために、できるだけ多くの給料を支払うようにした」と語っている。
「スタッフに手当を支給する資金がある限り、我々はこれからも払い続けていく」
賃上げしても採用に苦労する企業もある
労働者が求めているのは高い給料だけではない。時間の融通がきく仕事、リモートワークが可能な仕事、福利厚生が充実している仕事なども求めているのだ。
ワシントン州の宝石店からユタ州のサブウェイ(Subway)に至るまで、いくつかの企業では賃金を引き上げても労働者が集まらないことが分かったという。
バージニア州で住宅用清掃サービス、メイド・トゥ・スパークル(Maid to Sparkle)を経営するジョナサン・バーグスタイン(Jonathan Bergstein)は、新型コロナウイルスのパンデミックの間にスタッフが約半分に減ってしまったと話す。バーグスタインによると、初任給を時給12ドル(約1360円)にまで引き上げ、最大300ドル(約3万4000円)の採用時ボーナスまでに提供していたが、それでも人手不足だったという。
バーグスタインは、中小企業なので個人年金制度の401Kや有給の産休などの福利厚生を提供する余裕がなかったと話す。
「従業員を確保することと、すべての経費を賄うために十分な利益を得ることの両立は難しい」
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)