出典:キッズライン公式HP
ベビーシッターのマッチングプラットフォーム、キッズラインのシッターが乳児を激しく揺さぶる映像がTwitter上で拡散された件で、内閣府のベビーシッター割引券事業の審査や点検を担っている全国保育サービス協会は11月5日、キッズライン社に対して処分を下し、公表した。
11月20日以降、キッズラインから再発防止策の実施状況が報告され、適切な対策を講じたことが確認されるまでの期間、新規契約者の割引券利用と、割引券を対象とするベビーシッターの新規登録の停止が命じられた。
割引券の最大の補助先
キッズラインは、ベビーシッターと利用家庭のマッチングをするプラットフォーム運営会社。内閣府の「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」の補助金対象事業者として、最大の補助先となっている。
内閣府のこの補助金事業は、指定された企業に勤務している等の使用条件を満たしている利用者が対象の事業者経由で対象のシッターを利用すると、1回あたり最大4400円(従来2200円が2021年度から増額)の補助を受けられる仕組みとなっている。
キッズラインでは2020年に、キッズライン経由で預かった子どもへのわいせつで2人のシッターが逮捕された。内閣府の割引券事業の対象者の審査・点検などを担っている全国保育サービス協会は2021年度、キッズラインに対する補助金対象事業者の認定を更新しながらも、第三者で構成された審査・点検委員会やマッチング型の指導・監査をする専門職員を増員するなどしてキッズラインに対しての監視を強化していた。
揺さぶり動画が拡散
「安心安全」なサービスを提供するために、企業はすべきこととは(写真はイメージです)。
TiernyMJ/Shutterstock.com
今回の事件は、2021年7月に撮影されたある映像がTwitter上で拡散されたことが発端。ベビーシッターがローチェアに乗る0歳児と見られる乳児を激しく揺さぶる場面と、大きく傾ける場面が映っている2つの映像が7月から投稿されていた。
10月9日前後に拡散され始め、その後、家の中にカメラを設置した保護者と見られる投稿主は当該ツイートとアカウントを削除した。キッズラインは動画拡散により問い合わせが複数入ったことを受け、10月10日にホームページ上で、既に当該シッターは退会済みであるとした上で、不適切な保育があったことを認め、同日、内閣府に報告した。
これを受け、全国保育サービス協会は臨時ベビーシッター派遣事業割引券等取扱事業者審査・点検委員会を開催。以下のような見解をキッズラインに対して出した。
「今回の事案は、割引券の対象シッティングではないとのことであるが、既に7月10日に発生し、本事案に関する対応が相当に進んでいたにもかかわらず、その後、7月27日に開催された第3回審査・点検委員会において、貴社からの再発防止策等の状況説明・報告が重要な議題であったところ、本事案について全く報告がなされなかったことを重視しなければならない」
「10月になり映像がSNS上で拡散されたことにより10月10日に報告をしてきたことは、再認定の条件の主旨に反するものである。また、本事案は、子どもの命にかかわる重大な懸念事案と思われるところ、キッズライン社内における保育リスクの認識が不十分であると思われることや、事案発生後の児童の状況確認が十分に行われていないことなどを総合的に判断し、今回の対応を命ずるものである」
キッズライン社は、これを受け、11月8日にホームページ上にお知らせを出した。
「弊社は、さらなる安全対策を目指して日々推進している中ではございますが、今回確認できた行為についてご利用者の皆様や関係各所等への報告に対する認識および、事案発生後のお子様の状況確認などが、保育に関わるものとして不十分であったと痛感しております。それにより多大なるご迷惑やご心配をおかけしてしまった事を関係者の皆様へ重ねてお詫び申し上げます」
「『日本にベビーシッターの文化を』という理念のもとに、弊社ではこれまでも様々な安心安全の取り組みを行ってまいりましたが、この度の事を重く受け止め、あらためて再発防止策を講じ、法令遵守(コンプライアンス)を徹底してまいります。再発防止策として、より一層の安全管理を強化するために、さらなる各種ルールや安全管理を徹底する事を引き続き真摯に対応してまいります。改めまして、この度は皆様にご迷惑とご心配をおかけいたしました事を、心よりお詫び申し上げます」
(文・中野円佳)