環境先進国として知られるフィンランドの首都ヘルシンキは、行政主催イベントでの肉類・食肉加工品の提供を禁止する方針を打ち出した。画像は同市内でのフードイベントの様子。
Evannovostro / Shutterstock.com
フィンランドの首都ヘルシンキが、同市主催の全てのイベントで肉類の提供を中止する方針を打ち出し、賛否両論の大きな話題を呼んでいる。
ヘルシンキ当局は11月2日、2022年1月1日以降に開催する会議、セミナー、ワークショップ、公共イベントで提供する飲食サービスについて、環境問題への取り組みの一環として以下のようなポリシーを導入する計画を発表した。
- 季節に応じたベジタリアンフードあるいは持続可能な方法で漁獲された魚介類、フェアトレード製品(コーヒー、茶、バナナなど)のみを提供する
- 肉類・食肉加工品は提供しない
- 宗教上、食生活上、アレルギー上の理由で制限のある人には配慮し、特別食を提供する
- 使用できるのは食器とカトラリーのみ。使い捨てのカトラリーは不可
- ボトル飲料は提供しない
- イベント招待者にはフードロスを回避するための制限に従う義務があることを伝える
市民や当局職員だけでなく、イベントに参加する外部の招待客もポリシーの適用対象。ただし、ハイレベルの来賓対応などやむを得ない理由がある場合は適用外となる。
地元英字メディアのヘルシンキタイムズは当局からの情報として、「今回のポリシーは学校や高齢者施設での食事提供には適用されない」と報じている。
ヘルシンキ市議会は2019年2月、市が使用・提供する乳製品や肉類・食肉加工品を2025年までに半減させる法案を可決。今回のポリシー導入もそうした流れに沿うものと言える。
ただし、市民の反応はさまざまだ。SNS上では、環境問題に率先して取り組む市の姿勢を高く評価する声が数多くあがっているものの、少なからず批判もみられる。
前出のヘルシンキタイムズによれば、フィンランドの農業生産者・森林保有者から成る業界団体のトップは次のように述べ、ポリシー導入に疑問を投げかけている。
「ヘルシンキ(市当局)にはどんな食事を提供するかを自ら選んで決定するあらゆる権利があります。だから今回の決定そのものには問題はとくにありません。
ただ、ポリシーの中身からは、グリーンウォッシング(=うわべだけの環境配慮)のにおいがプンプンするのです」
また、ツイッター投稿には、(ポリシーの影響を受ける)フィンランド国内の農業関係者へのサポートが欠如していることや、市民による選択の自由を妨げる可能性があることを指摘(下の埋め込みツイート参照)する内容も増えつつある。
(文:川村力)