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NASAの火星ヘリ、予想外の活躍…15回目の飛行も任務完了

2021年4月5日、NASAの探査車「パーサヴィアランス」から火星の地面に投下された小型ヘリコプター「インジェニュイティ」。

2021年4月5日、NASAの探査車「パーサヴィアランス」から火星の地面に投下された小型ヘリコプター「インジェニュイティ」。

NASA/JPL-Caltech

  • NASAは、小型ヘリコプター「インジェニュイティ」火星に送り込んだものの、飛行が成功するという確信はなかった。
  • しかし、同機はエンジニアが期待していたよりも高く、遠く、そして速く飛んだ
  • インジェニュイティは、5回目の飛行で墜落するだろうと思われていたが、このほど15回目の飛行を終えた。

アメリカ航空宇宙局(NASA)のエンジニアたちは、火星探査車「パーサヴィアランス(Perseverance)」を組み立てているときに、独創的なアイデアを思いついた。

小さなヘリコプターを火星に持っていったらどうだろう?」

だがヘリコプターが火星で使えるかどうかは分らない。地球の大気の1%の密度しかない空気中で離陸するのは難しいだろう。これはエベレストの高さの3倍の高度で飛ぶようなものだ。しかし、NASAは技術的な実演を通して、それが可能であることを証明したいと考えた。

NASAのエンジニアは「インジェニュイティ(Ingenuity)」というティッシュボックスほどの小さなヘリコプターを製作し、それをパーサヴィアランス内部に残っていた空きスペースに詰め込んだ。エンジニアは、インジェニュイティが冷たい火星の表面で、最初の夜すら無事に過ごせるのかどうか、確信が持てなかった。また、コマンドを出しても飛ばないのではないか、5回予定していた飛行のうち、1回は墜落してしまうのではないかと心配していた。

しかし、インジェニュイティは何度もその不安を払拭してくれた。11月6日には15回目の飛行を終えている。

今回の飛行で得られたデータは、現在NASAで解析中だ。計画通りに飛行していたなら、インジェニュイティは火星の地面から約12メートルの高さまで上昇し、約400メートルの距離を129秒弱で飛んだことになる。

NASAは火星ヘリコプターが墜落することを覚悟していた

2021年2月18日、インジェニュイティとパーサヴィアランスは、ジェゼロクレーターに着陸した。このクレーターは干上がった古代の湖の底だ。科学者たちは、35億年以上前にジェゼロ湖に火星の微生物の生態系が存在していた可能性があると考えている。もしそのような微生物が存在していたとすれば、湖の底に堆積したミネラル分が固まった岩の中で、化石化しているかもしれない。

当初、エンジニアたちはインジェニュイティが約5メートル以上の高さを飛べるとは思っていなかった。また、プロジェクトマネージャーのミミ・アン(MiMi Aung)は4月初旬の5回目の飛行の際に、ヘリコプターが「未調査のエリアに入っていくので、安全に着陸するのは難しいだろう」と話していた。

2021年9月5日、13回目の飛行中にナビゲーションカメラで撮影されたインジェニュイティの影。

2021年9月5日、13回目の飛行中にナビゲーションカメラで撮影されたインジェニュイティの影。

NASA/JPL-Caltech

「着陸に失敗したら、その時点でミッションは終了してしまう」と彼女は述べていた。「着陸がうまくいくかどうかで、寿命が決まる」

しかし、インジェニュイティは少なくとも14回は着陸に成功している(最新の飛行での着陸成功が確認できれば15回だ)。

2021年4月30日、4回目の飛行を行うインジェニュイティの姿を、パーサヴィアランスのカメラが捉えた。

2021年4月30日、4回目の飛行を行うインジェニュイティの姿を、パーサヴィアランスのカメラが捉えた。

NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS/LANL/CNES/CNRS/ISAE-SUPAERO

インジェニュイティは、最初の5回の飛行で非常に優れた性能を発揮したため、NASAはミッションを30日延長した。延長後初となる6回目の飛行では、これまで調査されていなかった地形の上を飛んだ。

それ以降も、岩場や波打つ砂地など、未調査の場所をいくつも訪れた。

これらの飛行でインジェニュイティは、パーサヴィアランスチームが探査車を送ることを検討している場所の露頭や岩場の写真を間近で撮影した。NASAはその写真をもとに、探査車が進むことのできる安全で平坦なルートを特定したり、その地域にある岩石の種類を特定したりすることができた。この先、パーサヴィアランスがその岩石のサンプルを採取すれば、ジェゼロクレーターの過去を知る手がかりとなる。

パーサヴィアランスの科学者であるケン・ファーリー(Ken Farley)は、4月の記者会見で「探査車が踏破できないような地形にヘリコプターを飛ばし、科学データを持ち帰る能力は、探査車と偵察用ヘリコプターを組み合わせる将来のミッションにとって非常に重要だ」と述べた。

2021年9月5日、13回目の飛行を行った際にインジェニュイティが撮影した写真。

2021年9月5日、13回目の飛行を行った際にインジェニュイティが撮影した写真。

NASA/JPL-Caltech

インジェニュイティが30日の延長期間を持ちこたえたことから、NASAはミッションの期間をさらに延長した。インジェニュイティが墜落するか、パーサヴィアランスの運用に支障をきたすようになるまで、インジェニュイティを飛ばし続けることにしたのだ。そのどちらも、まだ起きていない。

実際、インジェニュイティはほぼすべての飛行を完璧にこなしている。5月に一度だけ、技術的な不具合で飛行中に前後左右に揺れたことがあったが、それでも無事に着陸した。

5月22日にインジェニュイティのナビゲーションカメラが撮影した一連の画像には、インジェニュイティが前後に傾く様子が写っている。

5月22日にインジェニュイティのナビゲーションカメラが撮影した一連の画像には、インジェニュイティが前後に傾く様子が写っている。

NASA/JPL-Caltech

NASAは最新の2回の飛行でローターの回転速度を上げ、インジェニュイティをさらに追い込んだ。

火星の希薄な大気中で十分な揚力を得るためには、インジェニュイティは2組のブレードを毎分2400回転で反対方向に回転させなければならない。しかし、ジェゼロ・クレーターが本格的な夏を迎えた今、大気はさらに薄くなっている。火星の南極が冬を迎えていることから、大気中の二酸化炭素の一部が雪や氷になってしまったからだ。そのため、最近ではブレードの回転数を毎分2700回転までスピードアップさせている。

インジェニュイティは、その条件の飛行をすでに2回行っている。

NASAは、パーサヴィアランスが最初に火星に着陸した場所にインジェニュイティを戻すために、さらに4回から7回の飛行を計画している。しかし、それ以降の計画は明らかにされていない。

2021年11月6日、15回目の飛行で、ナビゲーションカメラが捉えたインジェニュイティの影。

2021年11月6日、15回目の飛行で、ナビゲーションカメラが捉えたインジェニュイティの影。

NASA/JPL-Caltech

最終的にNASAは、より野心的なヘリコプターを火星に、そしておそらく他の場所にも送りたいと考えているのだろう。インジェニュイティのような宇宙ドローンはいつの日か、観測の難しい地形を上空から調査したり、探査車よりも早く、広い地域を調査したり、さらには宇宙飛行士のために偵察を行ったりすることができるようになるだろう。

NASAでは、すでにこのようなヘリコプターを使ったミッションを進めている。2027年には土星の衛星タイタンに向けて「ドラゴンフライ」と呼ばれるヘリコプターを打ち上げる予定で、メタンが豊富なタイタンに生命体が存在するのかどうか調べることを目的としている。

[原文:NASA engineers expected their Mars helicopter to crash after 5 liftoffs. It just landed its 15th flight.

(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)

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