「ニアバイ(Nearby)」創業者のエイプリル・アンダーウッド。創業直前はスラック(Slack)のバイスプレジデント(プロダクト担当)を務めた。
April Underwood
スラック(Slack)やツイッター(Twitter)、グーグル(Google)の経営幹部を歴任したエイプリル・アンダーウッドは、およそ1年前に創業したばかりのスタートアップ「ニアバイ(Nearby)」を解散する。
同社は、消費者が近場の地元小売店で買い物できるEコマースプラットフォームを展開していた。
アンダーウッドは11月9日(米国時間)に公開したブログサービス「ミディアム(Medium)」の投稿で次のように書いている。
「ロックダウンなど行動制限が緩和され、ワクチンが届き、子どもたちが学校に戻ったことで、地元のお気に入りのお店でリアルに買い物を楽しむなど、パンデミックで失われていた日常を私たちは取り戻しました。
ニアバイを立ち上げてから2度目のホリデーシーズンを迎え、ここまでの取り組みをふり返ってみると、私たちが生み出してきたものへのニーズが薄れてきた事実を認めないわけにはいかず、手を引くべきときが来たと感じています」
アンダーウッド率いるニアバイは2021年5月にGV(旧グーグルベンチャーズ)など複数のベンチャーキャピタルから2100万ドル(約23億円)を調達している。
同資金調達ラウンドでは、ソフトバンクから2億ドル超の出資を受けながら2020年2月に事業閉鎖したECスタートアップ「ブランドレス(Brandless)」の共同創業者兼最高経営責任者(CEO)ティナ・シャーキーも出資者に名を連ねた。
ニアバイは創業時には「ローカル・ラボラトリー(Local Laboratory)」と名乗り、アンダーウッドは事業内容を「地元の人たちによる手づくりのオススメ商品と出会える地元密着型のアマゾン」と表現していた。
テック業界を代表する巨大企業の経営幹部を歴任した経験を生かそうと考えたアンダーウッドが、パンデミックのさなかに初めて立ち上げた自分の会社がニアバイだった。
アンダーウッドは以前、Insiderの取材に応じて次のように語っている。
「ニアバイは残念ながらきわめて現実的な必要性があって誕生したサービスですが、究極的には、当社加盟店(のような地域のお店)が現在のようなデジタル時代でも排除されないような仕組みを生み出すことこそ、待ち望まれているのだと思います。
それぞれのお店には自力で(デジタル時代のサービスに)乗り出す力はないのですから」
ニアバイはサンフランシスコ・ベイエリア(カリフォルニア州)とオースティン(テキサス州)を対象にECプラットフォームを提供し、今後は全国展開も計画していた。
アンダーウッドは前出のミディアム投稿で、11月第2週を最後にECプラットフォームでの注文受付を終了するとしている。
(翻訳・編集:川村力)