TikTokで「Crypto Mason(クリプト・メイソン)」と名乗るメイソン・バースルイス(Mason Versluis)が暗号資産(仮想通貨)に投資を始めたのは2017年のことだった。
今ではイーサリアムのライバル通貨と目されるようになったヘデラ・ハッシュグラフ(HBAR)を0.03ドルの時に購入した。その後、価格は約1200%上昇した。また、0.17ドルで購入したリップル(XRP)は600%上昇、28ドルで購入したイーサリアムベースのクアント(QNT)も約864%上昇した。
バースルイスは今でもメインストリームになりそうな新しいプロジェクトを見つけては発信し、TikTokでは69万人のフォロワーを有する。
そんなバースルイスがこの5カ月間注目しているのが、メタバース関連の暗号資産だ。
「クリプト・メイソン」の名で知られている暗号資産インフルエンサー兼投資家のメイソン・バースルイス。
Mason Versluis
メタバースとは、ユーザーが仮想空間で交流できる一種のデジタル世界だ。ブロックチェーンのように数多く存在し、運営方法はそれぞれ少しずつ異なっている。スマホゲームとテレビゲームのように、見た目や仕組みもそれぞれ違う。仮想空間上の土地を購入し、そこに建物を築けるメタバースもあれば、ドラゴンを倒すことができるメタバースもある。
「メタバース上では、現実世界にいるのと同じような感覚で、オンラインの仮想世界に存在できます。人と出会ったり、ゲームをしたり、買い物したりもできます」とバースルイスは話す。
フェイスブックの発表を機に世間のメタバースへの関心は一気に高まったが、バースルイスはそれ以前からメタバースに関心を持っていた。きっかけは、デジタル世界で仮想の土地が91万3000ドル(約1億円)で売り出されているというツイートを見たことだった。
とはいえ、フェイスブックとその極めて中央集権的なプラットフォームは、暗号資産コミュニティにはあまり歓迎されていないとバースルイスはいう。
「こういう新しいものの普及には、段階があります。フェイスブックが派手に宣伝してくれたおかげで、たくさんの人が使い始める第一歩になるでしょう」とバースルイスは話す。
メタバース通貨の高騰はどう起きる?
メタバース内ではゲームをするユーザーはもちろんのこと、しない人でも、投資機会は暗号資産市場と同じように多岐にわたる。バースルイスは、そんな投資のチャンスを見逃すべきではないと強調する。
「メタバースという波は確実に押し寄せてきます。フェイスブックのような1兆ドル規模の企業がこれほど大きな一歩を踏み出したのですから、世界がどこに向かっているのかは、とてもクリアです。投資家はこの新しい波に乗らないといけません」
では、メタバース関連の暗号資産の高騰はどのように起きるのか?
メタバースの中には、イーサリアムのように名の知れたブロックチェーンを基盤にして構築されたものがある。そんなゲームには、ユーザーがネイティブ通貨として使用する独自のトークンが存在する。仮想世界の人気が高まれば、メタバースのトークンの価値が高騰する可能性があるという訳だ。
しかし、メタバースの開発プロジェクトの多くはまだ初期段階にあり、広くは普及していないため、価格変動が激しく投資リスクは非常に高い。そんな理由から、バースルイスは価格の動きに勢いが見られるプロジェクトや、大企業と提携しているプロジェクトのみに絞って投資している。
「いろいろと報道されたので、大量の資金がメタバース関連の暗号資産に流れ込んでいますが、あくまで一時的なものでしょう。これは当然、収まります。しかし長期的には爆発的に伸びる。将来性があると、個人的には100%の自信を持って言えます」
そこでバースルイスに、自身も投資しているというメタバース関連の暗号資産5つを紹介してもらった。
5つのメタバース関連銘柄
ディセントラランド公式サイトよりキャプチャ
バースルイスが最初に挙げたプロジェクトは、MANA(マナ)というトークンを使う「ディセントラランド(Decentraland)」というメタバースだ。
彼が目にしたという、91万3000ドルで売られていたデジタル世界の土地は、このエコシステムの中で作られたものだ。「ディセントラランド」はイーサリアムのブロックチェーン上で構築された代表的なメタバースのひとつである。
「ディセントラランド」は特定の一社ではなくコミュニティによって運営されているため、フェイスブックのメタバースとはまったく逆のものだとバースルイスはいう。
このデジタル世界では、マーケットプレイスで買い物をしたり、ゲームをしたり、土地を買って家を建てたりもできる。もちろん、そんな活動をするにはMANAが必要だ。米価格追跡サイトのコインマーケットキャップ(CoinMarketCap)によると、11月3日時点でのMANAの価格は2.74ドルで、年初から約1042%上昇している。
2つ目は、HEROというトークンを使用する「メタヒーロー(Metahero)」だ。このプロジェクトでは新たなメタバースを作るのではなく、現実世界とデジタル空間を融合できるハードウェアを開発している。その革新的な装置とは、人やモノをスキャンして、デジタル世界に登場させられる大型スキャナーだ。
「つまり、メタヒーローは大規模なデータベースを作ろうとしているんです。実現すれば、現実世界とデジタル世界が融合された状態がずっと続く。いわば3次元のポータルサイトのようなものですね」とバースルイスは話す。
コインマーケットキャップによると、HEROの最新価格は0.16ドルで、年初から約2062%上昇している。
次に挙げたプロジェクトは、イーサリアムブロックチェーン技術を活用し、世界のメタバース市場を牽引している「ザ・サンドボックス(The Sandbox)」だ。トークンはSAND(サンド)。同社のウェブサイトによると、コミュニティやプレーヤーが作り上げていく「仮想空間のメタバースで遊び、創造、所有、管理することができる」という。
ザ・サンドボックス公式サイトよりキャプチャ
バースルイスはSANDに長期投資すべきかどうか十分に調べていなかったため、長く保有するよりも短期的な売買を繰り返していたとInsiderに語った。
コインマーケットキャップによると、SANDは11月3日時点で3ドル前後で取引されていたが、年初来では8233%もの驚くべき上昇を見せている。
米暗号資産取引プラットフォーム、ボイジャー・デジタル(Voyager Digital)のスティーブ・エアリック(Steve Ehrlich)CEOは、「ディセントラランド」と「ザ・サンドボックス」にはメタバースのさらなる発展が期待されることから、「間違いなく、まだ上昇の余地がある」とInsiderの最近の取材で語っていた。
バースルイスが4つ目に挙げた投資先はヘデラ・ハッシュグラフ(Hedera Hashgraph)で、これはメタバースでもブロックチェーンでもなく、次世代分散型台帳技術(ハッシュグラフ)である。使用するトークンはHBAR。彼が期待を寄せる理由は、「VCCESS」というメタバースをヘデラ・ハッシュグラフ上に構築するプロジェクトがあるためだ。このメタバース上では、仮想通貨ではなく非代替性トークン(NFT)を使用することが計画されている。
ヘデラ・ハッシュグラフのプラットフォームは企業主導型で運営されており、その運営審議会にはボーイング、IBM、グーグルなどのグローバル企業が参画している。特定の管理者が介在しないブロックチェーンと比べて集中型であるため、暗号資産コミュニティの間では好ましく思われていない。しかしブロックチェーンよりも株式に慣れ親しんできた伝統的な投資家にとっては、受け入れやすいだろう。
11月3日の時点で、HBARは0.39ドルで取引されており、年初来の上昇率は1119%だ。
最後に、バースルイスはイーサリアムプラットフォームで使われている仮想通貨、イーサを挙げた。「ディセントラランド」と「ザ・サンドボックス」の2大メタバースはイーサリアムブロックチェーンを基盤にしていることから、今後さらに注目すべき仮想通貨だと話した。
(翻訳・西村敦子、編集・野田翔)