11月15日にオープンする「b8ta Tokyo - Shibuya」。
撮影:小林優多郎
「商品を売らない小売店」こと、体験特化型店舗のb8ta(ベータ)は東京都・渋谷に「b8ta Tokyo - Shibuya」(以下、b8ta 渋谷)を11月15日にオープンする。
b8ta 渋谷は、2020年に進出した有楽町、新宿とは異なり、新たに試食・試飲ができる設備と、スマホアプリを活用した新たな体験の仕組みが導入されている。
オープン前にいち早くメディア向けに公開された内覧の様子をお送りしよう。
撮影:小林優多郎
入店するとで最初に目に留まるのは、12月28日までの期間限定での展示を予定している日産の電気自動車 「日産 ARIYA」だ。
試乗はできないが、車内に入ることはでき、内部の様子や「ハローニッサン」および「Amazon Alexa」といったコネクテッド機能も試せる。
日産の担当者は、「渋谷を訪れる若い世代に(ARIYAのような)コネクテッドな電気自動車があることを知ってもらいたい」と話す。
撮影:小林優多郎
もう1つの目玉がロート製薬の「BÉLAIR LAB」による香りのシャンデリア。
本来のシャンデリアの灯にあたる部分に鼻を近づけて、ぶら下がっているポンプを押すとさまざまな香りが楽しめるようになっている。
オープニング時のテーマは「嗅覚で体験するクリスマス」とのことで、チョコレートなどの王道の香りはもちろん、ブランデーなどの変わり種の香りもある。
撮影:小林優多郎
奥に進むと壁際や中央に実際に体験できるほかの商品が並んでいる。
撮影:小林優多郎
商品はいずれも実際に手に取って試せるようになっている。
商品の近くにあるタブレットで、特徴や価格を調べられるほか、スタッフである「b8taテスター」に聞くことも可能。
撮影:小林優多郎
渋谷ならではの特徴になるのが「b8taアプリ」との連動だ。
自分のスマホにアプリを入れ、商品近くのQRコードを読み取ると、詳細情報が分かるようになっている。
撮影:小林優多郎
さらに渋谷では、日本のb8taでは初めて給排水設備を設けており、店舗の奥には飲食物を提供するカフェスペースがある。
撮影:小林優多郎
一部の商品はスマホアプリでQRコードを読み込んだ後、スタッフに見せることでその場で試飲・試食ができる。
来場者は試してみた感想をアプリで表示される簡単なアンケートでフィードバックできる。
撮影:小林優多郎
カフェスペースでは、プロのバリスタの淹れるコーヒーを注文することも。
オープン時はコーヒー1杯88円(税込)で提供されるほか、“メンバー価格”などの、アプリメンバー優待施策がある。
撮影:小林優多郎
オープン時はコロナ対策の観点から試食の提供は難しいが、日本初進出となるラーメン自販機「Yo-Kai Express」も設置されている。
Yo-Kai Expressは従来のインスタント食品の自販機とは異なり、独自の手法でフリーズドライした麺や具材を庫内に保管し、注文を受けてから“調理”を開始。
1分程度で完成し、熱々かつもっちりとした本格ラーメンが楽しめるのが特徴。アメリカでは、テスラやネットフリックスの社内に設置されている。
b8taが東京に3店舗目を構えた理由
b8ta Japanの北川卓司CEO。
撮影:小林優多郎
このように渋谷店は他の2店舗と比べても独特の工夫が凝らされた店舗になっているが、なぜ大阪や名古屋の別の大都市ではなく、東京都内に新店舗を構えたのか。
メディア向けの説明会で、b8ta Japanの北川卓司CEOは最も重視したのは渋谷という“土地柄”と“人流の多さ”だと説明する。
b8taは2020年8月から有楽町、新宿で営業を開始しているが、2021年7月末までの1年間で累計来客数は約45万人、来場者が商品に足を止めた回数は約1150万回になるという。
有楽町、新宿での1年間の実績。
撮影:小林優多郎
その中で有楽町は比較的年齢層高かったり、新宿はマルイの店舗内に構えている関係で女性客が多かったりなどの特徴があるという、
その上でb8taは、アプリや試飲試食の提供という新しい施策を、「渋谷というミレニアル世代やZ世代、スタートアップ企業が多く集まる街」(北川氏)に設置したい狙いがある。
企業は商品のフィードバックに加え、人流データも得られる
店内にはカメラやセンサーが無数に設置されており、出展企業は来場者がどの商品の前に立ち止まったか=興味をもったかなどのデータを分析できる。
撮影:小林優多郎
なお、b8taは消費者から見ればガジェット、美容、そして飲食などを体験できる店舗だが、一方で出展企業にとっては、来場者から生のフィードバックに加え、店内に張り巡らされたカメラやセンサーによる“匿名化された行動データ”が狙いでもある。
その点でも渋谷は新しい試みをしており、初めて店外の半径15mの範囲の人流を計測できる「3D LiDARセンサー」をデンソーウェーブと共同で設置する。
これによって、いつ、店の前にどのぐらいの人数が通ったか。店外に向けたポップや展示を見たか。そして、そのうちの何人が店内に入ったか、といったデータを測定できる。
3D LiDARセンサーで取得するデータの概要。この取り組みは11月15日から1年間実施される見込み。
撮影:小林優多郎
なお、通常のカメラは屋外に向けては設置しておらず、3D LiDARもあくまでも物体の形状や動きを認識するセンサーのため、個人は特定できない仕組み。将来的に「性別」や「年齢層」を予測する機能は検討中とのことだが、現時点では実装されていない。
b8taは福岡では期間限定でポップアップストアを展開していた実績もあり、他の地域への展開も諦めているわけはない。渋谷で行っているさまざまな工夫も含めて「いろいろな土地に出て行けるような準備」(北川氏)をしている段階と言えるだろう。
(文、撮影・小林優多郎)