ライフスタイルブランドを展開するSanuは11月11日、自然の中のもう一つの家を持つサブスクリプションサービス「SANU 2nd Home(サヌ・セカンドホーム)」を開始した。
Sanuが実施した独自調査によると、欧米に比べて日本のセカンドホーム保有率は低いという。これを引き上げ「都市から自然に繰り返し通い、生活を営む」ライフスタイルの浸透を目指す。
11月11日にオープンした八ヶ岳のSANU 2nd Home(八ヶ岳1st)の外観 。
提供:Sanu
Sanu CEOを務めるのは福島弦氏。マッキンゼーを経てラグビーW杯2019日本大会の運営に参画した経験を持つ。
Sanuを立ち上げたもう一人の創業者・本間貴裕氏(Sanuファウンダー/ブランドディレクター)も、Backpackers’Japan創業者で東京の「Nui.」「CITAN」、京都の「Len」など話題のホテル・ホステルを展開してきた人物だ。
福島氏は、SANU 2nd Home開始までの濃密な2年をこう振り返る。
「ラグビーからは、良い仲間を作ると良いものができる、良い結果が出るというのを体感として学びました。一人ひとりが魂を込めて仕事をすると1+1が5になる。
僕らは、社員も株主も関係会社も(ユーザーを含む)みなさんも区別していないです。僕と本間が発することは常に同じで『自然と共に生きる』を一緒に作ろう、ということ。広く仲間づくりをしている感覚です」
重要なのは「絶景」ではなく「心地いい森」が広がっているか
11月10日に渋谷で開かれたオープニングレセプションの様子。左からSanu CEOの福島弦氏、ファウンダー/ブランドディレクターの本間貴裕氏。
撮影:伊藤 有
SANU 2nd Homeは、スマートフォンの専用アプリに登録して操作すれば、東京から片道2時間程度の立地に建設された「SANU CABIN」というもう1つの家に滞在できるサービス。入会費は無料、月会費が5万5000円(税込)で、宿泊費は月曜日〜木曜日は無料、金曜日〜日曜日と祝・祝前日は5500円(税込)、ハイシーズンは1万6500円(税込)となる。
「キャビンを設置する場所についてはサービス開始までの1年半、1000を超える候補地から300ほどの場所に本間と視察に行って決めました。選定基準は、自然の心地よさ、地域の魅力、アクセスの良さの3つです。
僕らは、地域に根付いて暮らすように滞在してもらいたい。ですから、絶景とかではなく、心地いい森が広がっているかどうかが重要なんです」(福島氏)
オープニングレセプションの展示で紹介されたSanuキャビンの歩み。実際に足を運んだ候補地がビジュアル化され、一つひとつの展示には軌跡を記した紹介文が置かれていた。
撮影:伊藤 有、小倉宏弥
初期サブスク入会申し込みは約1600名で完売し、11月11日時点で1000人以上が入会待ちの「ウェイティング登録」しているという。
第一弾として2021年11月11日にオープンしたのは、白樺湖(長野県)と八ケ岳(山梨県)の計5棟。2022年春までに北軽井沢(群馬県)、山中湖(山梨県)、河口湖(山梨県)などの計7拠点、50棟に拡大する。繰り返し自然の中に通うためのセカンドホームとして、いずれの場所でもすべて同じデザインの建築物となっている。
左からSANU 2nd Home八ヶ岳1st内のワークスペースと大きな窓からの景色。眼前には緑の木々が立ち並ぶ。キャビン内には自然と調和した曲線が多く使われている。
提供:Sanu
キャビンの特徴は、Sanuが掲げる「Live with nature(自然と共に生きる)」というコンセプトに沿った、自然環境への負荷を最小化した「サーキュラー建築」という循環型の建築設計。パートナー企業であるADXと連携し、原料調達、建設、運用、解体まで、建築のライフサイクル全体を捉えて取り組む。
原料は、岩手県の釜石地方森林組合から樹齢50〜80年程度の原木を調達。建設は土壌への負荷を軽減し風や水の流れを止めない高床式建築と工場で作ったパーツを現場で組み立てるプリファブリケーション、運用では自然エネルギー100%の電力を使用、解体は釘を使わない工法によりバラせる設計になっている。
また、国産木材を100%使用し、製造過程で多量のCO2排出を伴うコンクリート・鉄の材料使用量を80%削減した。
生活者の日常を、山の中や海の隣で
SANU キャビンの図面やモックアップを用いたキャビンのしくみの紹介。
撮影:小倉宏弥
そんな自然に溶け込んだセカンドホームをどのように利用すればいいのか。Sanuのプロダクト作りを手がける本間貴裕氏は、Business Insider Japanの質問にこう答えた。
「子供がいたらぜひ連れて行って好きなように遊んでほしいです。おすすめは消費者ではなく、生活者になってもらうこと。僕自身10年ホテルやホステルを作ってきて、旅行というのは“都市で溜めたストレスを財布のお金と一緒に地方で使って帰ってくる”と感じることがありました。
でも、生活者として繰り返し自然の中に通えば海や山をきれいしたいと思うようになりますよね。ですから、何か特別なことをやるのではなく、いつもやっている掃除や洗濯、ご飯を作って食べるという行為を山の中や海の隣でやってほしい。
その積み重ねが自分たちの感性となり返ってくるし、10年後20年後に子供たちの感性として芽吹いてくるんじゃないかと思います」
自然と共に生きる。人間の本能に訴えるSanuの試みは、確かな手応えとともにスタートを切った。
Sanuチームの集合写真。コロナ禍で、全員が一堂に会したのは今回のオープニングレセプションが初めてだったという。
提供:Sanu
(文・小倉宏弥)