ナーダムの共同創業者、マット・スキャンラン(左)とディーデリック・ライセマス。
Naadam
2013年に大学の友人同士だったマット・スキャンラン(Matt Scanlan)とディーデリック・ライセマス(Diederik Rijsemus)はモンゴルを旅行した際、ゴビ砂漠の人里離れた地方に数週間かけて移動する地元の羊の放牧民とたまたま一緒になった。放牧民たちとの時間は想定外のことだったが、それがやがてサステナブルな事業の発想につながった。
「環境は違っても、裕福でも貧しくても、どんな仕事をしていても、人間はみな平等なんだということに気づかされたのです。自分たちは同じ人間なんだと気づかせてくれる共通点をちゃんと見れば、壁はなくなり、もっと公平な関係を築くことができます。そんなふうに事業ができたらいいですよね」とスキャンランは言う。
スキャンランとライセマスは、ゴビ砂漠の放牧民と直接取引して商品を調達・製造するカシミア衣服の事業、ナーダム(Naadam)を創業した。仲介業者をなくすことで、放牧民への支払い額を増やし、価格も抑えることができる。
ナーダムは、ゴビ砂漠の羊のための獣医医療を提供したり、砂漠化防止に取り組むためのゴビ・リバイバル・ファンド(Gobi Revival Fund)を立ち上げているほか、浄水施設や家畜用保険の提供、地元のコミュニティのための公園も設置した。
ナーダムのように、持続可能性を中核ミッションに据える企業は他にもある。使い捨てプラスチックを使用しない、過剰包装をなくす、再生可能な素材を使うなど、自社の活動で環境に配慮している起業家たちもいる。
炭素排出量全体の35%以上はたった20社の大企業によるものであるにもかかわらず、サステナビリティへの取り組みは個人や零細企業にも求められている。
そこでInsiderは、環境に配慮した製品の開発に取り組む企業の創業者たちから、自分の会社をよりサステナブルにするためのヒントを聞いた。
プラスチックを使わないカミソリ、海から着想を得たスキンケア商品、環境に有害な成分を使わない衛生用品、生分解できるスマホケースなど、サステナビリティに向けた彼らの取り組みを見てみよう。
1. ナーダム(Naadam)
ナーダムのカシミアセーター。
Naadam
2013年にスキャンランとライセマスが創業。
商品:カシミアの衣類と小物
価格帯:セーターは75〜275ドル(約8600〜3万1600円)。
サステナビリティのための取り組み:
- 上述したポリシー以外にも、ナーダムは社会面・環境面での影響に関するレポートを出しており、目標達成への進捗度合を評価している。このレポートには人事、炭素排出フットプリント、材料輸送、材料の調達の方針についても記載されている。
よりエコになりたい企業へのアドバイス:
- 環境に優しい代替素材を探すべきだとスキャンランは言う。多くの人は環境に優しい材料は高いと考えているが、比較的低価格な新素材も開発されている。また、リサイクル素材の方が再利用ということで安くなることが多い。
スキャンランは言う。「ナーダムは人と人との関係、人への思いやりが基盤になっている会社です。今まで成功してきたのはそれが理由です。人にどう接するかが重要なのです」
2. リーフ・シェイブ(Leaf Shave)
リーフ・シェイブのプラスチックを使わないカミソリ。
Leaf Shave
2016年にアダム・シモーネ(Adam Simone)とアダム・ハーン(Adam Hahn)が創業。
商品:プラスチックを使わないカミソリ
価格帯:ベーシックなカミソリは60ドル(約6900円)。シェービングセットは175ドル(約2万円)にも。
サステナビリティへの取り組み:
- リーフ・シェイブのカミソリはプラスチックを使わず、亜鉛のハンドルや鉄の刃など、再利用・リサイクル可能な素材でできている。
- 廃棄物を減らすため、ハンドルは永久保証。修理も無償でしてくれる。
- 下取り制度があり、リーフにカミソリの刃を返却すると、信頼の置けるリサイクル施設にて再利用される。
よりエコになりたい企業へのアドバイス:
- 倉庫やオフィスの電気を環境に優しい電源に切り替えるなど、まず簡単にできることから取り組むことをシモーネは勧める。
「私たちももともとサステナビリティを主眼に置いた事業ではなかったんです。いいカミソリをつくろうと考えたら、結果的に地球に優しい製品にたどり着いたんです」
3. オセア(Osea)
オセアのボディブラシとボディオイル。
OSEA
ジェニファー・パーマー(Jenefer Palmer)が1996年に創業。その後、娘のメリッサ(Melissa)が2015年にCEOに就任。
商品:自然派のスキンケア用品
価格帯:12ドル(約1380円)の旅行用サイズのボディオイルから、90ドル(約1万350円)のヒアルロン酸美容液まで。
サステナビリティへの取り組み:
- すべての商品で自然由来の素材(特に海藻)を使用。
- ガラスはじめリサイクル素材を使った環境に優しいパッケージ。
- クイズ形式のオンライン診断を活用して顧客に合ったスキンケア用品を提案。顧客が気に入り、かつ必要としている商品を販売することで商品の廃棄を削減する。
よりエコになりたい企業へのアドバイス:
- 自社のサプライチェーンをよく理解すること。サステナビリティに関する考え方が合うサプライヤーを見つけ、太陽光発電に切り替えたり、オフィスからペットボトルをなくしたりするアクションを積極的に行うこと。
- サステナブルな行動をしている企業向けの税額控除を活用するなど、サステナビリティを実現しやすくする方法も検討を、とメリッサCEOは提案する。
「当社は次世代のための環境保護活動に取り組むNPOを支援していますが、こうした寄付活動も含め、あらゆる面で環境への影響を最小化しようとしています」
4. ブルーランド(Blueland)
タブレットや再利用可能なボトルの入ったブルーランドのキット。
Blueland
2018年にサラ・パイジ・ユー(Sarah Paiji Yoo)とジョン・マスカリ(John Mascari)が創業。
商品:使い捨てプラスチックを減らす、ガラス瓶を採用した衛生用品
価格帯:6ドル(約690円)の詰め替え用ハンドソープから74ドル(約8500円)のクリーニングキットまで。
サステナビリティへの取り組み:
- 人間と地球に良い影響を与える商品づくりを目指す機関、クレイドル・トゥ・クレイドル(Cradle to Cradle)と提携し、環境に害を与えない洗剤の製法を開発。
- パッケージング、商品、製法など、サプライチェーン全てで使い捨てプラスチックを使用しない。
よりエコになりたい企業へのアドバイス:
- サステナビリティに関する個人レベル・企業レベルの取り組みを社員に対して可視化すること。それがやがて、大きな意思決定や会社の方向性の基盤となるからだ。
「最近は環境に対するお客様の意識がどんどん高まり、その価値観に見合う企業の商品を選ぶようになっています。ですからお客様に対して、これは倫理的な事業を行うために必要なコストであり、こういう理由からこの商品がこの価格になるんだと背景を説明しましょう」
5. ペラ(Pela)
生分解可能なスマホケース。
Pela
ジェレミー・ラング(Jeremy Lang)が2007年に創業。
商品:土に還るスマホのケースやアクセサリー
価格帯:50〜55ドル(約5800~6300円)。
サステナビリティへの取り組み:
- 生分解されるスマホケースを開発した初の企業。植物由来のエラストマー(弾性のある多孔質プラスチック)でできており、廃棄物を減らすことができる。
- アクセサリ以外にも、キッチンテーブルに載るサイズの生ごみ処理機、Lomi(ロミ)も販売。
よりエコになりたい企業へのアドバイス:
- パートナーやサプライヤーはBコーポレーション認証を受けた企業の中から探すこと、とマット・ベルトゥッリ(Matt Bertulli)CEOは勧める。こうした企業は持続可能性の重要性をよく理解しているからだ。
「必要とされる気候変動対策としては、個人でできる活動では不十分です。企業なら模範を見せるのに使える大規模なプラットフォームがいくつかある。地味な活動ではありますが、企業は持続可能性について絶えず話題にし続けるべきです」
(翻訳・田原真梨子、編集・常盤亜由子)
[原文:The 5 simple ways entrepreneurs can make their businesses more sustainable]