11月8日週は外食大手の決算発表が続いた。緊急事態宣言の解除直前の9月末までの決算のため、解除後の客足や売り上げがどこまで回復するのかはまだ見えない。
外食大手のコロナからの復活……そのシナリオを見るうえで、レストラン業態を主力事業とするすかいらーくホールディングス(以下すかいらーくHD)と、ロイヤルホストなどを展開するロイヤルホールディングス(ロイヤルHD)の決算は、レストラン業態のアフターコロナへの布石という点で、対応にコントラストを感じさせる。
「深夜客はこのまま戻らない」シナリオ
撮影:横山耕太郎
外食産業が大きなコロナ影響を受ける中で、レストラン業態が厳しかったのは、「スグ食べ」「ヒトリ食べ」に適さない業態だったからだ。
緊急事態宣言が解除された10月以降、各社とも客足は急回復しているが、これで元通りというほど安易に考えているわけはない。むしろ、すかいらーくHDではコロナ後も「深夜客が十分に戻らない」可能性を視野に、巻き返しプランをつくりはじめている。
出典:すかいらーくホールディングス
すかいらーくHDの第3四半期の業績は、累計売上高1896億円(前年同期比-11.2%減)、営業利益74億円(うち、時短協力金233億円)。
すかいらーくHDの谷真会長兼社長は質疑の中で、この2年の日常生活の変化によって「コロナ禍のお客のライフスタイルは確実に変化している」とし、「現実的にはコロナ前の状況に戻るには相当な時間がかかる」「(深夜帯などはコロナ前に)戻りきらない時間帯がありえる」(同)と、全時間帯での売り上げ回復が、長期戦になるとの覚悟を示した。
すかいらーくHDの谷真会長兼社長
出典:すかいらーくホールディングス
特に深夜帯の営業については、来期の上期の状況を見ながら、地方や郊外店などの営業時間を短縮する可能性は「十分にある」(同)と認める(現在は一律23時半までの営業時間)。
緊急事態宣言下で収益の下支えとなったデリバリーについても、今後は競争の激化を見込む。「競争は大変激しくなっている。UberやDiDiやドアダッシュさんも含めて、大きな商店街を形成されている中で、(今後の)デリバリーの獲得競争は大変厳しいことになっていくと思っている」(すかいらーくHD 谷真会長)と、あくまで過度の期待は示さない。
すかいらーくは「ビジネスモデルの効率化」に活路、ロイヤルHDは一歩踏み込まず
人件費に関して、ファストフードとレストラン業態が決定的に異なるのは、接客が伴うために「客数増と人件費がパラレルでついてくる業態」(すかいらーくHD 谷真会長)であることだ。基本的に、店舗の客数が増えれば、そのぶんスタッフを増員しなければならない。
しかし、ビジネスの回復が長期戦になるなかでは、人手不足への対処も含めて、抜本的な効率改善が求められている。
すかいらーくが10月に発表した、“今後半年以内(2022年4月まで)に全国1000店のガスト、しゃぶ葉などへの配膳ロボットを導入する”という背景には、こうした危機感がある。
すかいらーくHDは10月に、2022年4月までに1000店に配膳ロボットを導入することを発表。既に実験導入している店舗での評判は上々という。
出典:すかいらーくホールディングス
今後進めていく効率化の方針について、すかいらーくHDはBusiness Insider Japanの質問に対し、配膳ロボ導入によって、料理運びのオペレーションを簡略化して新人でも対応しやすくするほか、注文端末「デジタルメニューブック」の改善、キャッシュレスレジの導入などによって、効率化を進めると話した。
考え方として、「人件費削減」ではなく、既存のスタッフ数でも、客数をより多く伸ばせる体制をつくる、という方針に舵を切る。
ロイヤルHDの「構造改革」はやや保守的か
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長期戦覚悟で効率化に取り組むすかいらーくHDに対して、ロイヤルホスト等を展開するロイヤルHDの今後の打開策発表は、やや保守的な印象をうける。
ロイヤルホールディングスの第3四半期決算。減収の最終赤字となった。
出典:ロイヤルホールディングス
ロイヤルHDの第3四半期の業績は、累計売上高588億円(前年同期比-3.8%減)、営業損失71億円、最終損失44億円の赤字決算(うち、時短協力金22億円)と、厳しい状況にある。
その理由は、レストラン事業以外の事業ポートフォリオが、空港や高速道路などの「コントラクト事業」と「ホテル事業」(リッチモンドホテルなど)と、コロナ影響を外食以上に真正面から受けた領域であることが大きい。
実際、事業領域ごとの内訳をみると、ロイヤルホストを主力とする外食事業こそ経常黒字だが、それ以外は経常赤字が続いている。
事業領域別の損益の状況。直近でも経常黒字になっているのは、外食事業のみだ。
出典:ロイヤルホールディングス
決算にあたり、「構造改革の推進」として打開案を打ち出すが、進行中の外食事業の改革案には「テイクアウト・デリバリーの販売強化」など2021年初頭に外食各社が言及した路線にとどまる。
ロイヤルHDが進行中の構造改革。経営効率化に関しては、経費削減や早期希望退職といった削減案が並ぶ。
出典:ロイヤルホールディングス
緊急事態宣言解除後の10月、ロイヤルホストは2019年比で95%まで売り上げが回復、ファストフード業態にあたる「てんや」も同101.3%となるなど、回復基調であることは事実だ。とはいえ、コロナ影響の先行きはまだ見えない。
ロイヤルHDは、構造改革案の1つ「成長分野の育成」としてコロナ影響をうけにくいファストフード業態として、新たに「Lucky Rocky Chicken」を2021年から展開。首都圏を中心に3店舗オープンさせた。しかし、決算にポジティブな影響を与えるにはまだ時間がしばらくかかるだろう。
抜本的な効率化に取り組むすかいらーくHD、保守的な「改革」で乗り切るロイヤルHD。先行きの見えない2022年に、より早く回復に向かうのはどちらだろうか。
(文・伊藤有)