ホワイトハウスで11月6日、超党派のインフラ法案について述べ、記者団に質問を求めるジョー・バイデン大統領。 アメリカの民主党は、社会支出計画に富裕層への大規模な減税を盛り込もうとしている。
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- ジョー・バイデン大統領の1兆ドル規模のインフラ投資法と関連する法案によって、富裕層は中間層よりも大きな利益を得るかもしれない。
- これらの施策は、中所得者層に比べて高所得者層に税制面で利益をもたらす可能性がある。
- 民主党は、トランプ前大統領が導入した「SALTキャップ」と呼ばれる控除制限は、民主党優位の州の有権者に対する懲罰的なものだと主張している。
裕福なアメリカ人は、ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領の1兆ドル規模のインフラ投資法と関連する法案で、中流階級よりもはるかに多くの利益を得る可能性がある。
民主党はインフラ投資法に関連する、現在審議中の「Build Back Better Act(よりよく再建法案)」と呼ばれる社会福祉法案で、「SALTキャップ」と呼ばれる、連邦税の課税対象所得から州・地方税として支払った額を控除できる額の上限を現行の1万ドル(約110万円)から8万ドル(約900万円)に引き上げようとしており、ドナルド・トランプ前大統領が行った代表的な税制の一部が廃止されることになる。
超党派の「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」が発表した分析レポートによると、この措置だけでも富裕層にとっては大幅な減税となる。年収5万ドル(約570万円)の中所得者層にとって最大の税制優遇措置は、増額された給付付き児童税額控除だが、その10倍に相当する減税効果が富裕層にもたらされることになるのだ。
つまり、中所得者層は、増額された給付付き児童税額控除によって年間2600ドル(約30万円)の連邦政府支援金を受けることが見込まれる一方、年収100万ドル以上の富裕層は、SALTキャップの引き上げ(緩和)により、年間2万5900ドル(約300万円)もの減税効果が見込まれるのだ。
下図は、民主党がSALTキャップの緩和を承認した場合、その恩恵が高所得者に偏ることを示している(CRFB作成)。
Committee for a Responsible Federal Budget
CRFBのシニア・ポリシー・ディレクターであるマーク・ゴールドウェイン(Marc Goldwein)は、この措置が「Build Back Better Act」含まれていることに「当惑している」という。
「SALTキャップの廃止は、『Build Back Better』法案の個別項目の中で1番目か2番目に大きなものだ」と彼はインタビューで語っている。
「そして、それは完全に富裕層のためのものだ。その恩恵の98%は、数十万、数百万ドルの年収を得ている人たちに届く」
下院が提出したSALTキャップ廃止案は、上院で修正される可能性がある。バーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員とボブ・メネンデス(Bob Menendez)上院議員は、年収40万ドル(約4600万円)から100万ドル(約1億1400万円)の世帯を減税対象から除くという代替案で折衝中だ。
民主党は長い間、SALTキャップはニューヨークやカリフォルニアなど、民主党支持者の多い州の富裕層を対象とした懲罰的な措置であると考えてきた。上院財務委員会の委員長であるロン・ワイデン(Ron Wyden)上院議員は「これは『青い州(民主党優位の州)』の有権者を罰するためのものだ」と、Insiderに述べている。
それでも、この動きによってすでに民主党は共和党からの攻撃にさらされている。
下院歳入委員会の共和党幹部であるケビン・ブレイディ(Kevin Brady)議員は、11月4日のFoxニュースのインタビューで「なぜ民主党が、富裕層に莫大な減税をもたらすことに固執するのか理解できない」と述べている。
「SALTキャップを撤廃すれば、富裕層全体で年間に1000億ドルもの恩恵を受けることになる」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)