「メタ(Meta)」に社名変更するなど大規模な新戦略を打ち出すのと前後して、フェイスブックからの人材流出が深刻化している模様だ。
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フェイスブック(Facebook)社内でますます重要性の高まる人工知能(AI)プロダクト部門から、またひとり優秀な人材が去ろうとしている。
プロダクト部門で長年リーダーを務めてきたラガヴァン・スリニヴァサンが2021年12月で退社する。Insiderの取材で明らかになった。
スリニヴァサンは2012年にフェイスブックに加わり、AIがまだ社内の小さな研究部門にすぎなかった時代からAIツール開発に携わってきた。
2016年からは機械学習ツールおよび同技術のプロダクトマネジメントリーダーとして、さらに直近では、バイスプレジデント(AI担当)のジェローム・ペセンティの直下、全社横断の研究組織「Facebook AI」のプロダクト責任者を務めた。
スリニヴァサンの退社は、最近社名を「メタ(Meta)」に変更したばかりのフェイスブックを去る幹部の最新例だ。
テック業界を専門とするリクルーターからの情報によれば、かつては最も働きたい職場のひとつとされていたフェイスブックからは、さらに多くの人材が去ろうとしているという。
エグゼクティブ人材専門のサーチ・ヘッドハンティング会社スタントンチェイス(Stanton Chase)のグレッグ・セルカーは「一定規模の集団流出とも言える状況がみてとれる」と指摘する。
メタ(先述のように社名変更したフェイスブックの親会社)の広報担当者は、スリニヴァサンが退社する事実について認めたものの、それ以上のコメントは回避している。また、スリニヴァサン本人からはコメントを得られなかった。
匿名を条件に取材に応じた従業員からの情報によれば、スリニヴァサンは11月第2週、12月に退職することを社内掲示板に投稿していた。
同従業員によると、スリニヴァサンは人望が厚く、同僚からの敬意を集め、開発中のプロダクトやワークフローへのAI導入を模索する他部門の従業員の相談に乗ってくれる指南役としても知られる存在だという。
スリニヴァサンは社内掲示板の投稿で、フェイスブック退社後にどうするのかについては言及していない。また、スリニヴァサンの後任も発表されていない。
人材流出のみならず、人材確保に苦しむ
フェイスブックは近ごろ人材確保面で苦しい状況に陥っている。
同社を内部告発して米上院公聴会で証言したフランシス・ホーゲンによる開示資料によれば、2021年第1四半期(1〜3月)の求人応募者数は前年比マイナス15%の減少を記録している(同資料の内容は米メディアのプロトコルが最初に報道)。
フェイスブック最高経営責任者(CEO)のマーク・ザッカーバーグは10月、インスタグラム(Instagram)やワッツアップ(WhatsApp)、オキュラス(Oculus)などを傘下に置く親会社を「メタ(Meta)」に社名変更するなど体制再編を発表。
フェイスブック・リアリティラボ(Facebook Reality Labs)に100億ドル(約1兆1000億円)を投資し、欧州で1万人の従業員を追加雇用するなど、仮想現実(VR)とメタバース(Metaverse)分野への大規模投資を進めていくという。
[原文:A longtime Facebook AI leader is leaving the company amid an 'exodus' of talent]
(翻訳・編集:川村力)