BALMUDA Phoneを発表するバルミューダ創業者の寺尾玄氏。
撮影:小林優多郎
バルミューダは11月16日、同社初となるスマートフォン「BALMUDA Phone」を披露した。直販サイトでは10万4800円(税込)。11月26日から発売する。
BALMUDA Phoneはディスプレイサイズが4.9インチと、最近のスマホとしては小さいボディーが特徴。製造は京セラが担当し、通信キャリアはソフトバンクのみが取り扱う。
発表会の中で「企画とアイデア出しとデザインは私がやっている」と語るなど、バルミューダ創業者・寺尾玄氏のこだわりが大いに反映されたモデルとなっている。
まずは、シンプルにスマートフォンとして、その特徴を見ていこう。
小型化かつ軽量、ホールド感はバツグン
片手で難なく操作できるBALMUDA Phone。
撮影:小林優多郎
BALMUDA Phoneの真骨頂は、その小ささと軽さ、質感にある。
幅69mm、高さ123mm、重さ約138gだ。このサイズ感の比較対象としては、同じく5G対応のiPhone 13 miniがわかりやすい。同機種は幅64.2mm、高さ131.5mm、重さ140gとなっており、BALMUDA Phoneは「幅はややあるが、高さは抑えめで軽い」と言える。
左2つがBALMUDA Phone。右がiPhone 12 Pro。
撮影:小林優多郎
ディスプレイは4.9インチフルHD(1080×1920ドット)解像度。やや分かりにくいが「背面から正面、ディスプレイまで直線がない」デザインを採用しており、確かにディスプレイもかなり丸っこく、一般的なスマホとの印象の違いはある。
画面の内側右上にある黒い穴は、約800万画素の正面カメラとなっている。Wi-Fiやモバイルネットワークの電波強度を示すアイコンはこのカメラを避ける形で表示される。
背面も中央部がふっくらとした丸みを帯びたデザインになっている。
撮影:小林優多郎
実機を持ってみると、イメージしていたより軽く質感のいいスマホであることがわかる。背面もなだらかにカーブを描いており、さらに少しざらつきのある感触に加工されている。
この形状と加工がサイズと相まって、独特のホールド感、持ちやすさを生み出している。感覚としては5、6年前に出ていたスマホのホールド感に近い。
なお、背面には2つ大きな穴が空いているが、向かって右側が4800万画素の背面カメラ。左側が電源キー兼指紋センサーとなっている。
「道具」を意識した独自のアプリ群
BALMUDA Phoneのプリインストールアプリ。
撮影:小林優多郎
BALMUDA Phoneへの寺尾氏のこだわりは、アプリにも反映されている。
OSとしてAndroid 11を採用しているため、Google検索やGmailなど基本的なアプリはその他のスマホと変わらないが、いわゆるツール系アプリは独自に開発したものを搭載する。
主には
- スケジューラー(カレンダー)
- メモ
- ウォッチ(時計)
- 計算機(電卓)
- カメラ
- ホーム画面
がある。
ピンチイン・アウトの操作で、表示する情報密度を自在に変えられるスケジューラー。
撮影:小林優多郎
例えば、スケジューラーは縦軸は日付、横軸は時間となっており、ピンチイン(縮小)・ピンチアウト(拡大)操作で、スムーズに画面の情報密度を変えられる。
ドラッグ&ドロップ操作にも対応しており、選択した予定を別の日の別の時間に移すことも簡単だ。
「億万表示」や為替モードに対応する計算機。
撮影:小林優多郎
他にも計算機は、一般的なアプリは3桁ごとに「,」(カンマ)が打たれているところ、日本人でも直感的に分かりやすい4桁ごとに万や億と入る「億万表示」に対応。
為替モードも搭載しており、日本円、アメリカドル、ユーロ、中国元で変換できる。
デザインを細かく設定できるホームアプリ。
撮影:小林優多郎
また、ホーム画面に関してもこれらの独自アプリをウィジェットのように表示できる「Tools」機能や、ホーム画面に表示する縦縞の色を細かく変えたり、ホーム画面に好きな英数字を自由に入れられるカスタマイズ機能を搭載。
これをバルミューダは「My Phone」と呼んでおり、「使う人の個性を表現できるように設計」したとしている。
バルミューダが超えるべき「10万円スマホ」の壁
ケースや保護シートなども純正を用意する。
撮影:小林優多郎
このように、BALMUDA Phoneはかなり個性のあるスマホだ。
非スマホメーカーの製品というと、OSアップデートなどのサポートも気になるところだが、バルミューダの製品担当者は「Android 12(現行最新版)へのアップデートは予定。セキュリティーアップデートは発売から最低2年間は実施」と、他のAndroidスマホと比べても大きな遜色はないように思える。
BALMUDA Phoneは、スマホのデファクト・スタンダードでは満足でない人のスマホだという。
撮影:小林優多郎
一方、評価が分かれる点の1つは、10万4800円という価格設定だ。
ソニーのプロ向けスマホやiPhone 13 Pro Maxの大容量モデルは19万円台、サムスンの折りたたみスマホともなれば20万円を超えているが、それぞれの機種にはカメラやディスプレイなどそれなりの理由がある。
バルミューダはこだわりこそあるものの、心臓部となるチップセットはクアルコムが2019年12月に発表の「Snapdragon 765」、バッテリーは2500mAh、防水性能もいわゆる“生活防水”レベルのIPX4と、1年前ぐらいのミドルレンジ機程度の性能だ。
「バルミューダ」という比較的高価格帯の家電ブランドを冠しているとはいえ、横並びでみたときに、割高感があるのは否めない。
「バルミューダ」ブランドは決して安いブランドではないが。
撮影:小林優多郎
今や同社の顔とも言っていい「The Toaster」。
撮影:小林優多郎
筆者はバルミューダの“顔”とも言える「BALMUDA The Toaster」を愛用している。直販価格2万5850円と高い家電ではあるが、安価なパンでもおいしく食べられて、非常に満足している。
このトースターが出た時、スチームをトースターに使う点や、そのスチームや温度を制御するために専用のICまで作り込んだ同社の熱量には驚かされた。
ブランドの愛用者としては、今までバルミューダが実現させてきたような常識を覆す“体験”を、BALMUDA Phoneにも求めてしまう。
バルミューダは家電ブランドからのスピンオフ「BALMUDA Technologies」で、今後さまざまなサービスやデバイスの発表を検討しているという。
スマホも含めてそう言った製品・サービス群で、バルミューダが高級家電と同じような地位を確立できるか慎重に見定める必要がある。
(文、撮影・小林優多郎)