妊婦でも食べられる「寿司」。開発した30歳の母に届いた熱烈な共感の声

DSC01801

妊婦でも安心して食べられるという「加熱寿司」。

提供:渡辺愛さん

お医者さんから『おめでとうございます』と妊娠を告げられた直後、『これから10カ月、生ものは食べないでくださいね』と告げられました。

妊娠中は寿司を食べたくても、お腹の赤ちゃんのことを考えるとひとりで我慢するしかなく、街中でもSNSでも寿司屋ばかりが目に入ってくるようになりました 」

2021年5月に第1子となる長男を出産し、現在は育休中の渡辺愛さん(30)はそう話す。

妊娠中の女性は免疫が低下していることから、食中毒への感染リスクが高く、医師から生魚などを食べることを禁止されることが多い。

渡辺さんは大手食品メーカーに勤務。営業やマーケティングを経験していたこともあり、自身の妊娠中、同じように寿司を我慢している妊婦も安心して食べられる寿司を作れないかと思いついたという 。

着想から約1年。渡辺さんは寿司屋と協力し、妊婦が家でも食べられる「加熱寿司」を開発。現在、クラウドファンディングで予約を受けていている。

「0歳児がすぐ横にいる状況での商品開発は、予想以上に大変なことが多すぎて、正直、何度も心が折れそうになりました 」と話す渡辺さん。

そんな渡辺さんを支えたのは、同じような状況に置かれた妊婦たちからの応援だったという。

「禁止されると余計に食べたい」

【妊婦さんもOK!お寿司セット】があったら、買いませんか?食品会社に勤めており、私自身あったら嬉しいを会社に提案したいです。お寿司欲求は妊婦じゃないと分からない!

年の瀬が迫った2020年12月28日、渡辺さんはこんなツイートをした。

渡辺さんは、当時妊娠4カ月。もともと寿司は好きだったが、すっぱいものを食べたくなる味覚の変化に加え、「禁止されると余計に食べたくなる」という心理のせいか、寿司を食べたい思いが「爆発していた」という。

寿司はだめ 、卵かけご飯もだめ、生ハムもだめ。お酒も当然だめですし、とにかく 我慢を強いられることが多い。

納豆巻きやツナマヨ巻きで我慢していたのですが 、『こんなに寿司を食べたいのは私だけなのかな?』と気になって 、加熱した寿司を作れば喜んでもらえるかなと思ってツイートしました」

「絶対買います」共感の声

このツイートへの反応は、渡辺さんの予想をはるかに上回るものだった。

1000以上のリツイートで投稿が拡散され、5000を超える「いいね」がついた。そして、妊婦や妊娠経験のある女性たちから、熱いリプライ(返信)が並んだ。

「妊娠中『お寿司食べたい!』って何回叫んだか」

「妊娠中特有のお寿司欲求!それ!!」

「広がれ!広がれ!妊婦さんでも食べられる寿司セット広がれ!」

「絶対買います」

「お寿司大好きだから約9カ月本当につらかった…。つわり終わったら禁断症状みたいになってた。妊娠中あったらすごくうれしいやつ」

寿司屋ではなく「家で食べたい」

1017_DSC01604(1)

今回開発した「加熱寿司」は、食中毒リスクを減らすため「中心部の温度が75度で1分間以上」を満たすように調理されている。

提供:渡辺愛さん

同じように我慢している妊婦がこんなにも多いのかと。解決する意味のあることだと思いました」

当時、都内に住んでいた渡辺さんは、すぐに友人の行きつけだった寿司店を紹介してもらい、共同で「加熱寿司」のメニューを開発。ほっき貝、煮穴子、太刀魚などのネタをそろえた期間限定のセットを寿司屋の店頭で販売したところ、テレビなどで取り上げられたことで話題になり、3カ月で60件以上の予約が入った。

その後、渡辺さんは2021年3月に地元福岡へ移住し、5月に長男を出産。

東京での「加熱寿司」の取り組みを知った妊婦から、「家でも加熱寿司を食べたい」という声も寄せられ、今度は冷凍して配送できる加熱寿司の開発に着手した。

ネタとなる魚介類はすべて、厚生労働省が食中毒のリスクを下げるための目安として示している「中心部の温度が75度で1分間以上」を満たすよう、温度計で管理しながらしっかりと加熱。安全性を高めるため、産婦人科医の監修も受けた。

Popular

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み