2017年、国際宇宙ステーションに届けられたフランス産マカロンで遊ぶ欧州宇宙機関のトマ・ペスケ宇宙飛行士。
ESA/NASA
- トマ・ペスケ宇宙飛行士は、アメリカ航空宇宙局(NASA)の「スペースX Crew-2」ミッションの一員として、国際宇宙ステーション(ISS)での半年間の滞在を終えたばかりだ。
- ペスケは地球を周回しながら、オーロラ、色とりどりの農地、赤い塩湖、でこぼこの雲など、目を見張るような写真を撮影した。
- また、荒れ狂うハリケーン、山火事の煙、氷河が融けて川に流れ込む様子など、気候変動を示す状況も撮影した。
欧州宇宙機関(ESA)の宇宙飛行士、トマ・ペスケは、ISSでの半年間の活動を終えて地球に戻ってきたばかりだ
2021年10月16日、ISSのキューポラ(観測用モジュール)の中にいるペスケ。
ESA/NASA
ペスケは、「スペースX Crew-2」というミッションで、ISSに向かったクルーの1人だった
すばらしい旅だったが、今は家に帰って愛する人たちと再会する準備ができている。これ以上のクルーはいないし、これ以上の人と一緒に宇宙に行くのは無理だと思う。私は発射台で彼らに伝えたが、6カ月間、年中無休のブリキ缶の中にいても、それは変わりない。
他にはシェーン・キンブロー(Shane Kimbrough)、ミーガン・マッカーサー(Megan McArthur)、星出彰彦が、このミッションに参加した。
地球へ帰還するために宇宙飛行士が乗り込んだスペースXの有人宇宙船「クルードラゴン」は、2021年11月7日にISSから切り離された
ISSにドッキングしているロシアのソユーズ宇宙船とナウカ実験モジュール。2021年9月15日撮影。
ESA/NASA–T. Pesquet
ペスケは、ミッションの最後の1カ月間、ISSの船長を務めた。
そしてその翌日、宇宙船はメキシコ湾に着水した
2021年8月30日、貨物を積んだドラゴン宇宙船がISSに接近する様子。
ESA/NASA–T. Pesquet
スペースXのエンジニアであるケイト・タイス(Kate Tice)がクルードラゴンの地球への帰還を伝えるライブストリーミングで語ったところによると、ペスケは「基本的に、このミッションではプロのカメラマンとして参加した」という
「パラナ川とウルグアイ川に沿った地形に、夕日が美しいパステルカラーを添えていた」という説明とともに、ペスケは写真を公開した。
ESA/NASA–T. Pesquet
ペスケは、地球から約400キロメートル上空を飛ぶISSでの滞在中、24万5000枚以上の写真を撮影した
「イランのカルケ・ダム。この渦巻く青と、乾燥した大地とのコントラストに圧倒された」とペスケは写真に説明を添えた。
ESA/NASA–T. Pesquet
11月15日、NASAが配信したインタビューでペスケは「写真が多すぎると思う」と述べた
イランの塩湖。2021年8月17日撮影。
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ペスケたちの帰還が迫ったころ、大規模な太陽嵐によって引き起こされた、カラフルで極めて活発なオーロラの上を、ISSは飛行した
迫力あるオーロラ。2021年8月17日撮影。
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「我々がリングの中心の真上を飛行した際、速く動く波やパルスがあちこちに見られた」と、ペスケは写真を説明した。ISSよりも上空高くに伸びたオーロラもあったという。
「信じられないようなオーロラを見ることができた。写真ではうまく伝わらないのが残念だ」とペスケはNASAのインタビューで語った
2021年8月20日のオーロラ。
ESA/NASA–T. Pesquet
ペスケは今回のミッションで、15回から20回ほどオーロラを見たという。
オーロラは、ペスケとクルーが地球を周回しながら楽しんだ素晴らしい景色のほんの一例だ
ナミビアの海岸。2021年9月23日撮影。
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ペスケの好きな被写体は、自ら「クロップ・アート」と名付けた農地のカラフルな幾何学模様だ
カナダの農地。2021年6月3日撮影。
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農地は美しい模様を作り出すことがある。宇宙からこの砂漠にある農地の正確な場所を特定するのは難しいが、ペスケによるとアフリカ大陸のどこかだという
砂漠に散らばる青と緑の円形の農地。
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「実用的な目的を持ったものから芸術的なものが生まれるところが好きだ」と説明を添えて、ペスケはこの写真をSNSで公開した
2021年8月17日、メキシコかアメリカ南西部のどこかの農地。
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「丸、四角、(塩の)鉱山、灌漑施設は、近くから美しく見えるように造られているわけではないが、上から巨大なスケールで見ると、圧倒させられる」とペスケは述べた。
このボリビアの農地のように、作物を育みながら美しい模様を描いていても、それは熱帯乾林を伐採した結果、生まれた光景だということもある
「農業のために熱帯乾林が伐採されたボリビアのサン・ペドロ・リモンで見られた放射状の模様」と説明を添えて、ペスケはこの写真をツイッターで公開した。
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だが、天然の景観にもカラフルな模様が見られる
「オーストラリアのもっとクレイジーで美しい景観。フラクタル(部分と全体とが同じ形となる自己相似性を示す模様)、絵の具のような色彩など、さまざまなものが見える!」と説明を添えて、ペスケはこの写真をツイッターで公開した。
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この塩湖のように、オーストラリアでは特にドラマチックな自然の造形が見られる
オーストラリアの塩湖。2021年5月14日撮影。
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ISSは90分で地球を一周しているため、宇宙飛行士は1日に16回の日の出・日の入りを見ることになる。しかし、目にするのは美しい景色ばかりではない
夕陽に染まる海。2021年6月15日撮影。
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ペスケは11月4日、「川の汚染、大気の汚染などを目の当たりにしている」とフランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領に語った
カリフォルニア州のセコイア国立公園付近で、山火事の煙が農地を覆った。2021年8月20日撮影。
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スコットランドで開催された「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)」で世界の指導者たちが集まる中、ペスケはISSからのビデオ通話でマクロン大統領と話した。マクロン大統領は、会議での交渉の目標は、気候危機に対する人類の対応を早めることだと述べたと、AP通信が報じた。
ペスケはマクロンに「今回のミッションで私が衝撃を受けたのは、異常気象や気候現象だった」と語った
ハリケーン・エルサ。2021年7月4日撮影。
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「カナダやカリフォルニアが燃え上がっているのが見えた」とペスケは述べ、「地球の脆弱性は衝撃的だった」と付け加えた
カナダの森林で発生した山火事から立ち上る煙。2021年8月12日撮影。
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「山火事や暴風雨、洪水の発生は、毎年記録を更新していることも分かっている。それがはっきりと見て取れた。4、5年前に参加したミッションのときと比べて、その違いは明らかだ」とペスケはマクロンに語った
アルゼンチンのパタゴニアで、ウプサラ氷河が融けて湖に流れ込む様子。
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ペスケは、自分の生まれ故郷であるフランスのノルマンディー地方などで、心休まる光景も目にした
フランス、ノルマンディー地方。ISSへの到着直後の2021年4月28日にペスケが撮影。
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ペスケは、フランスの景観も数多く撮影した
フランスのモルビアン湾。2021年10月8日撮影。
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「我々は公務に従事しているのだ。人々のためにやるべきことがあり、我々が何をしているのか人々に知らせる責任がある」とペスケはNASAが配信したインタビューで語った
「キエフ上流の川で見られた美しい模様。前回も冬にこの写真を撮ったことを覚えている。そのときの川は凍って真っ白だった」と説明を添えて、ペスケはこの写真を公開した。
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「地球の儚さを見たからこそ、この視点を共有する責任があると思う」とペスケは言う。「宇宙から見ると、地球の資源は非常に限られたものだということが分かる」
地球の大気中を移動する雲。2021年6月11日撮影。
ESA/NASA–T. Pesquet
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)