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ジャスミン・ヒル(Jasmine Hill )は、これまでにテック業界で黒人女性として採用面接を受けた際、「コンピュータを持ち上げられますか?」「汚れたりすることがあっても構わないですか?」といった奇妙な質問を幾度となく受けた。
「こうした質問に大学を出たばかりの20代前半のころは答えていましたが、あまりいい気はしませんでした」とヒルは言う。ヒルは現在、レディアント・スレイト・コンサルティング(Radiant Slate Consulting)という名のコーチング会社を経営している。「今の企業の採用プロセスは、公平性を考慮に入れたものでないことが多いですね」
Insiderの取材に応じた複数のキャリアコーチによると、アメリカの就職活動の現場ではヒルが経験したような話は非常によくあるという。企業がダイバーシティとインクルージョン(多様性と包括性)に真剣に取り組んでいると言っても、偏見をはねのけて自分の資質を明確にアピールするのは、つまるところ候補者自身の責任かもしれない。
そのような面接の現場では、候補者は混乱したり、自己不信、または、自分を過小評価してしまうインポスター症候群に陥ってしまうことも少なくない。候補者は自分一人で入社を希望する会社の組織を変えることはできないが、自信を持って応募や面接のプロセスに臨むための方法はあるとコーチらは言う。
そこで本稿では、真にダイバーシティを実現している企業を入社前に見極めるための5つのステップを紹介しよう。
1. 自分が仕事をする場所に必要なのは何かを考える
社会的マイノリティへの支援に力を入れている団体、コロナ・デイズ・プロフェッショナル・ディベロップメント(Corona Daze Professional Development)の創設者デネット・エドワーズ(Dennett Edwards)によると、自分が仕事に何を求めていて、何を必要としているのかを明確にして交渉の場につくことが重要だという。自分の希望する企業を絞り込むには、応募書類を送る前にまずはそこからスタートしたほうがいい。
自分が能力を一番発揮できるのはリモート環境なのか? 日々の仕事にはどのようなものを望んでいるのか? 少数派としてのアイデンティティを持つ人物として、職場でサポートを得られていると感じるのはどんなときか?
「最初のステップは個人的な作業です。自分はどんな人間か、自分が望んでいるものは何かなど、仕事の種類だけでなく、自分が望む働き方についても考えることが重要です」とエドワーズは言う。
2. 会社で自分と同じアイデンティティを持つ人と話す
エボニー・ジョイス。
Ebony Joyce
その会社が自分に合っていると判断した後は、現在その会社で働いているか、あるいは退職した人で自分と同じアイデンティティを持ち、自分よりも先にその職場で経験を積んできた人から話を聞くのが一番いい、とリーダーシップキャリアコーチのエボニー・ジョイス(Ebony Joyce)は指摘する。
また、従業員が採用候補者と同席につくことを嫌がったり、会社の離職率が高いことが分かったり、会社の中で自分が何らかの 「唯一の」存在になったりした場合は赤信号だ。
3. 仕事への応募を通じて自分の全体像を把握する
教育およびキャリア転換支援サービスのゼネラル・アセンブリー(General Assembly)でパートナーシップマネジャーを務めるルペ・コランジェロ(Lupe Colangelo)は、採用面接は、自分がどんな能力や強み、人生経験を持っているかをアピールするために臨む場だと述べている。
「自分がどんな人間であるかをしっかり把握することが大切です。自分の全体像を描き、かつ自分が誇りに思っている部分はすべてアピール材料に含めます。自分の強みを前面に出しても採用担当者が話を先へと進めてくれない場合は、おそらくその仕事があなたにマッチしていないだけです。ですから偽りでなく本当の自分を見せるべきです」とコランジェロは言う。
4. 面接であえて突っ込んだ質問をする
面接で質問をさせてもらえることになったら、双方向の対話プロセスだと考え、その仕事のチームに加わったらどのような感じになるのかについて情報を得るための絶好の機会だ捉える。
相手から決まりきった答えしか返ってこないような質問ではなく、一歩踏み込んだ質問をすることをジョイスは勧める。彼女はたいてい、会社の経営層と自分が参加することになる部門の構成について質問するという。
ヒルは、会社がどのようにリソースを割り当てているのかを質問するのが好きだという。会社の中にはアイデンティティ別のグループがあるか? キャリアアップの機会はあるか? 予算はあるか? 誰を昇給させるかをどうやって判断するのか?
エドワーズは、仕事の内容はどのようなものか、自分たちのオーディエンスは誰なのか、私たちがサービスを提供するのは誰なのかといったような質問するのが好きだという。こうした角度から見ることで、経営陣が自分たちの使命をどのように考えているのか、そしてその中で候補者にどのような役割を果たして欲しいと考えているのかがよく分かると彼女は指摘する。
5. 直感を信じ、立ち去ることを恐れない
就職活動におけるこれらのステップは、自分に合う企業を探すことが目的であって、時には自分の望むものが企業側に備わっていないということもあるとジョイスは言う。赤信号が灯った場合には警戒すべきだ。
「自分の価値観をしっかり持って行動し、もし何か違うなと感じたらそれはそれで構いません。自分らしくいられると感じられる役割のある職場でこそ、自分の能力をフルに発揮できるのですから」と彼女は語った。
(翻訳:渡邉ユカリ、編集:大門小百合)