「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクの川村憲一社長。
撮影:横山耕太郎
「ふるさと納税」総合サイト・ふるさとチョイスを運営するトラストバンクは、11月24日、新型コロナの影響を受けた地域の事業者や生産者を支援するプロジェクトを発表した。
ふるさと納税を受け付ける際に、寄付金額の0.5%をトラストバンクが積み立て、選ばれた事業者・生産者に支援金を支給する。
「ふるさとチョイス」としては、「ふるさと納税」の申し込みが急激に増える年末に合わせ、「プラットフォームとしての責任」をアピールする狙いもある。
返礼品競争にプラットフォーム競争
「私たちのようなふるさと納税ポータルサイトも、地域の事業者や生産者の努力のおかげで恩恵を受けてきました。彼らがコロナ禍を乗り越えるためのチャレンジを応援することが、ふるさと納税のプラットフォーマーとしての『責任』です」
2021年11月24日の記者会見で、トラストバンク社長の川村憲一氏はそう話した。
「ふるさと納税」を巡っては、自治体やプラットフォームの在り方が問われる状況が続いてきた。
2015年の税制改正以降、より多く寄付を集めようとした自治体が、地域の商品ではない高額な商品や、換金しやすい商品券を返礼品として採用するなど「返礼品競争」が過熱。
こうした事態を受け、総務省は2019年、返礼品を地場産品に限ることや、返礼品の値段を寄付金額の3割程度の価格に抑えるよう規制を強化した。
一方で自治体などから手数料収入を受け取っているプラットフォーム側も、一部サービスでは寄付額に応じてポイントを還元のキャンペーンを展開。利用者の獲得競争も過熱している。
「お礼の品をもらう制度」だけではない
撮影:横山耕太郎
記者会見で川村氏は、現在の「ふるさと納税」の状況について次のように話した。
「『ふるさと納税』は、どうしても『お礼の品をもらう仕組み』という認識が広まっています。ただ本来は、寄付金を地域のために使ってほしいという制度。プラットフォームとしてはそこを伝えていきたい」
また今回のプロジェクトが目指している「地域の事業者を支援」に関しては、「今の状態で十分だとは思っていない」という認識を示した。
「正直、何をやっても十分な状態にはならないと感じています。日本経済をみても、『ふるさと納税』だけで何かができるわけではなく、我々1社だけで解決できるとは思っていません。
我々は『自立した持続可能な地域をつくる』というビジョンを掲げており、そのために挑戦を続けていきたいと思っています」(川村氏)
「寄付金の0.5%」で事業者を支援
地域の事業者を支援するプロジェクト「Power of Choice project」。
「ふるさとチョイス」のHPを編集部キャプチャ
今回ふるさとチョイスが今回打ち出したプロジェクトでは、「コロナ禍で被害を受けた地域事業者の新たなチャレンジ事業」を対象に、2022年1月~2月に支援先となる事業を募集。その後、外部の有識者も交えて採択先を決定し、4月以降に支援金を給付する予定だ。
支援する事業数は今後の応募件数によるというが、「できる多くの事業者を支援できるようする方針」(トラストバンク担当者)としている。
支援金の財源となるのは、2021年11月24日~同12月31日にプロジェクトに賛同(エントリー)した人からふるさとチョイスを通して寄付された金額の0.5%。合計で5000万円を上限としている。
例えば1万円を「ふるさと納税」で寄付した場合には、50円がプロジェクトの資金になる。
5000万円の上限金額を設けた理由について川村氏は、「上限なく(支援を)できたら最高ですが、企業としても持続可能でなければこうした事業もできない」と説明した。
また寄付額の0.5%をプロジェクトの資金にする条件として、「プロジェクトに賛同した人」に限定した理由については、
「『ふるさと納税』はお世話になった地域を応援するという制度。自動的にプロジェクトに参加するのではなく、地域への思いを持って一緒に応援してほしいと思っています」
とした。
(文・横山耕太郎)