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3種類のブラックホールから考える、宇宙に残された「謎」

前回までに書いた記事では、私が携わっていた国際共同研究プロジェクト「イベント・ホライゾン・テレスコープ」(Event Horizon Telescope:EHT)が撮影し、2019年に発表された「ブラックホールシャドウ」の画像から何が分かり、何が分からないのかを説明してきました。

ただ、ブラックホールには、まだまだ多くの謎が残されています。今回は、この宇宙に存在するさまざまなブラックホールについて、残された「謎」を紹介していきたいと思います。

ブラックホールは3種類ある

EHTCollaboration

Event Horizon Telescopeによって捉えられた、巨大楕円銀河「M87」に存在するブラックホールシャドウの画像。

EHT Collaboration

「ブラックホール」と一口にいっても、その大きさは多種多様です。実は、天文学者たちの間では、大きさ(質量)に応じてブラックホールを大きく3つのタイプに分けて考えています。

1つは太陽のような自ら光り輝く天体「恒星」と同じぐらいの重さを持つ「恒星質量ブラックホール」。もう1つが、多くの銀河の中心にあるとされている、恒星の数十万〜数百億倍もの重さを持つ、「超大質量ブラックホール」です。

そして3つ目が、恒星質量と超大質量ブラックホールの間の重さを持つ、「中間質量ブラックホール」です。特に「中間質量ブラックホール」には、いまもなお多くの謎が残されています。

星と同じ程度の重さを持つブラックホール

太陽

太陽系の中で考えると太陽は非常に大きいが、太陽が寿命を迎えてもブラックホールにはならない。

NASA/SDO

恒星質量ブラックホールは、その名の通り恒星から作られるブラックホールです。ただし、恒星であればなんでもブラックホールになってしまうわけではありません。ブラックホールになる恒星は、重さが太陽の約20倍以上のものだとされています。

恒星は全体が高温のガスからなる天体で、その中心では水素を燃やして重たい元素を作る「核融合反応」が起きています。この反応で生じたエネルギーによって恒星は光り輝き、さらに恒星自身の重力に押しつぶされずに形を保つことができています。

ただし、重たい恒星では、核融合反応の最終段階で非常に安定した元素である鉄が作られます。すると、核融合反応が進まなくなり、星が自身の重力によって潰れてしまう「重力崩壊」が起こります。

重力崩壊によって星の外縁部から中心部に向かってガスが落ち込んでいく過程で、星の「中心核」の密度が非常に高くなると、今度はガスが跳ね返されて大爆発を起こしてしまうことがあります。

これがいわゆる、星の最期「超新星爆発」です。

実は、太陽の20倍以上の質量を持つ恒星が超新星爆発を起こすと、恒星質量ブラックホールができるのです。

なお、太陽の20倍以下の質量の恒星が超新星爆発をした場合は、ブラックホールではなく「中性子星」になり、太陽の8倍以下の重さを持つ恒星では、超新星爆発を起こさず、星の燃料となるガスが燃え尽きたあとは「白色矮星」と呼ばれる天体になります。

地球が位置する天の川銀河の中にも、太陽の数倍から10倍程度の重さを持つ恒星質量ブラックホールがいくつも発見されています。その多くは、ブラックホールが別の天体と対になる形(連星)で存在しており、強いX線を放射しています。

LIGO

アメリカの重力波望遠鏡LIGO。LIGOはワシントン州東部のハンフォード近郊とルイジアナ州リビングストン近郊それぞれで重力波を検出している。写真はLIGOハンフォード。

Caltech/MIT/LIGO Lab

近年、世界で初めて重力波を捉えることに成功したアメリカの重力波望遠鏡「LIGO」などによって、太陽の数十倍程度の重さを持つ恒星質量ブラックホール同士の合体が頻繁に起きていることが分かってきました。

恒星質量ブラックホールができるには超新星爆発が必要です。しかし実は超新星爆発のメカニズムはまだ完全に理解されてはいません。超新星爆発でどこまで重たい恒星質量ブラックホールが作られるのか。

この謎を解くことが、恒星質量ブラックホールの重要な研究課題の1つだとされています。

銀河の中心にある巨大なブラックホール

天の川

天の川。太陽系が属する天の川銀河の中心にも、巨大なブラックホールがある。

Kevin Key/Shutterstock.com

恒星程度の質量の恒星質量ブラックホールに対して、「超大質量ブラックホール」は、恒星の数十万〜数百億倍もの重さをもっています。

EHTの観測ターゲットである天の川銀河の中心にある天体「Sgr A*」や、ブラックホールの影の画像を公開した楕円銀河M87の中心など、多くの銀河の中心にこのような大質量のブラックホールが存在していると考えられています。

EHTの観測では、M87のブラックホールシャドウの画像から、その中心に太陽の約60億倍の質量を持つブラックホールが存在することが予測されています。

しかも大きな銀河ほど、その中心にはより重いブラックホールを中心に抱えています。このことから、銀河とその中心にある大質量ブラックホールは、何らかの形で共に進化してきたと考えられています。

では、一体このようなとても大きなブラックホールは、どのようにして作り上げられたのでしょうか?

一般的に、巨大なブラックホールは、「種ブラックホール」と呼ばれる比較的小さなブラックホールの周りにあるガスが中に落ち込んだり、銀河同士が衝突する際にその銀河内に存在するブラックホール同士が合体したりすることで、その質量を増やしていったと考えられています。

クエーサー

宇宙誕生から約7億年後という早期に、太陽の約20億倍の質量の巨大なブラックホールを持っている天体の想像図。

NOIRLab/NSF/AURA/J. da Silva

しかし、最近の観測では、138億年におよぶ宇宙の歴史の中で、宇宙誕生から約7億年後という早期に、すでに太陽の約20億倍の質量を持つ超大質量ブラックホールが存在していることが判明しました。

今まで考えられてきたシナリオでは、宇宙誕生後数億年後に最初に誕生した第一世代の星々(初代星)が超新星爆発をした後にできる恒星質量ブラックホールが、種ブラックホールだと考えられています。

しかし、たとえ初代星が太陽より100倍近く重い星で、わずか1000万年程度で超新星爆発を起こしたとしても、宇宙が誕生してからたった7億年の間に種ブラックホールから太陽の約20億倍の重さを持つ超大質量ブラックホールにまで成長することはできません。

これまでの考え方と観測結果に、大きな矛盾が生じてしまったのです。

宇宙の誕生直後に、これまでの想定より大きな質量の種ブラックホールが誕生するメカニズムがあったのか。それとも、より効率的にブラックホールを大きくする仕組みが存在しているということなのか、大きな疑問が残されているのです。

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