フェイスブックが企業名を「Meta(メタ)」に変更して以来、マイクロソフトやテンセントといった大手IT企業もメタバースに重点を置いている。しかし爆発的に普及しているのは、メタバース関係の暗号資産(仮想通貨)だ。
暗号通貨価格情報提供会社コインゲッコー(CoinGecko)のデータによると、「ザ・サンドボックス(The Sandbox)」のメタバース内トークンSANDや、「ディセントラランド(Decentraland)」のトークンMANAは、どちらも11月上旬には200%を超す急上昇を見せた。
編注:11月1日と12月6日時点で比較すると、SANDは360%に、MANAは137%となっている。
「アクシー・インフィニティ(Axie Infinity: AXS)」「ガラ・ゲームズ(Gala Games: GALA)」「イールド・ガイド・ゲームズ(Yield Guide Games: YGG)」「スター・アトラス(Star Atlas: ATLAS)」などのトークンも上昇中だ。
ファンド・スター・グローバル・アドバイザーズのデジタルアセット戦略担当バイスプレジデント、アーマンド・アギュラー
Fundstrat Global Advisors
ファンド・スター・グローバル・アドバイザーズ(Fundstar Global Advisors)のデジタルアセット戦略担当バイスプレジデント、アーマンド・アギュラー(Armando Aguilar)は、メタバース・ブームを予想していた。
2021年9月の取材時、アギュラーはInsiderに対し、大きく利益を生む可能性のあるアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)を選ぶためのセクター別投資手法を共有している。
その際アギュラーが上昇を予想したメタバース関連アルトコインとレイヤー1プロトコールの2セクターは、最高レベルの上昇を見せている。
アギュラーの眼鏡にかなった4つのアルトコイン
そして今アギュラーが注目しているのは、前述のコインとは別の、まだあまり注目されていないアルトコインだ。価格は上昇中で、グーグル検索やSNS投稿が増えつつある。
その新進気鋭のトークンとは、以下の4つだ。
- カディーナ(kadena: KDA)
- レンダー(render: RNDR)
- ヘリウム(helium: HNT)
- ポルカドット(polkadot: DOT)
それでは、一つひとつ詳細を見ていこう。
カディーナ(Kadena: KDA)
「How Chainweb Works: A Simple Animation」
Kadena 公式YouTubeより
カディーナは、JPモルガン・ブロックチェーン・センター・フォー・エクセレンスから最初にスピンアウトした企業だ。カディーナの共同創業者ウィル・マルティーノ(Will Martino)とスチュアート・ポープジョイ(Stuart Popejoy)が、JPモルガン初のブロックチェーン、JPMコイン(JPM Coin)を開発した。
イーサリアム(Ethereum)と競合する他のトークン同様、カディーナも低い手数料と高い処理能力が特徴だ。カディーナは、1秒間に48万トランザクションを実行する、現時点で最速のプラットフォームだという。
新興のレイヤー1プロトコール・トークンのソラナ(Solana)は1秒間に5万トランザクション。カディーナはその約10倍の処理能力ということになる。
編注:本記事の原文は11月11日に掲載された。11月1日と12月6日時点で比較すると、カディーナの価格は226%上昇している。
レンダー(render: RNDR)
レンダーは、GPU(グラフィックス・プロセシング・ユニット)レンダリング用の分散プロトコールだ。「わずかな費用でインハウス・レンダリング同様のスピード」を実現するGPUレンダリング・サービスをユーザーに提供する。
つまり、より簡単かつ強力で、スケーラビリティ(拡張性)のあるレンダリングだ。レンダー・トークンは11月上旬に60%以上上昇した。
編注:11月1日と12月6日時点で比較すると、510%もの上昇となっている。
ヘリウム(helium: HNT)
「ピープルズ・ネットワーク」と呼ばれるヘリウムも、個人が所有するホットスポット(インターネットにアクセスできる物理的な場所)の分散型ネットワークを利用して、低消費電力のIoT機器をインターネットに接続する。
マイナー(マイニングを行う人)は、ネットワークカバレッジを提供し、ホットスポットにデータを中継することで、ヘリウム・トークンを獲得できる。ヘリウム・トークンは、11月初旬の数日の間に60%以上上昇した。
編注:11月1日と12月6日時点で比較すると、7%の上昇にとどまっている。
ポルカドット(polkadot: DOT)
ポルカドットは、2016年にイーサリアムの共同設立者であるギャビン・ウッド(Gavin Wood)氏によって作られたもので、異なるパブリックおよびプライベートブロックチェーン間の相互通信を可能にすることを目指している。ポルカドットのトークンは、2020年12月〜2021年11月の過去1年間で700%も上昇している。
編注:ただし、11月1日と12月6日時点で比較すると、-62%の下降となっている。
ポルカドット・プロトコールのユニークな特徴のひとつは、パラチェーンだ。パラチェーンとは、スケーラビリティ(拡張性)と相互運用性を実現するために、ポルカドットのネットワーク上で並行して稼働する、さまざまなレイヤー1ブロックチェーンのことだ。
ポルカドットのパラチェーン・オークションとは何か?
ポルカドットのトークンは、11月4日〜11月10日の1週間、48ドル(約5280円)~55ドル(約6050円)のレンジにとどまっているが、ソラナをはじめ他のブロックチェーン・プラットフォームのトークンは放物線を描く動きをしている、とアギュラーは言う。
市場の趨勢、エコシステムの成長、資金の流入を要因として、ソラナは新高値を更新し続けていた。しかし、ポルカドットのパラチェーン・オークションが開始されると、IoB(インターネット・オブ・ブロックチェーンズ)が間もなく脚光を浴びるかもしれない。
編注:ポルカドットのパラチェーン・オークションは11月11日に開始された。
ではパラチェーン・オークションとは何か。
基本的に、ポルカドットのベースチェーンはリレーチェーンと呼ばれており、ポルカドット・ネットワーク上で並行して走る他のレイヤー1ブロックチェーンはパラチェーンと呼ばれている。パラチェーンはリレーチェーンにつながっている。アギュラーは次のように説明する。
「あなたがクールな人と友達になったとしましょう。クールな友達ができたことで、クールなレストラン、クールなホテル、クールなクラブを利用できるようになります。
ある意味、パラチェーンも同じです。ポルカドットを通じてパラチェーンのエコシステム全体につながり、イーサリアムやビットコインにアクセスできるようになるのです」
パラチェーン・オークションは、どのプロジェクトがエコシステムに組み込まれるかを決めるために利用される。オークションで勝つためには、プロジェクトが十分なポルカドット・トークンを確保する必要がある。
そのため、パラチェーンはクラウドローン・システムを通して資金を調達する。クラウドローン・システムでは、ポルカドット・トークン保有者が自分のトークンを任意のプロジェクトに一定期間貸与し、報酬として当該プロジェクトのネイティブトークンを受け取るという仕組みだ。
dotmarketcap.com
11月10日時点では、クラウドローン・システムを通し、投資家が12億ドル(約1440億円)以上相当のポルカドット・トークンを貸与した。
ポルカドット・トークンの見通し
ポルカドットはパラチェーンに組み込まれる新プロジェクトの恩恵を受けるだろう、とアギュラーは言い、次のように解説した。
「パラチェーン・オークションが開始されれば、投資家からの需要によってポルカドットの価格は上昇するかもしれません。クラウドローン・システムを機能させ、ポルカドットのパラチェーンを利用する新たなプロジェクトを投資家が支援するためです」
またアギュラーは、ポルカドットにまだ伸びる余地があるかどうかを判断するために、アバランチ(AVAX)、テラ(LUNA)、ソラナなど、他のレイヤー1プロトコールの価格推移を分析し、次のように述べている。これらのトークンは、11月4日〜11月10日の1週間で26~46%上昇した。
「これらのレイヤー1プロトコールの週間上昇率に基づく平均32%の上昇と、過去1週間におけるポルカドットの値動きの幅を前提に考えると、ポルカドットの価格のモメンタムが形成されつつあるといえます」
(翻訳・住本時久、編集・野田翔)