「メタバースのほうが便利」。そんな時代が来るかどうかは“ある技術”にかかっている【音声付・入山章栄】

今週も、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が経営理論を思考の軸にしてイシューを語ります。参考にするのは先生の著書『世界標準の経営理論』。ただし、本連載はこの本がなくても平易に読み通せます。

フェイスブックはなぜ、社名をメタ(Meta)に変更してメタバースという新しいバーチャル空間に乗り出したのでしょうか。その背景には、資本主義の構造が大きく関係していると入山先生は言います。文化人類学者の大川内直子さんの『アイデア資本主義』の考え方も交えながら入山先生が解説します。

【音声版の試聴はこちら】(再生時間:14分02秒)※クリックすると音声が流れます


GAFAMの中で、フェイスブックだけが変化してこなかった

こんにちは、入山章栄です。

今回からこの連載の主な司会進行を、BIJ編集部の小倉宏弥さんが務めてくれることになりました。収録の模様を音声で公開していますので、よろしければそちらもお楽しみください。


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BIJ編集部・小倉

入山先生、改めましてよろしくお願いいたします。

さて、先日フェイスブックが社名を「メタ」に変更しました。これからネット上の仮想空間であるメタバース事業に本格的に取り組むのだそうですが、果たしてメタバースは今後の本命のテクノロジーになっていくでしょうか。


なるほど……結論から言うと、僕はメタバースの可能性にかなり期待しています

いわゆるGAFAにマイクロソフトを加えたGAFAMなどIT企業の大手は、常に新しい事業への進出を検討しています。なぜならこの業界は変化が激しいため、いつまでも同じ事業を続けるのが難しい。だからいつも次の主力事業を模索している。

どんどん新しい事業を始めてはそれを成功させているのが、GAFAMの中ではアマゾンやマイクロソフトなどでしょう。

アマゾンはもともとECの会社でしたが、いまの稼ぎ頭はAWSというクラウドサービスです。

マイクロソフトも、もともとはウインドウズ95などパソコンのOSをつくっていましたが、それももはや飽和状態になり、いまはクラウドサービスのAzure(アジュール)へと主力事業を変更しました。これがうまくいっているので時価総額も上がっている。

そんな中、フェイスブックだけはなかなか大きな変化をとらえて対応することができていませんでした。同社がいままでしてきたことといえば、メッセンジャーアプリ「WhatsApp」の買収や、写真投稿SNS「Instagram」の買収です。

もちろんいままでの成功も素晴らしいですが、これらはすべてSNSです。つまりフェイスブックはずっとSNSのテリトリーから出なかった

しかしもはやSNSも飽和してきています。だからフェイスブックの時価総額は世界ランキングでは7位と、やや停滞気味なんですね。なおかつ最近は「(フェイスブックは)自社の利益を優先している」という元社員による内部告発もあり、社内もゴタゴタしているようです。

フロンティアを開拓すると資本主義が発展する

しかしついにフェイスブックも、メタバースというまったく新しい世界への進出を決断しました。このニュースについて考えるとき面白いヒントとなるのが、先日、僕が日本経済新聞の書評で取り上げた大川内直子さんの『アイデア資本主義』という本です。いま僕の周りでも、かなり注目されている本ですね。

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