Noam Galai/Getty Images
- 「ブラケティング」とは、オンラインショッピングで同じ商品をサイズ違いや色違いで複数購入することだ。
- ブラケティングは、eコマースの普及に伴い増加しており、ある調査では買い物客の58%がブラケティングの経験があるとしている。
- これは、物流面や経済面で小売業者の悩みとなるだけでなく、環境面にも悪影響を及ぼしている。
例えばオンラインでブーツを購入するとしよう。
自分に必要なサイズはわかっているが、ハーフサイズ上の方がいいかもしれない。また、ある色に魅かれているが、別の色も気になっている。結局、少なくとも2足を返品することを前提に、2色のブーツを2サイズ、つまり4足購入した。
今、多くの人はこのような方法でオンラインショッピングをしている。無害に思えるかもしれないが、小売業者にとっては、金銭的なことも含めて、大きな悩みの種となっている。ホリデーシーズンの買い物が本格的になってきている今、小売業者は今やeコマースの常套手段となっている「ブラケティング(bracketing)」に備えている。
「ブラケティング」とは?
Insiderが報じたように、「ブラケティング」とは、顧客がある商品を複数のサイズ、色で購入して、最も気に入ったものだけを選び、残りの品を小売店に送り返すことを意味する。これは、客が特別な日や休暇のために商品を購入し、使用後に返品する「ワードロービング(wardrobing)」と呼ばれるもうひとつの買い物習慣に似ている。
特に小売店が送料無料や返品無料などのサービスを提供している場合は、ユーザーはリスクが低いと判断し、ブラケティングを行うことがある。
「ブラケティング」はいつから行われているのか?
ブラケティングは何も新しいことではない。顧客体験プラットフォームのNarvarがアメリカの買い物客677人を対象に行った2017年の調査で、回答者の40%が「たまにブラケティングしている」と回答している。リテール・ダイブ(Retail Dive)のレポートによると、アパレルは他のどのカテゴリーよりも返品される可能性が高いという。
しかし、特にパンデミックによるeコマースブームの後はその割合が増えている。2021年11月のNarvarの調査では、回答者の58%がオンラインでの購入でブラケットをしていると答えた。
小売店にとって「ブラケティング」が意味することは?
ブラケティングの割合が高いということは、返品の割合が高いということだ。全米小売業協会(National Retail Federation)のデータによると、2020年だけでも、買い物客がオンラインで購入した商品を送り返したものは約1000億ドル(約11兆1000万円)分に上るという。
客にとって送料や返品が無料であっても、小売店にとっては無料ではない。それは次のようなプロセスを踏むことになる。企業は、UPSやアメリカ郵便公社(US Postal Service)などの輸送業者を通じて客から商品を回収し、正しいか商品かどうか、使用済みかどうかを選別し、再販できるかどうかを判断しなければならない。企業はその過程で、注文を受け、包装する労働力、その商品を客の家まで輸送するための運賃などのコストを失っている。
ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)が報じたところによると、このプロセスには運賃を除いて、1回の返品につき10ドル(約1130円)から20ドル(約2270円)がかかるという。
ただすべての小売業者が返品をネガティブに捉えているわけではない。全米小売業協会の研究開発・産業分析担当バイスプレジデント、マーク・マシューズ(Mark Mathews)は、返品プロセスを「顧客との関係を深める機会」と捉える企業もあるとしている。
「ブラケティングは、消費者の体験を向上させるため小売店に新たな接点を提供しているとも言える」
「ブラケティング」が与える環境への影響は?
配送という点では、明らかな環境コストがかかっている。実際、2019年にeコマースの返品によって発生した二酸化炭素は、300万台の自動車が走行するのに相当すると、返品や売れ残った商品を管理して再販する企業、オプトロ(Optoro)のデータを引用してCBSが報じている。
しかし、商品自体が環境問題になることもあるとBBCが伝えている。客が不要な商品を返品する間に再販価値が下がり、小売店は戻ってきた商品を廃棄することになるかもしれないというのだ。
さらに、下着や化粧品などの商品は、衛生上の理由からほぼ確実に捨てられてしまうとアトランティック(The Atlantic)は報じている。
オプトロのトビン・ムーア(Tobin Moore)CEOは、「多くの小売業者は、返品の25%以上を捨ててしまう。全体的に見ると、返品によって1年に50億ポンド(約103万トン)以上の商品が埋立地に送られていることになる」と2019年にCNBCに話している。
「ブラケティング」を防ぐ方法は?
ブラケティングは完全に解決できる問題ではないが、小売店が客の返品の頻度を下げる方法はいくつかある。
Narvarが2021年11月に実施した調査では、サイズチャートや具体的な寸法、客の役に立つような商品写真や説明、購入客のレビューなどをオンラインショップ内で提供することが返品防止に役立ち、また異なる体型のモデルに商品を着せることも有効であることが分かった。
返品を抑制するために独自の解決策を打ち出している企業もある。アマゾンやウォルマートのような大手小売業者は、不要な商品を客にそのまま持っていてもらって、返金処理だけをしている。また、運送大手UPS傘下のローディー(Roadie)やフェデックス(FedEx)と提携するハッピー・リターンズ(Happy Returns)のようなサードパーティーと協力し、商品が適切な場所に戻って来るようにしている企業もある。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)