写真:SpaceX
宇宙産業のサポート業務に広く携わる「宇宙商社」として独自のビジネスを展開する日本の宇宙ベンチャー・Space BDが11月30日、イーロン・マスク氏が代表を務める米SpaceXが製造・開発する「Falcon 9」ロケットを活用した衛星打上げサービスを開始すると発表した。
Space BDは2017年に設立されたベンチャー。
Space BDは衛星やロケットを自社で開発しているわけではなく、ロケットの打上げ「枠」を確保して、衛星開発者に提供。搭載して打ち上げるまでの技術的な調整や官庁とのやりとり、その他安全審査などを支援している。
国内では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から国際宇宙ステーション(ISS)の小型衛星の放出、実験装置の利用を仲介などをする事業者として選定されており、実績も豊富。
ロケットの打上げ枠についても、JAXAが開発する次世代基幹ロケットである「H3」の相乗り枠、宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の後継機である「HTV-X」を活用した衛星放出機会の提供など、これまでに国内外のユーザーに約50機以上の打上げサービスを提供してきたという。
宇宙に衛星を送り込むためには、そのサイズや重さなどによって利用できるロケットに制限がある。
今回、SpaceXの「Falcon 9」の衛星打上げ枠の利用権を獲得できたことで、Space BDとしては、これまで以上に宇宙へアクセスする幅広い手法を提案できるようになる。
継続的にFalcon 9の打上げを仲介
Space BDが契約したのは、2022年10月に予定されている「Transporter6」というミッションで打上げられるロケットの利用権。今後同社は、打ち上げサービスプロバイダー(仲介業者)として、衛星開発者などにこの枠を提供していくことになる。
なお、プレスリリースでは「『Transporter6』以降も継続した海外の打ち上げ手段を調達していく予定」とされていたが、Space BDの広報は、Business Insider Japanの取材に対して、
「基本、利用枠は先着順です。(今回購入したミッションの次のミッションである)Transporter-7の枠購入の意思があることは現時点でSpaceXに伝えてあり、購入する前提で現在話を進めています」(Space BD 広報)
と、すでに継続的にFalcon 9の打上げを仲介していく意向があることを先方には伝えているとした。
また、今回の契約締結が日本国内の宇宙産業に与える影響について質問すると、
「日本の打上げ手段では打ち上げられなかったサイズの衛星や打上げ軌道を希望するユーザー様にも、打上げ手段を提供できるようになりました。
日本の宇宙産業へのメリットとしましては、当社が幅広い打上げ手段を所有することで、これまでの打上げ手段では宇宙利活用に参入できなかった方へ新規参入のハードルを下げ、より多様な取り組みを加速させることが考えられます」(Space BD広報)
と語った。
(文・三ツ村崇志)