オミクロン株は見つかったけれど… アフリカ南部は変異株の温床ではない

検査

REUTERS/Eva Plevier

  • 新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」について世界保健機関(WHO)に報告し、最初に警鐘を鳴らしたのは、南アフリカの科学者たちだ。
  • しかし、それは必ずしもオミクロン株が南アフリカから来たことを意味しない。むしろ南アフリカの監視システムがしっかりしていることを示すものだ。
  • 「わたしたちは警鐘を鳴らしただけです。そのおかげで、気付かれないままだったかもしれないその存在を他の誰もが認識することができたのです」と南アフリカのウイルスの専門家は語った。

11月下旬、南アフリカの科学者たちは世界に知らしめた —— オミクロン株がやってきた、と。

南アフリカのウイルスの専門家たちが、数十か所が変異した新しい変異株を見つけたとする11月24日の発表は、WHOを通じて国際社会に警鐘を鳴らした。

新たな変異株「B.1.1.529」は11月11日、ボツワナに入国した海外の外交官4人で初めて確認された。その後、11月14日に南アフリカの科学者チームによって再び確認され、同チームが国際社会に報告した。WHOは11月26日にこの変異株を「懸念される変異株(VOC)」に指定し、「オミクロン」と名付けた。

デルタ株よりも感染力が強いのか、死者数は増えるのか、新しいワクチンが必要になるのか —— 世界中の研究者たちがオミクロンについて研究し始める一方で、アメリカやイギリス、欧州連合(EU)は新しい変異株の発見に素早い渡航禁止措置で応じ、南アフリカやボツワナ、そして新しい変異株が見つかっていない近隣の6カ国からのフライトをストップさせた。

国際社会が警戒態勢に入り、こうした公衆衛生上の重要な疑問に答えようと急ぐことができているのは、南アフリカのおかげだ。

アフリカ南部が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の監視で国際的に秀でているのは、COVID-19のかなり前からウイルス性疾患や遺伝子変異を追跡する革新的なシステムを立ち上げ、HIVやエボラ出血熱、結核といった感染症を追跡・監視していたことが大きい。

「わたしたちには、大学やさまざまな研究コンソーシアムとの本当に強固な研究バックグラウンドがあります」と南アフリカのWits Vaccines & Infectious Diseases Analytics Research Unitのシニア・サイエンティスト、ビッキー・ベイリー(Vicky Baillie)氏は語った。

「多くは準備できていましたし、わたしたちには豊富な経験があります —— なので、COVID-19対応ではわたしたちは非常に良いポジションにいると思います」

オミクロンがアフリカ南部に他のどこかからやってきた可能性は十分にある

新しい変異株が具体的にどこで生まれたかは分からない。

オミクロン株のような変異が多く、何をするか分からない変異株は、単一の免疫不全の宿主(ホスト) —— ウイルスに対して適切な防御ができず、その結果、何カ月もの間ウイルスが複製し続けるのを許す —— から生まれるのではないかとしばしば考えられている。

「変異の多さを考慮すると、これは単一宿主の中で起きた分子進化の結果で、それが一般に広がった可能性が高いだろうと考えています」とThe Public Health CompanyのCEOで共同創設者チャリティー・ディーン(Charity Dean)氏は話し、1人の免疫不全の人からこの新たな変異株が生まれたとの見解を示した。

「ただ、別の国や別の大陸から来た可能性も十分あるのに、南アフリカを責めるのは不当だと思います。そして結局のところ、それは関係ないのです。彼らは(新しい変異株を)見つけたこと、それを公表したこと、自分たちが知っている全てのことを率直に共有したことで評価されるべきです」とディーン氏は語った。

科学者やディーン氏のような公衆衛生の専門家からの称賛をよそに、一般の人々の反応は、手遅れになる前にこうした新しい変異株について休むことなく世界に情報を伝えてきたアフリカの科学者たちにとって、傷つくようなものが多い。

「本当に難しいです」とTikTokでも自身の仕事を紹介しているベイリー氏は言う。

「南アフリカの科学界に対する反発は強く、多くの人々が『見つけてくれて本当にありがとう。おかげでクリスマス休暇がなくなった』と言っています」

南アフリカはなぜアメリカよりも早く変異株を見つけられるのか

アフリカは何十年にもわたって(しばしばアメリカやイギリスの公的もしくは私的な資金提供を受けて)革新的な感染症の追跡・監視システムの開発、立ち上げに力を注いできた。アメリカ国立衛生研究所(NIH)やイギリスのウェルカム・トラスト、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などはいずれも、アフリカのウイルス監視システムを強化するために、多額の資金と時間を費やしてきた。

アフリカには、何百万というユニークな遺伝子変異を発見してきた「アフリカにおける人・遺伝・健康(Human Heredity and Health in Africa:H3Africa)」プログラムの他、HIVの流行と戦うために1996年に創設された「ボツワナ・ハーバード・パートナーシップ(Botswana Harvard Partnership)」もある。オミクロン株が初めて確認されたのは、ここのSikhulile Moyo博士の研究室だ。

パンデミックの初期、南アフリカは新たに「南アフリカゲノム監視ネットワーク(Network for Genomic Surveillance in South Africa:NGS-SA)」も立ち上げていた。アメリカよりも1人あたりの解析する新型コロナウイルスのサンプル数は少ないものの、その解析は世界中からランダムにサンプリングし、より戦略的に行われている。

「わたしたちは警鐘を鳴らしただけです。そのおかげで、気付かれないままだったかもしれないその存在を他の誰もが認識することができたのです」とベイリー氏はオミクロン株の検知について語った。

その警鐘が鳴らされて以降、オミクロン株はカナダやドイツなど世界各地で見つかっている。オランダの科学者は、オミクロン株が少なくとも1週間以上前からオランダ国内に存在していたと明らかにした

渡航禁止措置が科学に"水を差す"可能性も

ビッキー・ベイリー氏

ビッキー・ベイリー氏。

Courtesy of Vicky Baillie

公衆衛生の専門家たちは、南アフリカの今回の経験は国内で新型コロナウイルスがどうなっているか、他の国々が迅速かつ率直に報告することを思いとどまらせる可能性があると指摘している。このような"誠実さ"が"罰"になる可能性があると分かったからだ。

オミクロン株の存在を世界に知らせたことは、アフリカ南部の経済に大打撃を与えている。南アフリカのランドと株式市場はいずれもオミクロン株が経済にもたらした悪いイメージから回復し始めたばかりだ。そして、南半球の夏のホリデーシーズン中の海外旅行はほぼストップした。

アメリカは南アフリカが果たした役割を認識している。感染症の専門家でアメリカ国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は11月30日のホワイトハウスの新型コロナウイルスのブリーフィングで、南アフリカに対し「賛辞」を贈った。バイデン大統領も11月29日、オミクロン株について「世界に迅速に知らせた」南アフリカはその「功績」を認められるべきだと話した。ただ、同じ日にアフリカ南部の国々からの渡航制限が実施された。

「こうした渡航制限の目的は何なのか、わたしたちはよく考えなければなりません」と感染症の専門家でボストン大学のCenter for Emerging Infectious Diseases Policy & Researchのディレクター、ナヒード・バデリア(Nahid Bhadelia)博士は11月28日、ケビン・ポー(Kevin Pho)博士のポッドキャストで語った。

「国々が未来のデータを共有する意欲を減退させる前例を作っているのでしょうか?」

そして、アメリカ市民ならワクチンを接種しているか検査で陰性であれば、今もアフリカ南部からアメリカに戻って来られるのだ

「疑問に思います。どうしてそれを全員にできないのでしょう?」とバデリア博士は話した。

「渡航制限を通じて本当に感染拡大を遅らせたいなら、どこから来るかに関係なく、全員にそうするべきです」

[原文:Southern Africa is not a hotbed of variants — it's just very good at sequencing and spotting them

(翻訳、編集:山口佳美)

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