レフィーク・アナドール(Refik Anadol)によるインスタレーション作品「Machine Hallucinations - Space: Metaverse」を鑑賞する人々。
Tyrone Siu/Reuters
- バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストであるハイム・イスラエルによると、メタバースは暗号空間にとって巨大なチャンスだという。
- 同氏は、暗号資産(仮想通貨)がいよいよ仮想世界での取引に広く使われるようになると予測している。
- また、暗号ベースのプラットフォームを発展させる必要があり、「このエコシステム全体に大きなチャンスが生まれる」とも述べている。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のグローバル・テーマティック投資戦略部門を率いるストラテジストのハイム・イスラエル(Haim Israel)によると、メタバース(Metaverse)はブロックチェーン技術にとって巨大なチャンスであり、それによってついに暗号資産(仮想通貨)が取り引きに広く使われるようになるという。
イスラエルは2021年11月30日、仮想世界のプラットフォームが競い合うように構築されていく中、メタバースが暗号空間の開発ブームを引き起こす可能性が高いとInsiderに語っている。
「適切なプラットフォームが必要になるが、このエコシステム全体にとって大きなチャンスになることは間違いない」
メタバースでは「仮想通貨を『通貨』として使い始めるだろう」とイスラエルは予測している。しかし、既存のデジタル通貨ではボラティリティ(変動性)が高すぎるため、ある種のステーブルコインが主流になるだろうという。
メタバースとは、オンラインの3D仮想世界の総称であり、そこではゲーム、物作り、交流、仕事、さらには仮想通貨の取り引きまでできる。
フェイスブック(Facebook)が2021年10月に、独自のプラットフォーム構築への意気込みを表明するために、社名を「メタ(Meta)」に変更すると発表してから、メタバースへの関心が高まっている。大企業も暗号開発者も、仮想世界の構築に向けて競い合っている。
人気のプラットフォームのひとつであるディセントラランド(Decentraland)では、分散型の暗号技術によって、ユーザーは仮想の土地の購入や、構造物の建設、経済を統治するための投票を行うことができる。
ディセントラランドのファンは、投機的な投資としてデジタルの資産や土地に目を向けており、最近、ディセントラランド内の不動産区画が240万ドル(約2億7000万円)で販売された。一方、デジタル資産などを扱うリパブリック・レルム(Republic Realm)は、サンドボックス(Sandbox)のメタバース空間にある不動産を430万ドル(約4億9000万円)で購入したと、2021年11月30日に報じられた。
イスラエルは、メタバースは広く取り引きに使われる場所になりそうだと述べている。
仮想通貨がいくつかの新しい仮想世界を支えるブロックチェーン技術と相性が良いということはわかっている。それによってメタバースはテクノロジー企業や決済プロバイダーの管理下に置かれることなく、分散型の運営を維持することができる。
しかし、イスラエルによると、多くの仮想通貨は、普及させるにはボラティリティ(変動制)が高過ぎるという。つまり、メタバースの開発者たちは、米ドルなどの安定した通貨に紐づけられたステーブルコインに目を向ける可能性が高い。
イスラエルは、仮想通貨がメタバースで普及すれば、既存の決済会社はますます興味を持つようになるだろうと予測している。
「仮想通貨と決済会社の間で、多くのコラボレーションが生まれるだろう」
メタバースへの関心が高まる一方で、懐疑的な見方をする人も少なくない。例えば、セカンドライフ(Second Life)のような仮想世界はかなり前から存在しているし、仮想現実に入るのに必要なヘッドセットはまだ普及していないと指摘されている。
また、暗号通貨が本当に普及するかどうか疑問視する人や、メタバースがどのようなものになろうとも、最終的にフェイスブックのような巨大テクノロジー企業が支配してしまうのではないかと考える人もいる。
PSLのベンチャーキャピタル担当役員であるベン・ギルバート(Ben Gilbert)は2021年11月15日、次のようにツイートした。
「メタバースがメタ、マイクロソフト(Microsoft)、アップル(Apple)などによって開発された場合、ユーザーが所有するもの、あるいは分散化されたものになるとは思えない(彼らは100億ドル規模の開発費を投じているのだから!)」
暗号資産ネットワーク、ソラナ(solana)の共同設立者であるラジ・ゴカル(Raj Gokal)は、自身が感じる疑念について2021年11月25日にツイートした。
「メタバースが(業界全体で)あまりにも大げさに取り上げられていることが心配だ。未発表の製品や製品カテゴリーについて、これほど過剰に主流メディアで報道されたことは、これまでなかったと思う」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)