ミレニアル世代とベビーブーマー世代は、「スターターホーム」の購入をめぐって競い合っている。
Allen J. Schaben/Getty Images
- 手頃な価格の「スターターホーム」が不足しているのは、ベビーブーマー世代のせいだと考えるミレニアル世代がいることが、新たな調査で明らかになった。
- 小さな住宅への住み替えを狙うベビーブーマー世代は、スターターホームを求めており、価格を競り合う状況ではほとんどの場合、ベビーブーマー世代が勝つことになる。
- 住宅危機は10年前から始まっていたが、パンデミックも住宅不足が解消されない要因の1つだ。
新たな世代間の争いが始まった。アメリカのミレニアル世代(1981年から1996年頃生まれ)の中には、住宅不足はベビーブーマー世代(1946年から1964年生まれ)のせいだと考えるがいるという。
これは、資産運用会社Legal & Generalが、住宅を所有していないミレニアル世代875人を対象に行った調査で明らかになった。この調査では、サンプル数は少ないものの、回答者が住宅問題を上の世代のせいにしているという顕著な傾向が見られた。
ある回答者は「ブーマー世代は、老後の住まいとして『スターターホーム』(最初に住宅を購入する人向けの、手の届きやすい価格の物件)を買うのをやめるべきだ。そのせいで初めて住宅を取得しようという人が買えない価格になっている」と述べた。
「ブーマー世代も購入しているので、予算内で住宅を買うのは難しい」という同様の意見もあった。
回答者のうち、48%が住宅購入のための頭金を貯めていたが、そのうちの55%はまだ購入する余裕がないという。住宅価格の中央値が過去最高の38万6888ドル(約4300万円)に達する今日の住宅市場では無理もないことだろう。初めての住宅を購入しようというときに市場から締め出された彼らの憤りが表れている。
「住宅所有者は上の世代に集中している。彼らはこれまで富を貯め込み、我々の世代が同じような経済的機会を得ることを妨げている」という回答もあった。
40歳になる前に2度の不況に見舞われ、生活費も高騰するという経済的苦境に立たされているのは、ベビーブーマー世代のせいだとさえ感じている回答者もいた。ベビーブーマー世代がアメリカンドリームを追い求めすぎたたために、ミレニアル世代が同じ理想を追求することが難しくなり、その理想の実現に役立ったはずの多くのプログラムもベビーブーマー世代が廃止してしまったという。
ベビーブーマー世代にさえ、それに同意する人もいる。資産運用会社Oaktree Capital managementの共同設立者で、億万長者のハワード・マークス(Howard Marks)は、自分たちの世代が若い世代に過剰な負債を残していることを批判した。また、「ミレニアル世代」という言葉を作った人口統計学者のニール・ハウ(Neil Howe)が、以前Insiderに語ったところによると、ベビーブーマー世代が制度維持のための負担を拒否したため、適正価格で住宅を購入できないというアフォーダビリティ危機にミレニアル世代が直面することになったという。
ベビーブーマー世代がすべて悪いわけではない
このような批判は、真実も含まれているが、注意すべき点もある。
Legal & Generalの調査でも指摘されているように、小さな住宅へ住み替えようとしているベビーブーマー世代は、ミレニアル世代が用意できる予算に収まるスターターホームを購入している。2021年10月に発表されたZillowのレポートによると、多くのベビーブーマー世代が住宅を購入しているため、ミレニアル世代が住宅を購入するのはますます難しくなっている。
ベビーブーマー世代は長年住宅を所有し、自己資本から得た利益で住宅を現金一括で購入できるため、パンデミック以前から頭金を貯めることにさえ苦労していたミレニアル世代と競り合った場合には、ベビーブーマー世代が勝つことが多い。
60歳以上のアメリカ人は、10年前の同じ年代の人々よりも積極的に住宅を購入している。2009年から2019年にかけての住宅購入者の割合は、60歳以上で47%増加し、18歳から39歳までの若年層では13%減少した。
しかし、住宅危機にはさまざまな要因があるのだから、ベビーブーマー世代だけのせいにするのは不公平だろう。住宅建設件数は、この10年で20分の1になっており、1960年代までさかのぼっても、これほど減少したことはないと、不動産会社Redfinのチーフエコノミストであるダリル・フェアウェザー(Daryl Fairweather)が、2021年4月にInsiderに語っている。
また、パンデミックも住宅不足が解消されない要因の1つだ。全米リアルター協会(NAR)の住宅・商業調査部長であるゲイ・コロラトン(Gay Cororaton)は、安全対策のために住宅を売りに出さない人もいると以前Insiderに語っている。他にも、住宅を売りに出しても、代わりの住宅を手頃な価格で買えないことを恐れ、売却に慎重な人もいる。
また、史上最悪となった木材不足がなければ、もっと多くの住宅が市場に出回っていたかもしれないと、コロラトンは付け加えた。2020年3月には、新型コロナウイルスの感染予防対策のために、木材工場が閉鎖された。住宅市場が再び動き始めると、木材生産が追いつかないほど多くの新築住宅が売れたものの、急騰した木材のコストは住宅購入者が負担することになった。
そして今、ミレニアル世代の住宅購入がピークを迎え、その需要が住宅不足をさらに悪化させている。ベビーブーマー世代だけが住宅危機の原因ではないかもしれないが、彼らはその経済力で、かつてないほど競争の激しい市場をいっそう激化させる存在となっている。
[原文:Millennials are blaming boomers for the starter home shortage, survey finds]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)