ツイッターのCEOを退任したジャック・ドーシー。
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ツイッターはこのほど、ジャック・ドーシーに代わってパラグ・アグラワルを新CEOに任命した。アグラワルはキャリアのほとんどを同社で過ごしてきた古株で、ドーシーによれば同社の幹部として長らく「極めて重要な決定事項すべて」に関わってきた人物だ。
しかし、ドーシーの退任を受けて思い切った改革を期待していた人たちからは、落胆の声が上がっている。
Insiderの取材に応じた投資家や一流アナリストの中には、ドーシーの後継者にはもっと大きな変化を望んでいた、と打ち明ける人もいた。ツイッターは野心的なユーザー目標および収益目標を掲げているが、アグラワルほど内輪の人物がこれを達成できるのかと懐疑的な見方をしている。
「外部の人間が入るのではないかと期待していました」と話すのは、バーンスタインのマーク・シュムリクだ。
「ツイッターの企業文化はかなり固まっていると見られています。そのため、外から誰かが来て改革を起こす必要があるのです」
ドーシー退任の一報が流れた2021年11月29日、ツイッターの株価は当初、高騰した。しかし後継者の詳細が分かると終値2.7%安まで下がり、年初来で15%以上下落した。
ツイッターの新CEOに就任したパラグ・アグラワル。
2011年にエンジニアとして入社したアグラワルは、ドーシー直属の部下として何年も働いており、ツイッターの取締役会が全会一致で選んだ人物だった。しかし社外ではほぼ無名の存在だ。従業員に充てたメールの中でアグラワルは、ドーシーをメンターであり友人と呼び、またスタッフには「ツイッターの本領を世界に見せてやろう!」と語りかけた。
アクティビスト・ヘッジファンド会社のエリオット・マネジメントは2020年初頭から、ドーシーの追放を含めてツイッターに変化を求め続けてきた。株式4%を取得した同社は増収を求め、ドーシーがツイッターとデジタル決済企業スクエア(社名はブロックに変更予定)という、上場大手2社を経営すべきなのかと疑問を呈していた。
エリオットのアクティビズム責任者ジェシー・コーンとポートフォリオ・マネジャーのマーク・スタインバーグは11月29日に発表した声明の中で、ツイッターへの投資はこれまで「生産的で効果的だった」と述べた。
2人はさらに、「ブレット・テイラー新会長とパラグ・アグラワル新CEOの両者をよく知るようになったが、ツイッターにとって大事なこの時期において、2人が同社の適切なリーダーだと我々は確信している」と加えた。
だが、それほど納得していない人もいる。エバーコアISIの上席インターネット・アナリスト、マーク・マハニーは投資家に向けた書簡の中で、「ツイッターはおそらく、今回の発表よりはるかに大きな経営改革が必要でしょう」と書いている。
「Super Follows(スーパーフォロー)」や「Twitter Blue(ツイッターブルー)」など、ツイッターはここのところ、ユーザー向けの新たなプロダクトのリリースに長けてきた。しかしマハニーによると、これらはユーザー数や売上の増加には今のところ大きくつながっていない。
ツイッターの現在の目標は、2023年までに売上を倍増させ、1日当たりのアクティブユーザー数(DAU)を現在の2億1100万人から3億1500万人に増やすことだ。マハニーは次のように書いている。
「こうしたバリュープロポジションの課題の根底にあるのは、一貫性のないプロダクト開発をしてきた実績です。ツイッターのために言うと、同社もそれは認識しています。
“専任”のCEOを迎えることで、この実績はおそらく改善できるでしょう。現時点では分かりませんし、向こう数四半期では、はっきりした知見は得られないでしょう」
ツイッターは最近、ユーザー向けに新プロダクトをいくつか発表しているが、シュムリクによるとこれはある意味、「どれがうまくいくか様子見」戦略なのだという。この戦略自体はいいとして、ソーシャルメディアの収入源である広告面で見ると、「やるべきことは他にもっとたくさんある」という。
広告主の利益となるような変更をどこに施せばいいか、CTO、エンジニア、AIの専門家として、アグラワルは分かっているのかもしれない。そしてアグラワルの両肩には、ツイッターの収益性をさらに高めるためのプレッシャーもかかるだろう。
シュムリクはツイッターの現状を、マイクロソフトのCEOが2014年にスティーブ・バルマーからサティア・ナデラに代わったときになぞらえる。
ナデラもまた、当初は懐疑的に受け止められた内輪の人物だった。しかしその後、マインクラフトやリンクトインなどを次々に買収し、クラウドコンピューティングに多額の投資をした。「報われた賭けだった」とシュムリクは語り、こう続ける。
「我々がアグラワルに求めているのも、これと同じです。どんな賭けをするのか、何を優先するのか。
もし今から3カ月後に、ツイッターの社員たちが集まる場に居合わせたとして、彼らは自分たちの“北極星”、つまり向かうべきところを分かっているでしょうか? そうだといいのですが」
(翻訳:松丸さとみ、編集:常盤亜由子)