メルカリが不要品の次に価値に変えるのは“空き時間”。新サービス「メルワーク」の狙い

メルカリが新たなサービスをローンチする。

メルワーク」と名付けられたそれは、利用者がアプリ上で「メルカリ」から出される「タスク」に参加・協力することで、メルカリポイントを得られる仕組みだ。タスクの第一弾は「類語判定」を提供する。

提供:メルカリ

「お客さまは日常の空き時間を活用し、ゲーム感覚でタスクを消化することにより、ポイントを得られます。『メルカリ』としてはタスクから得られた回答をもとに、サービス向上につなげていく。メルワークを通じて、お客さまと一緒にサービスを改善し、『メルカリ』をより便利にできると考えています」

そう話すのはメルワークのプロジェクトリーダーである、メルカリ メルワークチームマネージャーの原田和英氏。過去に原田氏はクラウドソーシング事業で起業経験を持ち、前職のnanapiでも類する事業を推進。その可能性を信じ、解消させたい課題を知るからこそ、メルワークに注ぐ熱意は並大抵ではない。

原田氏からは「お客さまとのマイクロタスクでの協業」という言葉も出たが、メルワークの構想や取り組みの意義、その将来性などを聞いた。

「空き時間」を価値に転換する

スマホ画面

メルワークは「メルカリ」のアプリ内で展開される。タスクの第一弾として提供する「類語判定」は、2つの単語の意味について回答する全10問のタスクだ。利用者は表示された単語同士が同じ意味を示すなら「○」、異なる場合は「✕」、わからない場合は「?」を回答する。たとえば、「トート」と「エコバッグ」、「スウェット」と「トレーナー」といった問題が出る。

利用者は1タスクにつき、メルカリポイントを2ポイント付与される。ローンチ段階では1日20タスクまでの参加、月30日で換算すると最大1200ポイントまで得られることになる。付与されるポイントは「メルカリ」内で使えるだけでなく、スマホ決済サービス「メルペイ」を通じてコンビニ、飲食店、ドラッグストアなど加盟店でも利用できる。

原田和英氏

原田和英(はらだ・かずひで)氏/メルカリ メルワークチームマネージャー

「『メルカリ』はその人にとって役目を終えたモノを新たな価値に変えてきました。メルワークは『空き時間』を新しい価値に変えていきたい。エレベーターや電車の待ち時間など、日常には多くの空き時間があり、その合計は1人あたり最大約970時間/年間(※)にも及ぶと私は考えています」(原田氏)

実際にタスクを体験してみると、直感的かつ軽快に操作でき、取り組みへの難しさは感じない。中には少し考え込んでしまう問題も出たが、それを加味しても10問あたり30秒もかからずにタスクを完了した。

得られた回答は「メルカリ」内での検索機能改善やレコメンデーションに役立てる。メルワークは「あなたのワークが誰かの便利へ」とサービスを表現するが、単なるアンケート調査などと異なり、UXの向上に直接的に活かされるのが特徴と言える。検索によるマッチング精度が上がれば、利用者は“欲しい物”により出会いやすくなる。

「構想段階から50名ほどにユーザーインタビューを重ねてきました。子育て中で社会との接点があまりない方が、アノテーション(商品などへのキーワード付与)というタスクによって『人から必要とされることで、社会とのつながりを感じられた』と言っておられました。また、『メルカリ』によく出品される人形作家の方からは『自分の物だけでなく他の人の出品が売れやすくなったり、検索機能が使いやすくなったりするのが嬉しい。自分が属するコミュニティの活性化にもつながる』という声があり、サービス改善への貢献など金銭以外の価値を感じてくださっているケースも多かったのです」(原田氏)

※平成28年度の総務省統計局による『社会生活基本調査』によれば、「休養・くつろぎの時間」「移動時間」「通勤・通学」を合算すると1日あたり2時間40分になり、一年365日で換算。

時間をもっと効率的に使いたい

mework

メルワークは、2019年6月に原田氏のチームが社内ビジネスコンテストに提出した案を元にしている。CtoCサービスである「メルカリ」では、利用者によって出品する商品の表現や説明が異なる。そのため、検索キーワードと商品が正しくマッチしないことがあった。そこで、今回の仕組みを用いて、検索キーワードの言い換えや出品者が用意する説明文に含まれない色や形などの情報も検索ができれば、利用者はより「本当に欲しかったもの」に出会える可能性が高まる

また、「メルカリ」は新着商品を探す人が多く、検索用データにはリアルタイム性が必要だ。この課題に対して、仮に外部パートナーに一括してデータ作成を依頼しているようでは間に合わないことが予想された。

さらに、原田氏は「『メルカリ』はモノとお金を扱うだけの場ではなく、サービスや時間を扱っていくことで、より広がりが見せられるのではないか」とも考えたと話す。折しもコロナ禍で在宅勤務や休業など空き時間を持つ人が増えてきた頃だ。

原田氏

「あと、私自身がものすごくせっかちなんです(笑)。エレベーターを待つ30秒も本を読んでしまいます。タクシーに乗る間にアンケートに回答して、回答で得られたポイント分値引きできるようなサービスがあったら、もっとタクシーを利用しやすくなるとか皆によい仕組みが作れるのにな、と思うこともあって。時間は有限だからこそ、空き時間をうまく使いたいという問題意識は強くありました」(原田氏)

また、原田氏は過去にクラウドソーシング事業に深く携わり、従来型のサービスでは解消しきれなかった「難しさ」にもトライした。

一例を挙げると、依頼者が期待していたものと実際にできあがったものがズレてしまうケースには、依頼を二択問題といった手軽にできるアウトプット、つまりマイクロタスクにして改善を図っている。作業者側の視点では「タスクの案件数を確保できない」という課題もあるが、「メルカリ」が自社で出品情報を元にしたタスクを生成し続けることで解消可能だ。

メルワークは『お仕事』というよりも、空き時間を価値に変える仕組みですから、従来のクラウドソーシングとコンセプトは異なります。また、今後はよりお金以外の価値を感じていただくことで、ワーカーの時間や才能、好きなものへの情熱、たとえば今回であれば、『メルカリ』への愛着を活かしていただけるようなサービスにできればいいなと考えています」(原田氏)

月間利用者数約2000万人、「メルカリ」だからこそのタスク

商品

2022年春頃に実装予定の「商品とキーワードの正誤一致」の画面イメージ

メルワークは「類語判定」からサービスを開始するが、2022年春には第二弾のタスクとして「商品とキーワードの正誤一致」を予定。実際に出品された商品画像に対して、色や形状、特徴といった分類が正しく機能しているかを判定するものだ。利用者が商品知識を生かしてタスクに取り組む図は、空き時間だけでなく、その知見を金銭的価値に転換できるとも言える。

「今後は『メルカリ』での過去の取引情報なども活用しながら、お客さまの嗜好性を把握したうえで出題タスクを変えることも考えられます。たとえば、スニーカーをよく売買される方にスニーカーに関するタスクをお願いするのです。出品物と正しい型番が整理されることは、『メルカリ』にとって大きな価値向上につながる。そういった仕組みは取引履歴を持つ『メルカリ』にしかできません。月間利用者数約2000万人のサービスである強みを活かし、お客さまと従来にないマイクロタスクでの協業を推し進めていきたい」(原田氏)

現段階では、メルワークは「『メルカリ』を利用者と共にさらに使いやすくするためのサービス」と表現するに留まるだろう。しかし、原田氏が見据える世界はさらに広がっている。

「財布がない時に飲み物代が欲しい!と思っても得られるサービスは世の中にありません。財布をなくした時に帰りの交通費を手に入れるのも大変です。でも、メルワークのような仕組みが実現すれば、いつでも、どこでも、働いている人でも、働いていない人でも、誰でもちょっとしたタスクで、それを手にできることができるかもしれない。空き時間の活用の先には、そのような今までにない価値提供もできると思っています」(原田氏)

メルカリは「限られた資源が大切に使われ、誰もが新たな価値を生み出せる社会」を掲げるなど、グループ全体で循環型社会の実現を目指している。メルワークによって、人々が活用できていない「空き時間」を、他の誰かのために役立てられることは、まさに人的資本の循環という観点でもユニークだ。


メルワークについての詳細はこちら

Twitterアカウントはこちら

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

Popular

Popular

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み