イケアは安価な商品を多く販売しているが、その多くは最終的に埋立地行きとなっている。
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- イケアは、主に輸送費と原材料費の増加によって、税引前利益が16%減少したと発表した。
- 今後、サプライチェーンの問題から、商品の価格を上げ、在庫を減らす可能性があるという。
- それによって、2022年のイケアの売り上げが悪影響を受ける一方で、廃棄される商品は減るかもしれない。
毎年春になり、気温が上昇して木々が花を咲かせ始めると、大学周辺ではイケア(Ikea)製品が道路に並び、ゴミ箱を埋め尽くす様子が見られる。寮やキャンパス近くのアパートを退去する学生たちは、使っていたイケアの安価な商品が不要になるか、秋に授業が再開されるまで保管場所がない状態になる。その結果、キッチン用品や簡単に組み立てられる家具などが大量に捨てられる。しかもその多くがまだ新品のような状態だ。
だが、2022年には状況が変わるかもしれない。イケアの親会社であるインター・イケア・グループ(Inter Ikea Group)によると、2021年度の税引前利益が16%減少したのは、主に輸送費と原材料費の高騰によるものだという。これらの追加の出費やサプライチェーンの問題により、来期には商品価格の値上げが行われ、在庫が減少する可能性が高い。消費者は不満に感じるかもしれないが、これをきっかけに、単に店舗で新たなものを購入して古いものを捨てるのではなく、これまで使っていたイケア製品をそのまま使ったり、売ったり、修理や再利用したりする人が増えるかもしれない。
大衆向けの製品
スウェーデン発祥のイケアは、世界50カ国以上で422店舗を展開する世界最大の家具小売企業だ。イケア製品のデザインは、何十年もの間、学生や節約志向の人々の間で人気を博してきた。新型コロナのパンデミックの際には、多くの人が自宅で仕事や勉強をするようになったため、家具の需要が急増した。しかし、イケアの製品の手頃な価格と耐久性の低さは、多くの消費者にその商品をを使い捨てにしてよいと思わせている。
イケアは1950年代に、輸送コストを削減するため、平箱包装で梱包して輸送し、すぐに組み立てられる製品を普及させた。イケアの世界全体での売上高は非常に大きく、2012年には世界の商業用木材の総供給量の1%を使用しているとイケアは推定している。しかし、その木材にはエシカル(倫理的)でない調達先が含まれている可能性がある。2021年初めに発表された報告書によると、イケアはロシアで違法に伐採・加工された木材を使用した子ども用家具を販売していたという。
また、イケアで人気の家具には、パーティクルボードが使われているため、解体や組み立てを繰り返して再利用することに耐えられない。パーティクルボードとは、木材チップ、おが屑、削りカスを接着剤で固め、加熱プレス加工された木質ボードのことをいう。安くて軽いが、非常に壊れやすく、吸湿性が高い。
より長く使えるように配慮
イケアの取扱説明書には文字がなく、どの国でも理解されるかもしれないが、引越しや売却、寄付などのために家具を解体するのは難しい。2021年、イケアはついに、人気の高い6つの家具の解体方法と、いくつかのアイテムの使用期間を延長するためのヒントを公開した。これは、イケアの持続可能性への取り組みの一環として行われた。
イケアはこれまでにも、廃棄物を減らし、持続可能性を高め、環境への影響を改善するために、レンタル、修理、リサイクル、買い取りなどのプログラムを実施してきた。また、歩道や玄関先に捨てられた家具などを欲しい人が持っていく「ストゥーピング(stooping)」や、そのような家具がどこにあるのかという情報を発信するソーシャルメディアのおかげで、イケアの家具などが救出されることもある。
イケアのような企業は、簡易な造りの家具などを製造し、安価で流通させたことで長い間批判されてきた。パンデミックによって物流が滞るようになったことで、イケアの9ドルのランプの背後には複雑なプロセスがあり、需要が供給を上回った時に小売業者に何が起こるのかということが露呈した。
また、パンデミックをきっかけに、サステナビリティの支持者が何十年にもわたって訴え続けてきた消費主義の弊害についての認識も高まっている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)