グローバル資産運用大手アクサは2022年の日本経済についてきわめて明るい見通しを持っている模様だ。
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物価上昇が続き、新型コロナの新型変異株も発見されるなど、先行きの見通しは必ずしも明るい状況ではない。それでも、2022年は景気回復の年になりそうだ。
総額9810億ドル(約10兆8000億円)の残高を抱える世界最大級の資産運用会社アクサ・インベストメント・マネジャーズは、2022年に力強い経済回復が想定される市場のひとつに日本をあげている。
アメリカの経済と株式市場は、2020年上半期の新型コロナ感染拡大を契機とする暴落から急回復をみせているが、世界第3位の経済大国である日本の株式はそれに追いついていない。
アクサが発行した2022年見通しについての調査レポートで、コア投資(=賃貸収益などを柱とする安定運用)専門のエコノミスト、ユゴー・ル・ダマニーは、ワクチン接種の遅れに加え、欧米より行動制限が長引いたことから、日本の経済回復は世界に遅れをとってきたと指摘する。
日経平均株価構成銘柄の過去1年間のリターンはわずか4.78%にとどまり、S&P500(=アメリカの時価総額上位500社)の24.83%という圧倒的な数字の前になすすべもない。
結果として、ブルームバーグによれば、日経平均銘柄は株価収益率(PER)も15.98にとどまり、25近いS&P500に比べて相当に見劣りする。
しかし、マクロ経済の顕著な改善によって、その状況にもいま変化が訪れようとしている。ル・ダマニーは「日本が好転する時期は迫っている」として、以下のように語る。
「全人口のおよそ8割がワクチン接種を済ませ、政府は9月末に緊急事態宣言を解除。一部残された行動制限もまもなく解除されます。
端的に言えば、ここまでの向かい風が数カ月で追い風に変わり、結果として第4四半期は強力な回復力が働いて成長をあと押しすることになるでしょう」
アクサの予測によれば、日本の2022年のGDP成長率はアメリカと並んで年3.5%となる。
この数字は、パンデミックのかなり以前から日本が経済成長の実現に四苦八苦してきたことを考えれば、大胆な予測と言っていいだろう。
ル・ダマニーの見立てによれば、日本の経済回復は2021年第4四半期にとどまらず、年が明けても続く。消費者需要の回復がまだ十分でない上に、国内総生産(GDP)の3.7%にも達する膨大な家計貯蓄(が消費に回ること)があるからだ。
また、日本政府はすでに大規模な経済刺激策の導入を進めており、それが2022年に実を結ぶ可能性のあると、ル・ダマニーは指摘する。
経済刺激策には、18歳以下を対象とした10万円相当の給付金やマイナンバー(個人番号)カードの取得者へのポイント付与(最大2万円分)、中小企業への補助金などが含まれる。
経済状況の改善が日本の株式市場にどの程度反映されるかはいまのところ不明だが、経済が上向けば2022年の株式リターンが向上する可能性が高まるのは間違いない。
日本の代表的な指数である日経平均株価(日経225)は、他の主要7カ国(G7)の指標に圧倒される時期が続いたが、少なくともある程度は差が縮まりそうだ。
日経225とS&P500の推移を比較。2021年4月以降、両者の格差が広がっている。
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アクサは2022年見通しに関するレポートで、グローバル経済の先行きについてポジティブな見方を示し、2022年にはインフレが緩和されるとしている。
同社チーフエコノミスト兼調査部グローバルヘッドのジル・モエックによれば、グローバルサプライチェーンの切迫感は徐々に弱まり、その結果インフレもスローダウンしていく。
そうやってインフレが緩和されれば、中央銀行はパンデミックからの回復を遅らせかねない金融引き締め(利上げ)に踏み込まずに済む。
「そうした状況になれば、各国の中央銀行は金融政策の正常化を慎重に進めることができるようになります」(モエック)
アクサは特にアメリカ経済について、コロナからの回復初期段階で見られたGDP成長率の伸びが鈍化するものの、上向きの相場が続くと予測している。
同社マクロリサーチ部グローバルヘッドのデイビッド・ペイジはこう分析する。
「GDPの成長は、減速するとしても堅調なペースが続くでしょう。2021年は5.5%、22年は3.5%、23年は2.7%というのが当社の予測です」
ペイジの見立てによれば、米連邦準備制度理事会(FRB)が本格的な金融引き締めサイクルに動くのは2022年末以降。ただし、インフレの長期的なコントロールに何か疑念が生じた場合、引き締め着手が前倒しになる可能性もあるという。
一方、日本銀行は量的緩和政策を維持するとの見方が強く、株式市場にとってそれは好材料となる。
「日本銀行は、少なくとも2024年まで金融緩和政策を維持しながら、着実に国債や住宅ローン担保証券などリスク資産の買い入れ額を減らしていくものと当社は考えています。テーパリングを急ぐのは相当に難しいのではないでしょうか」(デイビッド・ペイジ)
(翻訳・編集:川村力)