NFTアーティストのナイラ・ヘイズ。
Latoya Hayes
4歳の頃に絵を描き始めたナイラ・ヘイズ(Nyla Hayes)は、やがて絵を描くのに夢中になった。
9歳になると、細長い首を持つ多様な女性たちのポートレートを描き始めた。『ロング・ネッキーズ(Long Neckies)』というシリーズだ。
「当時は恐竜が大好きで、好きな恐竜がブロントサウルスでした。恐竜はすごくかっこいいなと思っていて、自分の描く絵に取り入れたかったんです」と言うナイラは現在、12歳だ。
ナイラにとって、恐竜の太くて長い首は力強さの象徴であり、女性もまた力強いものだと考えているのだ。
「そういう女性の潜在的な美しさや力強さを作品で表現したい。どんな文化や環境にいても、基本的に女性は全員美しいと思うから」とナイラは言う。
1億8000万円の売り上げ
NFTマーケットプレイス、OpenSeaにて販売されているナイラの最初のコレクション「ロング・ネッキー(Long Neckie)」。ブロントサウルスと思われる恐竜と女性との作品もある(上段左から3番目)。
OpenSeaよりキャプチャ
NFT(非代替性トークン)アートファンの間でナイラの作品は大人気となった。NFTアートとは、最近売買が急速に増えている、ブロックチェーンを基盤にしたデジタルの芸術作品だ。
ナイラの最初のコレクションである『ロング・ネッキー(Long Neckie)』は2021年3月10日に出品され、80ある作品のうち51作品はすでに売約済みとなっている。9歳の時に描いた作品もあり、このコレクションには今後も毎年作品を追加する予定だ。
また、2つ目のコレクションである『ロング・ネッキー・レイディーズ(Long Neckie Ladies)』も同年7月27日に発売した。
3333人の女性のポートレートで構成されるこのシリーズは、「数時間で完売した」とナイラの母であるラトヤ・ヘイズ(Latoya Hayes)は語る。ナイラはその後、このシリーズの男性版である『ロング・ネッキー・フェラズ(Long Neckie Fellas)』も描いている。
ナイラは、タイム誌のNFT向けのWeb3.0のプラットフォームであるTIMEPiecesで初めてコレクションを発売したアーティストでもある。
これまでにナイラの作品はプライマリーとセカンダリーのマーケット両方で1394ETH分の売り上げを生み出しており、これはOpenSeaとKnownOriginのマーケットでの12月6日の取引価格を基準にすれば、580万ドル(約6億5000万円)となる。
後述する開発者への支払いやイーサリアムの利用料を差し引く前の額として、ヘイズはプライマリー・マーケットで382ETH(約160万ドル、約1億8000万円)を売り上げた。
2021年はヘイズのようなクリエイターたちにとっていい1年となった。暗号通貨に注目が集まり、NonFungible.comによれば、NFT取引量は7−9月期で過去最高の60億ドル(約6800億円)を超えた。
しかし、暗号通貨で億万長者になったマイク・ノヴォグラッツ(Mike Novogratz)をはじめとする専門家たちは、このブームは長く続くものではないと警鐘を鳴らす。
また、実物のアートとNFTを比較して、デジタル・コレクションの盛り上がりは人工的に作られた希少性によるものだ、と指摘する。
なぜNFTアートを始めたのか?
2つ目のコレクションである『ロング・ネッキー・レイディーズ』からは、ジェネラティブ・アートという手法を採用している。
OpenSeaよりキャプチャ
ヘイズはそのアイデアの源泉について、現実世界とデジタル世界両方からインスピレーションを得ているという。
「あらゆるものがインスピレーションの源泉になりますが、特定の色とか、GoogleやPinterestを見ていてアイデアになることが多いです。でも世界中を旅して、実際にこの目で見たいという気持ちはありますし、そういう体験からもアイデアをもらえると思います」
ヘイズの家族は娘がアートの道に進みたがっていることは知っていたが、既存のアートの世界に入るのは難しいとも分かっていた。ギャラリーに絵を飾ってもらったり、ウェブサイトに投稿してその後作品を配送したりするのは必ずしも簡単なことではない。
「当時は、私の絵を使って何かをするお金がなかったのです」
ヘイズの叔父は彼女の絵への入れ込みようを知っており、NFTを考えてみてはどうかと提案した。父と兄がそのアイデアを気に入り、手続きをサポートした。
ヘイズはもともとスマホのアプリで絵を描いていたが、NFTについて知ると、もっといい作品にできないかと試行錯誤を始めた。iPadを使い始めたことでキャンバスのサイズが大きくなり、Procreateというイラスト制作アプリをダウンロードして制作するようになった。
最初のコレクションである『ロング・ネッキ―』は、絵を描き終わった後JPEGファイルとして保存してコンピューターに転送。ミント(鋳造)するためにOpenSea上にアップロードした。
イーサリアムのブロックチェーン上にあるもうひとつのNFTプラットフォームKnownOriginも、作品数が少なめのコレクションで使用したことがある。
2つ目以降のコレクションである『ロング・ネッキー・レイディーズ』や『ロング・ネッキー・フェラズ』など作品数の多いコレクションはジェネラティブ・アート(コンピューターによるランダムな生成を制作過程に取り入れたアートのジャンル)だ。
これはヘイズがThe Andi Rutz Groupやthe Cosmic Pawsなどの開発者チームとコラボレーションしたものだ。
ジェネラティブアートでは、ヘイズは目、鼻、髪などのパーツを別々に描いて開発者に送り、それを開発者がコンピューターを使ってランダムに組み合わせて作品に仕上げているのだという。
(翻訳・田原真梨子、編集・野田翔)