二酸化炭素を排出する工場。
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- 「世界不平等レポート」は、富裕層の方が二酸化炭素排出に寄与していることを明らかにした。
- 彼らの財産のうち、多くを占めているのは不動産ではなく株式などの金融資産だ。
- 報告書では、気候変動への取り組みに対して富裕層により多く費用を負担させるよう示唆している。
世界経済全体に富の不平等が現れ、気候危機と株式市場が大きな役割を果たしている。
Wealth Inequality Labは2021年12月7日、世界における富の分布について調査した2022年の報告書「世界不平等レポート2022」を発表した。報告書によると、富と気候危機は直接的な相関関係があり、金融資産を多く所有する人々は、二酸化炭素の排出に最も寄与していることがわかった。
資産の内訳で言うと、低所得層が所有する財産の形態は現金や銀行預金で、中間所得層は銀行預金とともに不動産を所有し、富裕層の財産の40%から60%は金融資産であるとわかった。報告書が指摘しているように、フランスやアメリカの超富裕層は、全財産の90%から95%が株や債権で占めている。
そして彼らは、二酸化炭素の排出に最も寄与している層でもある。報告書によると、全所得者の上位10%の層が排出する二酸化炭素は総排出量の47.6%を占めており、世界の下位50%が排出する二酸化炭素は、総排出量の12%だ。この格差の原因は、炭素税によるものだ。炭素税がうまく課税されている国がある一方で、フランスのように、社会経済状況を考慮しない国もある。
「二酸化炭素排出における大きな不平等は、気候政策をもっと富裕層に向けて行うべきであると示唆している」と報告書では述べられている。
「これまでのとはころ、炭素税などの気候政策は、低・中間所得層にも不均衡な影響を与えている一方で、富裕層の消費傾向に変化はない」
現在まで、炭素税の標準的な考え方は、所有財産に関わらず誰もが同じ税額(同じ税率)を払うべきというものだ。だが、この報告書が指摘するように、それは富裕層に汚染する権限を与えてしまっており、二酸化炭素排出量や個人の財産に応じて税率を増加させる累進的な炭素税の必要性が示唆されている。
つまり、多くの財産を所有する人は、大気を汚染した分だけ多く税金を払うべきということだ。
さらに、一部の民主党議員は、富裕層は炭素税だけでなくすべての税金を公平に支払うべきだと主張している。進歩的な議員として知られるエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)とバーニー・サンダース(Bernie Sanders)は、5000万ドルから10億ドルの財産を所有する世帯に2%、10億ドル以上なら3%を課す富裕税を支持している。
非常に裕福な人と他の人との間のギャップが広がっている。 50人の最も裕福なアメリカ人が我が国の下位の半分の人々よりも多くの富を所有している。 億万長者の実効税率は平均的な労働者のそれよりも低い。 そうだ。我々は所得と富の不平等に対処しなければならない。
現在、アメリカには連邦政府による炭素税はないが、民主党議員は先日、二酸化炭素の排出を削減しない国からの輸入品に税金を課す法案を提出した。ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は、2030年までに二酸化炭素排出量を50%削減する計画を立てており、この達成のために、上院で審議中の「Build Back Better Act」によって5500億ドルを投じる計画だ。
アメリカや世界が二酸化炭素の劇的な削減に成功すれば、結果として富の不平等は緩和される可能性がある。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)