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「トリクルダウン」は幻想であり、富裕層への増税は必然…ピケティらが「世界不平等レポート」で指摘

イーロン・マスク(Elon Musk)をはじめ、世界で最も裕福な人々は、世界中の半分の人々よりもはるかに多くの富を所有している。

イーロン・マスク(Elon Musk)をはじめ、世界で最も裕福な人々は、世界中の半分の人々よりもはるかに多くの富を所有している。

Picture Alliance/Getty Images

  • 経済全体に不平等があることは周知の事実だが、このほど発表された大規模な調査に基づくレポートで、その不平等の大きさが明らかになった。
  • 富裕層への減税により「トリクルダウン」が起きるという神話は、「世界不平等レポート2022」で否定された。
  • 世界人口のうち、資産額が下位50%の層は、世界の富のわずか2%しか保有していないのに対し、上位10%の富裕層は76%を保有している。

経済的な格差は何十年にもわたって大きいままだ。新たに発表されたレポートも、地球上の最富裕層と最貧困層の格差がいかに大きいかを示している。

経済・不平等問題の専門家であるルカ・シャンセル(Lucas Chancel)、トマ・ピケティ(Thomas Piketty)、エマニュエル・サエズ(Emmanuel Saez)、ガブリエル・ズックマン(Gabriel Zucman)が中心となり、4年の歳月をかけて作成された「世界不平等レポート2022」は、富がどのように分配されているかについて、これまでにないデータを提供している。著者たちは「世界には、極めて大きなレベルの所得や富の不平等が存在する」と書いている。

このレポートで示されたデータによって「トリクルダウン」という経済理論は完全に否定された。トリクルダウンとは、富裕層への減税によって、富がしずく(トリクル)となって下層の人々にも流れ落ち、最終的にはすべての人に利益をもたらすという考え方を言う。アメリカではこれまで、ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)元大統領の減税に代表されるトリクルダウン理論に基づく政策が行われてきた。50年にわたる減税によって富裕層が優遇され、不平等を悪化させることがさまざまな研究で明らかになっているにもかかわらず、この理論は未だに生き残っている

このレポートの著者は、経済学の分野全体における不平等に関する研究をリードしている人々だ。シャンセルは世界不平等研究所の共同所長であり、サエズとズックマンは、富裕層の税逃れについての共著を執筆し、エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)やバーニー・サンダース(Bernie Sanders)などの上院議員が富裕層税を提案する際に支援を行った。

ズックマンの博士課程の指導教官だったピケティは、『21世紀の資本』を書いた。この本で彼は、フランス革命までさかのぼって集めたという前例のないデータを用い、何世紀にもわたって拡大してきた富の不平等が、エラーではなく資本主義によるものであることを明らかにした。「世界不平等レポート」でも、近年の状況について、本と同じ手法を用いて解き明かそうとしている。

彼らはレポートの中で、過去20年間の富のデータが示すのは「不平等は政治的な選択であり、必然ではない」ということを主張している。

例えば、人々が保有する資産価値で表される「富」に関して、彼らは「世界人口の半分に当たる下位の貧しい人々は、ほとんど富を所有していない」ことを明らかにした。その下位の人々が所有する富は、世界の富のわずか2%だ。つまり、世界の富の98%は上位半数の層が保有しており、富裕層になるほど富の集中度は増していくという。

世界人口の上位10%の富裕層は、世界の富の76%を保有している。上位5億1700万人が保有する富は、下位25億人が保有する富よりも圧倒的に多いということだ。世界の政治家による政策の選択によって、富は下に流れ落ちるのではなく、むしろ上に向かって流れている。

経済階層別、世界の富の分布

経済階層別に見た世界の富の分布。

World Inequality Report 2022

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