メタ(Meta)に社名変更したフェイスブック(Facebook)は2022年、Eコマースに注力する模様だ。Insiderは社内資料を独自に入手した。
Jakub Porzycki/NurPhoto via Getty Images
Insiderが独自に入手した内部文書によると、フェイスブック(Facebook)の親会社メタ(Meta)は2022年、オンサイトのコマースおよびショッピング事業に重点投資する模様だ。
フェイスブック、インスタグラム(Instagram)、メッセンジャー(Messenger)などグループ内のアプリを通じて、より直接的な商品販売を全社的に推進していく。
同社バイスプレジデント(広告・ビジネスプラットフォーム担当)のダン・レヴィは11月1日に(Insiderがのちに入手する)文書「2022年のコマース事業見通しと優先事項」を社内向けに共有。
「Instagramショップ」や「Facebookショップ」のようなオンライン店舗を通じて、米企業(とりわけライフスタイルブランド)の商品販売を拡大していくことをコマース事業の重点取り組みに位置づけた。
「私たちにとって最優先かつ最大の投資分野です。何か商品を販売しようと思ったらまずは当社のアプリにたどり着く、そんなビジョンの実現に向けて私たちは進化する必要があります」(同社内文書)
最近メタに社名変更したフェイスブックは、少なくとも2015年には社内に専門部署を設置してEコマース導入の準備を開始。(コロナ危機で)広告事業が打撃を受けた2020年には、フェイスブックとインスタグラムにオンライン店舗を導入している。
社名にメタを冠して新たなチャプターを迎える同社にとって、収益モデルに占めるEコマースの存在感はますます大きくなってきている。
メタが(フェイスブックとインスタグラムの)オンライン店舗でどんな決済手法を提供していくのか、現時点では判然としない。
ただ、同社がオンサイトでの販売拡大を強調していることを踏まえると、メタ社内で「友人であり、敵でもある」と呼ばれるECプラットフォーム大手ショッピファイ(Shopify)のビジネス手法を転用するやり方は考えられる。
事情に詳しい関係者によれば、オンサイト販売の拡大という目標設定は、言い換えれば、企業に(自社商品拡販のための)広告費をより多く使ってもらうことを意味しているという。
「『友人であり、敵でもある』という表現は、ショッピファイがコマース分野でダントツの先頭を走るプレーヤーだからそう呼んでいるだけで、実のところはそんな生ぬるい関係ではありません」(上記の関係者)
フェイスブックの広報担当に取材したところ、同社がコマース分野への投資を続けてきたことを事実とした上で、最新の決算説明会トランスクリプト(文字起こし)の提供を受けた。
そこでは、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が以下のように発言している。
「当社がこれから優先してプロダクト開発に取り組むのはコマース分野です。ユーザーがそれぞれの関心に合った新製品を見つけやすいようにする一方、商品を販売する側が当社アプリ内で顧客にリーチできるようにすることで、新たな機会を生み出していきます」
前出の内部資料によれば、2022年のコマース分野における取り組みの成否は、(フェイスブックやインスタグラムの)オンライン店舗の広告が、サイト外にユーザーを誘導して商品を購入してもらう従来型広告より優れたパフォーマンスを発揮できるかどうかで決まる。
レヴィの言葉を使えば、それは「当社のエンド・ツー・エンド(=販売者と購入者が直接つながる)のエコシステムが機能し始めたことを示す最良かつ最短の指標」となる。
また、フェイスブックやインスタグラムで直接商品を購入するユーザーが一気に増えたとしたら、それも2022年を成功と評価する根拠になるという。
前出の内部資料を読み込むと、メタが目指しているのは、ユーザー間の売買をメインとする
「Facebookマーケットブレイス」(日本未展開)における「既存ユーザーの力強い購買行動」(レヴィ)が、企業の提供する商品の(フェイスブックやインスタグラムでの)オンサイト販売にまで及ぶようにすることだとわかる。
同社はフィードやストーリーズ、Facebookグループを通じてオンライン店舗や商品を見つけやすくすることで、そうした力強い購買行動をとるユーザーを増やしたいと考えているようだ。
その文脈で言えば、2022年にフェイスブックの「マーケットプレイス」「ショップ」タブの統合を計画していることは注目に値する。
こうしたコマース分野での目標達成に注力するため、メタは少なくとも2023年まで、(1)イギリスなど新たな市場への進出(2)ショッピファイやブラバド(Bravado)、スプリング(Spring)など既存パートナー以外への新規投資(3)アメリカのライフスタイル関連(ショップ)加盟店以外のセグメントへの拡大、をあと回しにすると社内文書で明言している。
また、フェイスブックはメタバースを通じたデジタルコマースへの投資を少なくとも2023年までは控える方針も記載されている。
内部文書によれば、フェイスブックやインスタグラムなどメタ傘下アプリでのオンサイト販売を拡大する方針が強調されるようになったのは、2021年のことという。
「オフサイトのエコシステムの決定的な重要性はこれからも変わらないでしょう。オンライン販売への移行をまったく考えていない事業者や、当社の運営する『ショップ』以外で長く販売を続けてきた世界各地の事業者の存在があるからです。
しかし、だからと言って、オフサイトのエコシステムを成長させる取り組みを優先するわけにはいきません」
この(オンサイト販売重視の)方針転換には、アプリを通じてユーザーから取得できる情報を制限したアップルのプライバシーポリシー変更(あるいはiOSのトラッキング防止機能)が影響している。直近の決算説明会では事業にマイナスの影響があったことを明言もしている。
オンサイト販売の充実は「アップルのiOSの仕様変更(=トラッキング許可のポップアップ表示など)でダメージを受けた(ショップ)加盟店を支援することになる」とレヴィは文書で強調。
さらに、ザッカーバーグCEOもアップルのポリシー変更について、決算説明会で次のように語っている。
「当社アプリ内ですぐにもオンライン店舗を開設できるようなソリューションは、大企業にとって今後ますます魅力的で重要なものになるでしょう」
ここまで紹介したものとは別の社内資料によれば、メタはコマースを担当するチームの連携を重視している。
レヴィは11月22日、コマース事業に携わる数千人の従業員の足並みを揃えるため、「当社のコマース分野における取り組みを説明するのに使う表現を徹底的に明確に」する「コマース用語戦略」と題した資料を社内に共有した。
同資料は「メタコマース」(社外でこの用語を使用しないよう注意書きあり)という新たな用語を、傘下アプリ内で使える決済システム「Facebookペイ」や商品タグ付き広告「ショップアド(Shop Ads)」、「ショップ」「マーケットプレイス」のような特定アプリ内サービス、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)でのショッピングなど開発中の新たな機能を含む、コマース関連プロダクトやプラットフォームから成るポートフォリオと定義している。
(翻訳・編集:川村力)