ビッグデータはUBS が今注目している4つの破壊的技術のうちの1つ。
Wu Dongjun/Getty Images
最近の株式市場は低迷しているが、テック株もその影響を免れていない。2021年12月初旬、テック株が中心のナスダック株価は4%弱下落し、キャシー・ウッド(Cathie Wood)率いる破壊的技術を中心としたアーク・イノベーション(Ark Innovation)の ETF(上場投資信託)株価も13%急落した。
ブルームバーグ(Bloomberg)によると、これは、S&P500のうち時価総額が最大のアップルがサプライヤーにiPhone13の需要が減速したと明かしたことで、アップルに関する否定的な報道を受けた結果だという。
スイス最大の銀行であるUBSは、現在もテック株投資を有効な戦略として支持しているが、アップルやテスラのような超大手テック銘柄よりも、時価総額が中小規模で、破壊的技術を持つテック企業の銘柄を投資先として優先したいと考えている。
UBSのマーク・ヘフェル(Mark Haefele)最高投資責任者(CIO)は最新のリサーチノートの中で、「現在の市場低迷は、必ずしもテック業界の景気後退が進んでいることを示すものではなく、堅調な分野もあります。投資家は、他の重要なテック分野への投資や、2022年以降に見込まれる成長を見失ってはなりません」と述べている。
米証券取引委員会(SEC)によると、UBSは2兆6000億ドル(約295兆円)相当の資産を持つ世界最大の資産運用会社である。UBSはこれまで、破壊的技術を暗号通貨への投資に代わる現実的な選択肢と位置づけてきた。
ヘフェルのチームは、メガキャップ(超大型)のテック株に投資すればある程度は破壊的技術をカバーできることは認めつつ、それらのバリュエーション(訳注:企業価値に対して相対的に株価が割安か割高かの基準)が現在のような高水準にある場合は、投資家は他に成長余地のある小型株を探す必要があると主張する。
UBSのアナリストは次のように言う。
「私たちは、メガキャップのテック銘柄の強さをずっと見てきています。しかし2022年に向けて、バリュエーションはフォワードPER(訳注:今後12カ月間の利益に基づいて計算されるPER)の30倍前後、予想利益成長率は10%台前半となっています。また、大手テック企業は依然として規制リスクにさらされています。
成長株を見つけるには、投資家はメガキャップのテック株だけでなく、『次の目玉』になりうるミドルキャップ(中規模の)銘柄にも注目する必要があります」
ヘフェルのチームは、アップルやテスラのようなブルーチップ(優良)銘柄ではなく、中規模のテック株に投資すべき主な理由が3つあると主張する。すなわち、こうした比較的小規模な企業の銘柄は(1)収益成長率が高く、(2)規制当局の監視も比較的緩く、(3)合併や経営統合の恩恵を受ける可能性も高いのだという。
以下は、UBSが現在注目している4つの破壊的技術の分析だ。
AI
UBSは、AI、ビッグデータ、サイバーセキュリティという3つの技術革新を、新しい 「テクノロジーのABC」と位置づけた。アナリストらは、これら3つのテーマから生まれる総収益は2020年の3860億ドル(約43兆円)から2025年には6250億ドル(約71兆円)に急増すると予想している。
UBSによると、AIは「テクノロジーのABC」の中でも最も大きなリターンを生むという。彼らによれば、サービスとハードウェア市場だけでも年20%成長し、今後5年間で900億ドル(約10兆円)に達するとのことだ。
「AIはすでに、ナビゲーション、プライシング(価格設定)、広告、顔認識、翻訳などの分野で広く利用されています。今後、企業は顧客体験の向上、製品やサービスの提供コストの削減、新しい事業展開を目的として、ますますAIに頼るようになると私たちは考えています」 とヘフェルのチームは指摘している。
ビッグデータ
UBSによると、ビッグデータは今後10年間でさらに急成長するという。同行は、世界のデータユニバース(データ集団)がその間に10倍に拡大し、計660ゼタバイトに達すると予測する。
「『データは新しい石油だ(Data is the new oil)』というフレーズがよく話題にのぼるようになってきており、私たちはこのデジタル商品に囲まれています」と、アナリストたちは口にする。「しかし石油と同様に、データをビジネスプロセスの自動化、効率性の向上、戦略的意思決定の質の向上に利用できるようにするには、データを『精製』する必要があります」と彼らは指摘する。
サイバーセキュリティ
サイバーセキュリティ分野も有望な破壊的技術への投資機会だとUBSは言う。2021年には約3億3000万人がサイバー犯罪の被害を受けている。
「クラウドコンピューティングへの移行で企業のコストは大幅に減少しましたが、オンライン攻撃の潜在的な影響は増大しています」 とヘフェルのチームは指摘する。「私たちは、サイバーセキュリティ部門が2020年から2025年の間に平均10%成長すると予想しています。企業のIT支出が着実に増加し、クラウドセキュリティの導入が進んでいるためです」という。
5G
UBSが最新レポートの中で最後に取り上げた技術革新は5Gだ。5Gで通信速度が4Gの20倍となり、無人自動車やVRベースのメタバースなどの破壊的技術をさらに押し上げると考えている。
UBSのアナリストは、「5G技術は、『テクノロジーのABC』の影響を強め、これまで実現不可能だったさまざまな分野への応用が可能になるでしょう。われわれは5Gを推進する業界とプラットフォームの受益者にビジネスチャンスがあると考えており、今後3年間で10%台半ばの利益成長率を見込んでいます」と締めくくった。
(翻訳:渡邉ユカリ、編集:大門小百合)