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進む宇宙ビジネスのルール作り。世界リードするアメリカ、企業誘致狙うイギリス。日本の達成度は?

スペースデブリ

スペースデブリのイメージ。

Shutterstock/Frame Stock Footage

12月8日にZOZO創業者・前澤友作氏がロシア・ソユーズ宇宙船で国際宇宙ステーション(ISS)へと旅立った。日本人民間人初となるISSへの滞在に、宇宙との距離が徐々にではあるが確実に近づいていることが感じられる。

世界では、宇宙産業の発展に向けて法整備が急ピッチで進められている。

2021年6月、日本でもSFの世界のような法律が成立した。

月面や小惑星で採掘した天然資源の「所有権」を認める、通称・宇宙資源法だ。この法律ができたことで、アメリカとルクセンブルク、アラブ首長国連邦に続き、日本は宇宙にある資源を採取し販売するビジネスが許可された国となった(2021年12月23日施行)。

11月には、スペースデブリ(宇宙ごみ)の除去や宇宙空間で衛星に燃料を補給するようないわゆる「軌道上サービス」に関するガイドラインも発表された。軌道上サービスに関する規制を国が公表したのは世界初だ。

宇宙ビジネスは、事故が起きた場合のリスク(損害)も大きい。そのため、政府による許可や補償制度が事業を大きく左右する。

達成度2〜3割の日本。世界をリードするアメリカ

TMI総合法律事務所の弁護士の新谷美保子氏

宇宙ビジネス法に詳しい、TMI総合法律事務所の弁護士の新谷美保子氏。

提供:TMI総合法律事務所

法整備やガイドラインの発表など、一見進んでいるようにも見える日本の宇宙分野の法整備。しかし、宇宙ビジネス法に詳しいTMI総合法律事務所の弁護士、新谷美保子氏は、まだ欠けている部分があると指摘する。

「高い技術があることを考えれば、日本の宇宙法整備の達成度は2〜3割程度じゃないでしょうか。もっと踏み込んだ内容にできるのではないかと感じる分野もあります」(新谷氏)

世界の宇宙法整備をリードしているのは、宇宙開発大国のアメリカだ。

アメリカは1984年に制定された「商業宇宙打上げ法」を、民間企業による有人宇宙飛行事業に触発される形で2004年に改正。これにより、100%の安全性を確保できない「商業有人宇宙飛行」についても、乗員の同意があれば打上げが許可されることになった。

サブオービタル飛行

2021年はVirgin GalacticとBlue Originがサブオービタル飛行を実施した。

提供:Virgin Galactic

2015年には、世界で初めて宇宙資源開発を認めた通称・2015年宇宙法を制定。2020年には、国内の事業者に宇宙システムのサイバーセキュリティ強化を求める大統領令も発出された。

アメリカの宇宙法や原則は、各国の法制度検討に大きな影響を与えている。

宇宙法の整備で「企業誘致」狙うイギリス

世界に目を向けると、宇宙活動に必要な原則を定めた「宇宙法」や政策を呼び水に、海外の宇宙ベンチャーを誘致する国も出てきている。

近年大きく状況が変わってきているのがイギリスだ。

イギリスは2014年に発表した宇宙分野の行動計画で、「2030年までに宇宙産業の世界シェアの10%を獲得する」という大胆な目標を掲げている。しかし、欧州連合からの離脱にあたり、欧州宇宙機関(ESA)のプログラムへの関与が一部制限されることになった。そこで政府が打ち出したのが、海外から宇宙企業を呼び込む方針だ。

2016年にEUからの離脱が決まると、2018年には1986年に制定された「宇宙活動法(Outer Space Act 1986)」の内容を拡充した「宇宙産業法(Space Industry Act 2018)」を制定。これにより、イギリスではロケットが離発着するスペースポート(宇宙港)事業と宇宙旅行や衛星の打上げなどの宇宙飛行活動がライセンス制になった。

2021年7月に宇宙旅行を成功させたアメリカVirgin Galacticのグループ会社であるVirgin Orbitは、イギリスのスペースポートから衛星を打ち上げるべく調整が進められている。

イギリス、スペースポート・コーンウォールのイメージ

イギリス、スペースポート・コーンウォールのイメージ。

提供:Spaceport Cornwall

2020年7月には、ソフトバンクも出資しているアメリカの通信衛星ベンチャー「OneWeb」をイギリス政府とインドの電話通信事業者「Bharti Global」が買収。将来的には、生産拠点をアメリカからイギリスへ移すことも検討されている。

また、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の除去サービスを計画する日本の宇宙ベンチャー、アストロスケールにも、イギリスから実証実験に必要なライセンスが与えられた。アストロスケールは衛星「ELSA-d」を2021年3月に打ち上げ、スペースデブリを除去する技術の実証実験を進めている。

ヨーロッパではほかにも、ルクセンブルクが1970年代に成功させた衛星通信事業に続く新たな宇宙事業として「宇宙資源」分野に注力。アメリカに次いで、2017年に宇宙資源法を制定した。月面の探査と資源開発を目指す日本のベンチャー、ispaceは、ルクセンブルクに欧州拠点を開設した。

そのほか、アラブ首長国連邦やオーストラリアも宇宙法の整備に力を注いでいる。

宇宙法の制定は、国から宇宙ビジネスへの「お墨付き」

月

将来的には月面資源のビジネスも考えられるようになるかもしれない。

Reuters/Jon Nazca

企業が活動する上で、なぜここまで法整備が重視されるのか。その理由を新谷氏は、宇宙関連事業の特性を挙げて説明した。

「宇宙事業の場合は、衛星やロケットが物理的に国境のない宇宙空間に出て行くことになります。ひとたび事故が起きれば大きな損害が生じるため、条約に基づき国家責任が伴います。いち企業の活動にいきなり国家責任が生じ得る世界です。IT企業を立ち上げるのとは、全くわけが違います」(新谷氏)

国際条約の下では、政府主導の宇宙活動「以外」であっても、ロケットや衛星の落下など、宇宙活動によって「地上に」損害を引き起こした場合は、過失がなくてもロケットを打ち上げた国や衛星を保有する国が損害賠償を負わなければならない。

国連宇宙空間平和利用委員会

国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)の主要な会議は、オーストリアの国連ウィーン事務局で開催される。

撮影:井上榛香

そのため宇宙開発を行う国は、ロケットや衛星の打ち上げを許可制にし、損害賠償の制度を定める「宇宙活動法」を1970年代頃からそれぞれ制定してきた。

日本では、宇宙活動法を2016年に制定。事業者の保険加入を必須とし、万が一事故を起こして保険による補償限度額を越えた場合は、政府が補償する仕組みになっている。

「規制がないことは、本来的にはやってもいいんです。例えば、(宇宙法などが全くない国で)ある日突然、誰かが勝手にロケットを飛ばすことも、細かい法律には引っ掛かるかもしれませんが、打上げ自体は理論上は可能です。でも、先進国である法治国家の日本では、そんなことは許されませんよね。宇宙法による規制ができるのは、条件を守っておけば、当該ビジネスができるというお墨付きを国が与えているということです」(新谷氏)

政府による補償制度が明確になったことで、企業が負担する経済的リスクは予見できるようになった。宇宙産業に参入する障壁が下がることで、企業の誘致もしやすくなる。だからこそ、宇宙産業に力をいれようとしている国々はこぞって法整備やガイドラインの制定を進めているわけだ。

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