フェイスブックは2021年10月末、次世代のインターネットに向けたビジョンの一環として社名を「メタ(Meta)」に変更することを発表した。その際、CEOのマーク・ザッカーバーグと幹部のビシャル・シャーは、コマース(商取引)がメタバースで「大きな役割」を果たすと話した。
バイスプレジデント(VP)としてこの目標に向けてメタバース部門をけん引するシャーは、メタバースのおかげでショッピングの物理的な障壁が取り払われ、デジタル・プロダクトや有形の商品を売買できるようになることで、「全く新しい事業が可能になる」だろうと語った。
それでも、Insiderが入手した社内文書からは、同社がコマースをまだ先の未来だと考えていることがうかがえる。広告・ビジネスプラットフォーム担当VPのダン・レヴィは11月、メタ社員に向けて、同社のコマース事業の優先事項について概要をまとめたメッセージを発信。その中で、同社が2022年には優先しない分野として、メタバースをはっきりと挙げていた。
その理由は、InstagramやFacebookといった同社アプリを利用しているショップから、より多くの商品を販売する目標などを優先させるためだ。
「私たちは、長期的にはEコマースやメタバースの支援を目指していますが、2022年の投資は予定していません」とレヴィはメッセージに書いている。
最初のメタバースは2次元
メタの広報担当者はInsiderに対し、あるブログ記事を送付してきた。記事の中で同社は、「メタバースは、すぐにではないにしろ、今後10年以内に実現することが見込まれて」いると述べており、「そうした未来がすでに見え隠れし始めているとはいえ、直近で人々がメタバースを体験する最初の方法は、2次元のアプリを介したものになるでしょう」と続けている。
ザッカーバーグは10月の新社名発表の際、「Horizon Marketplace(ホライゾン・マーケットプレイス)」と呼ぶ場所を構築する予定だと述べていた。そこでは、クリエイターが3Dのデジタルアイテムを販売したり共有したりできる。
「これにより、コマースがもっと活発になり、メタバース経済全体の成長を後押しできるようになると期待している」とザッカーバーグは説明した。
しかしながらザッカーバーグ自身も、メタバースに向けたメタの事業計画については、詳細のほとんどが未定だと話す。
「このコマース・モデルの一部分がどう機能するかについては、計画を立てる予定です。しかしまだ決めていないことが山ほどあるという事実を、正直にお伝えしたいとも思っています」とザッカーバーグは語り、こう続けた。
「とはいえ、当社がメタバースにしっかりとコミットしていることは間違いありません。メタバースは当社事業の次の章であり、またインターネット全体の次の章でもあると、私たちは確信しています」
VPとしてのレヴィの担当範囲は、あくまでFacebook、Instagram、Messengerといったメタのアプリ群における、コマースを担当する各チームだ。そのため、メタが2022年に仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の部門である「フェイスブック・リアリティ・ラボ」のような他の事業に投資を計画している可能性はある。
なお、メタの求人専用ウェブサイトをざっと見てみると、肩書きに「メタバース」の文字が入ったポジションは、50以上に達する。
(翻訳・松丸さとみ、編集・野田翔)