Sebastian ter Burg/Flickr
CEOが出席する会議というのは、かなり重要な会議だと相場が決まっている。そのような会議では社員は往々にして、笑い者になることを恐れて何もしゃべらなくなるものだ。
しかし、もしあなたがその場に何らか貢献しようと思っているなら、あなたの質問が質問するに値するものかを判断できる、とっておきのガイドラインがある。
職場環境作りの専門家で『Tame Your Terrible Office Tyrant(未訳:職場のひどい暴君を手なずける)』の著書もあるリン・テイラー(Lynn Taylor)によれば、質問には次の3つのうち少なくとも1つが含まれている必要があるという。
- あなたの大局的な関心を示す。
- あなたが問題を解決できる人物であることを示す。
- あなたがイノベーターであり、枠にとらわれない思考ができる人物であることを示す。
Insiderはテイラーともう一人、国内外での講演機会も多く『The Humor Advantage(未訳:ユーモアの利点)』の著者でもあるマイケル・カー(Michael Kerr)に、上記の基準を満たす質問の例を挙げてもらった。
以降では、テイラーとカーが示した8つの質問例と、これらの質問をすることでCEOがどう受け止めるかを解説しよう。
なお、CEOに何か質問をする前にまず、「自分はただ注目を集めて賢いと思われたいだけなのか、それともこれは議論を前に進めるための純粋な質問なのか」と自問することをカーは勧める。
「これはもしかしたらあの社員が単に目立ちたいがための質問なのでは、と思った経験は誰しもあるでしょう」(カー)
そういう社員にはならないようにしたいものだ。以降で紹介する質問例を参考にすれば、あなたの質問をスマートな形で組み立てることができるものだ。
1. 「その件に関して、私はどうすればお役に立てますか?」
この質問は2つの点で成功している、とテイラーは語る。
1つ目は、あなたがただの組織の歯車とは対極にある、起業家精神を持った人物であることを示せる点。こう質問することで、自分の職務以上のことをやろうという意思を示すことができる。
2つ目は、あなたがリーダーの資質を持っていることを示せる点だ。なぜならこう質問する人物は、自分自身がCEOの立場に立って、CEOが自分に何を求めているかを考えているものだからだ。
もし自分が前面に出るのが気が引けるなら、「Xプロジェクトが成功するために、私のチームはどんな手助けができるでしょうか?」と質問するといい、とカーはアドバイスする。
2. 「ABC社がXYZ領域に参入してきているようです。この動きは当社にとって最大限警戒すべき競争上の脅威だと思われますか?」
このように質問することで、あなたが独自に調査を行い業界動向を理解していることをアピールできる、とテイラーは言う。
ところで、あなたが身を置く業界の動向を常に把握しておくことは、自身のキャリア形成上も確かな戦略となる。ニューヨーク・タイムズの上級特派員であるニール・アーウィン(Neil Irwin)はその著書『How to Win in a Winner-Take-All World(未訳:勝者総取りの世界で勝つ方法)』の中で、業界の最新動向を掴んでおくと、成功するために今後どういった技術が必要になるのかを見極めやすくなると述べている。
3. 「Xを行うことで当社は収益を高められるとお考えですか?」
こう尋ねることで、あなたがイノベーティブであり、かつ問題解決型の人物だとアピールできる。
この質問をするためには、自分の提案を徹底的に調査し尽くしたうえで、提案内容をうまく説明しなければならない、とテイラーは付け加える。CEOはさらに詳しい説明を求めるかもしれないからだ。
4. 「これは将来にどのような意味を持つのでしょうか? 長期的な戦略的意思決定の一環ということですか?」
シェール社(Cherre)のCEO兼共同創業者であるL・D・サルマンソン(L.D. Salmanson)いわく、この問いには大局観が見て取れる。「企業とは自社にとって最も価値あるものは何かを考えているものであり、社員は、自分が最重要事項に関わっているんだという確信を持ちたいものなのです」
CEOが海外進出といった会社の重大な変化に言及した際などに、この質問を投げかけるのが適切な使い方だろう。
あなたはCEOを良く見せることを手助けすることになる。
この質問をきっかけにして会議の場は組織の長期計画に話題が及ぶようになるため、CEOの顔を立てることができる。と同時に、会議のメンバーはあなたに一目置くようになるだろう。
5. 「このタスクをAさんに任せてみてはいかがでしょう?」
こう問うことで、あなたが会社のニーズに沿った人材活用能力に長けていることを示せるとテイラーは言う。これもリーダーに求められる資質だ。
この提案をするにあたって注意してほしいのは、Aさんはあなたの部下に限らないという点だ。もしAさんがたまたま先日あなたに「○○に興味がある」と伝えていたのなら、それに関連するタスクに遠慮なくAさんを推薦してかまわない。同僚と強固な関係性を築いておけば、仕事が格段に進めやすくなる。
Aさんから○○について特に何も聞いたことがない場合でも、「Aさんがどう思うかは分かりませんが、この領域では本当にすごいスキルを持っていると思います」と言い添えるといいだろう。
6. 「このアイデアは、私の部署にとっては非常に役立つのは分かるのですが、営業部門に及びうる影響を若干懸念しています。営業部門とうまく協働する妙案はお持ちですか?」
この質問からは、あなたが自分のチームだけでなく、会社全体にも目配りしていることが伝わる。つまり、あなたがリーダー視点で物事を考えていることを示せる、とカーは指摘する。
「CEOは、自分の部門のことしか考えていない社員にイライラさせられています」(カー)
この点については、ジェネシス社(Genesys)のCEOで『Empathy in Action(未訳:行動における共感)』という著作もあるトニー・ベイツ(Tony Bates)も同意する。「未来のリーダーは、すでに自社の潜在的な死角を考慮しているものなのです」
7. 「あなたにとって成功とはどのようなものですか?」
会社が大きな変化を迎える時、新規プロジェクトに乗り出そうという時にこの質問をCEOに投げかけるといい、とカーは言う。あるいは「我が社にとっての成功をどう定義するべきだとお考えですか?」と尋ねてもいいだろう。
イルミオ社(Illumio)のCEO兼共同創業者のアンドリュー・ルービン(Andrew Rubin)は、次のように語る。
「この質問から、積極的に関与し、学び、手助けし、ビジネスを前に進めようという意欲が見て取れます。この質問はCEOに関するものではなく、同僚の足並みを揃えて成功に導くためのものです」
8. 「他にお尋ねしておくべき質問は何かありますか?」
「全社会議でこう尋ねるのは気が引けるかもしれません」とカーは言うが、もっと小規模な会議でこのように投げかければ、より大局的かつ創造的な思考が促され、会議がスマートなものになるかもしれない。
前出のルービンも次のように話す。
「この質問からは、われわれがまだ知らないことを掘り下げ、自分たちの仮説に挑もうという意欲が感じられます。非常に前向きでリーダーシップのある思考の持ち主だなと感じます」