応募者はヘッドセットを装着し、MGMリゾーツでの仕事が期待通りのものかどうかを確認することができる。
Courtesy of MGM Resorts
- MGMリゾーツは2022年1月からVR企業、STRIVR製のヘッドセットを採用センターで使用する予定だ。
- MGMリゾーツは、志願者にVRでの務を体験させてから、その仕事に応募させようとしている。
- カジノやホテルを経営する同社はVRによって従業員の離職を抑えられるのではないかと期待している。
米MGMリゾーツ(MGM Resorts)では、従業員の離職を減らすことを目的として、応募者にバーチャル・リアリティ(VR)を使って仕事を体験する機会を提供している。
ラスベガスのベラージオ(Bellagio)やMGMグランド(MGM Grand)など世界的に有名なカジノホテルを有する同社は、VRのヘッドセットを使用することで、応募者が、その仕事が期待に沿うものなのかどうかを確認してもらいたいと考えている。
「職務の内容を口頭やビデオを見せることで説明するのは、非常に難しい場合がある。このVR体験では応募者はヘッドセットを装着し、実際に仕事を体験することができる」とMGMリゾーツの最高人事責任者、ローラ・リー(Laura Lee)はInsiderに語った。
全米的な労働力不足の中、企業は新しい人材を獲得し、維持するために努力しなければならなくなっている。多くの企業では従業員を採用しても、彼らが期待していた仕事ではなかったため、しばらくして辞表を提出することになっている。特にホスピタリティ業界では、記録的な数の労働者が仕事を辞めている。
リーは、実体験のように感じられる没入型テクノロジーであるVRを離職率の低下に役立てようとしている。2021年1月から、同社の雇用センターや就職説明会でVRヘッドセットを導入し、研修に使用する可能性もあるという。
これまでもMGMリゾーツでは、応募者に役割を理解してもらうために、日常業務のビデオでの説明や現役社員とのチャットを行っていたが、今回のようなものはなかったと、リーは話している。
パンデミックの間に、ゲストの態度が悪化したと訴える接客業従事者もいる。このようなシナリオに備えて、MGMリゾーツのVRモジュールには、「難しいゲストとのやり取り」も含まれているとリーは話す。
VRを使って職務を体験した後に、「間違いなく」自分には向いていないと判断する志願者がいるだろうと予想していたという。
志願者の中には、その仕事がどれほど難しいかを知らずに仕事に就いてしまうことがあると彼女は言う。また、もし、MGMリゾーツが最近オープンしたカジノにVR体験を利用していたら、「そのポジションを引き受けた後に、思っていたものと違うと気付いた人の離職を解消できたかもしれない」とリーは付け加えた。
MGMリゾーツのローラ・リーによると、同社は雇用センターでヘッドセットを導入する予定だという。
Courtesy of MGM Resorts VR
リーはMGMリゾーツが今後日本に進出する際に、このVRが役立つだろうと話している。現在、日本にはカジノがなく、MGMリゾーツが90億ドル(約1兆200億円)を投じて大阪に建設するカジノが最初のものとなる見込みで、従業員になる人はこの種の仕事がどのようなものなのか、よくわかっていないかもしれない。
このVRは、求職者が任意で試すことができ、オフィスで働くような職種には使用しないとリーは述べている。VRはまず、カジノゲームの操作や宿泊客のホテルへのチェックインなど、接客係のために使われる予定だ。
MGMリゾーツは、ウォルマート(Walmart)、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)、ベライゾン(Verizon)、フェデックス(FedEx)などと提携するSTRIVRと共同でパッケージを開発した。STRIVRはVRによる教育訓練を提供する企業だ。
仕事の体験やトレーニングを行うだけでなく、STRIVRのVRで従業員の能力を評価している企業もある。例えばウォルマートでは、STRIVRのVRヘッドセットを使って従業員が中間管理職に昇進すべきかどうかをチェックしたという。
STRIVRのCEO、デレック・ベルチ(Derek Belch)はVRを使用して収集されたデータは、「従業員にとっては職務への立候補の一環として、また雇用者にとってはデータに基づいたよりよい意思決定を行うために、非常に強力なものになる」と話す。
MGMの雇用は回復している
MGMリゾーツは、2020年の年次報告書で、新型コロナウイルスによる最初のロックダウンの際、雇用の凍結、スタッフの一時解雇、能力給の引き上げを中止し、資金の流出を最小限に抑えるために「人員削減」を実施したと述べている。
現在は一部の地域で人手不足に陥っているものの、パンデミックの際に解雇した従業員の大半が戻ってきているとリーは話している。また2021年の第3四半期決算説明会で、同社のCFOは労働力の確保は毎月改善していっていると述べている。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)